文字サイズ

標準
国・テーマ インデックス
レポート・出版物

アジア経済

2014年9月 第55巻 第3号

開発途上国に関する和文機関誌—論文、研究ノート、資料、現地報告、書評等を掲載。

■ アジア経済 2014年9月 第55巻 第3号
投稿募集中
■ 2,160円(本体価格 2,000円)
■ B5判
■ 128pp
■ 2014年9月

CONTENTS
論 文

2-32pp.

33-55pp.

56-85pp.

書 評

86-89pp.

90-93pp.

94-99pp.

100-102pp.

103-107pp.

108-111pp.

112-118pp.

紹  介

119pp.

英文要旨 (530KB)

要 旨
中国の大都市における階層形成と世代間階層移動の実証分析——1997年,2008年天津市民調査に基づいて—— / 厳 善平・魏 イ (示へんに韋)

本稿では,中国の大都市・天津市における階層形成および階層移動の規定要因を2時点の天津市民調査を用いて分析し,個々人のもつ人的資本,政治的資本および家庭環境がそれぞれの職業階層,収入にどのように影響し,また,時間が経つにつれ,それぞれがどのように変化したかを実証的に解明することを主な研究課題とする。本文の構成は以下の通りである。第I節では,階層移動の分析方法を検討し,本研究の枠組みを提示する。その上で,2時点の天津市民調査の個票データについて説明する。第II節では,個票データを集計し人的資本,政治的資本および家庭環境に関する2時点の基本状況を記述する。第III節では,まず社会階層の捉え方を検討し,その上で人口センサスに基づいて天津市における社会階層の全体像を描き,さらに,個票データから得られる移動表に基づいて親と子の世代間階層移動(職業,教育)の実態を明らかにする。第IV節では,階層形成および階層移動の規定要因を計量分析する。具体的には,計量モデルと仮説の提示,収入関数の推計と収入に関するパス解析,現職の階層決定モデルおよび上層固定・階層上昇移動モデルの推計を行う。最後は本稿のまとめである。

中国銀行業の経営構造——確率的費用関数による4大国有銀行と株式制商業銀行の比較分析—— / 黄 鶴・ハスビリギ・竹 康至

中国企業の資金調達の7割は銀行からの融資で,その大部分を4大国有銀行が占めているといわれる。定性的な研究では,その4大銀行は,その他の株式制商業銀行と,所有構造や事業内容が異なるものだと指摘されてきた。しかしながら,従来の定量的な実証研究では,4大銀行と株式制銀行を同一の種類の金融機関と捉えて分析してきており,定性的研究成果を反映していない不適切な計量分析となっている。そこで本稿では,トランス=ログ型の確率的費用関数を用いて,中国銀行業の費用構造を分析し,次のような両者の相違を明らかにした。(1)4大銀行と株式制銀行は異なる費用関数をもつ,(2)4大銀行は,人件費・物件費への依存が少ない,(3)株式制銀行は規模不経済,(4)近年は,4大銀行はコスト増加傾向にある。本稿の推計結果は,4大銀行と株式制銀行が明確に異なる種類の金融機関であることを示すものであり,先行研究の計量分析の前提条件に疑問を投げかけるものである。

変容するナフダトゥル・ウラマーの二重指導体制——ウラマーの権威と指導力の乖離—— / 小林寧子

インドネシア最大の宗教社会団体,ナフダトゥル・ウラマー(NU)は,ウラマーを中核とし,その影響下にある一般信徒(ウマット)が人的につながって構成されている。この構成員の二重構造に対応して,中央指導部は,碩学のウラマーを戴く最高指導部のシュリアと,組織運営の実働体タンフィズィアから構成される二重指導体制である。政治に深く関与して組織拡大するなかでタンフィズィアの機能が大きくなったが,ウラマーが指導することを謳った組織の基本方針(ヒッタ)が形成され,シュリアの復権が目指された。しかし,ウラマーとしても影響力の大きい人材がタンフィズィア長(議長)を担当した15年間に,シュリア長たる総裁の存在感はさらに薄れた。民主化以降は議長をはじめとする組織幹部が実践政治志向を強めてウマットとの間に大きな懸隔をつくると同時に,総裁はそれをとどめることができなかった。活動路線と組織整備が問題になるなか,2010年全国大会の指導部選挙では,現職議長が現職総裁に挑戦するというかつてない事態が起きた。議長側はシュリア強化による組織運営を構想して選挙に臨んだが,自らの実践政治関与が瑕疵となって敗退した。総裁にはウラマーの学問やモラルの体現者としてシンボル的な存在としてウマットをつなぐことが期待される一方,指導力はそれほど問われなかった。また,議長には組織運営能力を高めてウマットの福利となるプログラムを実施することが期待されている。NU内では指導者個人のカリスマに頼らない指導体制へと移行すべきだという声が上がっているが,組織整備の見通しは立っていない。