アジア経済

2015年9月 第56巻 第3号

開発途上国に関する和文機関誌—論文、研究ノート、資料、現地報告、書評等を掲載。

■ アジア経済 2015年9月 第56巻 第3号
投稿募集中
■ 2,200円(本体価格 2,000円)
■ B5判
■ 201pp
■ 2015年9月

CONTENTS
論 文

3-37pp.

38-58pp.

特 集 石川滋の開発経済学・アジア経済研究への貢献

 特集にあたって (1091KB) / 中兼和津次

59-61pp.

62-76pp.

77-92pp.

石川滋と中国経済研究 (1033KB) / 中兼和津次

93-113pp.

石川経済学と慣習経済 (1044KB) / 大野昭彦・加治佐 敬

114-134pp.

石川滋と国際開発政策研究 (989KB) / 柳原 透

135-158pp.

書 評

159-162pp.

青山瑠妙著『中国のアジア外交』 (676KB) / 佐々木 智弘

163-166pp.

167-171pp.

172-176pp.

177-180pp.

181-185pp.

186-190pp.

191-194pp.

195-199pp.

英文要旨 (510KB)


要 旨

ラテンアメリカにおける石油・天然ガス部門の国有化政策比較——1990~2012年の主要生産国についてのパネルデータ分析—— / 岡田 勇

石油・天然ガス部門の国有化は20世紀後半に一世を風靡したが,2000年代に入って国際原油価格が高騰する中,国有化政策の実施や外資優遇の継続について政策多様性が現れた。本稿は,ラテンアメリカを事例としながら,このような政策多様性の原因を比較検証するものである。今日の国有化政策については,左派の政治イデオロギー,大統領に対する政治的制約,国内での生産量と消費量のバランス,民営化と国有化のサイクルといった仮説が提出されてきた。とりわけ,左派イデオロギーと国有化を強く結びつける見方はレント主義ポピュリズムという主張を生み出したが,このように特定の政権と政策を結びつける分析には限界があり,総合的かつ厳密な比較検証は不十分であったといえる。 本稿は,1990〜2012年のラテンアメリカの主要生産国8カ国を対象に,国有化やそれに類似した政策に関するデータセットを独自に作成した上で,パネルデータ分析による主要仮説の検証とボリビアの事例研究を行った。分析の結果,経済に占める石油・天然ガスのレントが増加し,行政府に対する政治的制約が低くなることが重要で,左派イデオロギーをもつかどうかは必ずしも重要でないことが明らかになった。

ベトナム・メコンデルタにおける大規模稲作農家の形成過程 / 荒神衣美

本稿は,1986年のドイモイ開始以降,稲作経営の規模拡大によって財を成してきたメコンデルタの大規模稲作農家の形成過程を,稲作経営においてもっとも重要な生産手段となる農地の取得経緯を軸にして描き出すことを目的とした。アンザン省で10ヘクタール以上の規模をもつ稲作農家を対象に実施した聞き取り・質問票調査の結果から,大規模農家の農地取得過程のなかに1993年以前(相続期),1993~2000年代半ば(農地購入期),2000年代後半以降(農地賃借の増加期)の3つの時期区分を見出し,各々の時期に大規模農家がどういった経営内外の条件を考慮して農地を取得していったのかを検討した。