中東地域の政治変動—政軍関係、民主化、国際関係—

2012年1月31日(水曜)
シェラトン都ホテル東京
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主催:ジェトロ・アジア経済研究所、世界銀行、朝日新聞社

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パネルディスカッション1
モデレーター

白石隆 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長 )

パネリスト

長沢栄治(東京大学東洋文化研究所教授)
鈴木均 (ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター主任調査研究員)
アリー・フェルドウスィー(ノートルダム・ドゥ・ナムール大学歴史政治学部 学部長)
リサ・アンダーソン(カイロ・アメリカン大学 総長)
シリル・ミュラー(世界銀行対外関係担当副総裁)

白石隆(ジェトロ・アジア経済研究所 所長 )

白石隆 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長 )

長沢栄治(東京大学東洋文化研究所教授)

エジプトの1.25革命は歴史的にみると、1952年の7月革命以来の「革命」であり、エジプトは「革命の時代」を迎えたといえるでしょう。1.25革命と7月革命を比較すると、軍、ムスリム同胞団、アメリカの影響という3つの点において類似性が見られます。1952年7月革命は軍部によって体制転換がもたらされましたが、今回も軍部の介入という点では似ていました。その一方で、1.25革命では軍は調整役であり、また若年層が大きな役割を果たしています。この新しい世代は、今後政治分野に限らず、社会経済面でも重要な役割を果たしていくでしょう。

1.25革命は新しい政治体制の成立によって終わるものでなく、長期的な意味でも歴史的意義を持つものになるでしょう。また、アラブ地域全体の政治状況への影響も否定できません。すでにパレスチナで新たな動きがみられました。他方で「アラブの春」後の中東地域では、エジプト、イラン、サウジアラビア、トルコの4カ国が大きな影響力を持つようになるだろうとの見方もあります。現在、中東におけるアメリカの影響力が低下しているなかで、日本は公正なアウトサイダーとして、新しい政権と積極的に協力関係を構築していくことを期待したいと思います。

長沢栄治(東京大学東洋文化研究所教授)

長沢栄治
(東京大学東洋文化研究所教授)

鈴木均 (ジェトロ・アジア経済研究所主任調査研究員)

イランの核問題については10年ほど前から問題になっていますが、昨年末からは新たな緊張が生まれました。11月のIAEA報告でイランの核兵器開発可能性を示唆され、米国が制裁強化を発表、それに対しイランが反応し、ホルムズ海峡封鎖まで言及しました。ここで情勢判断のため2つの指標を見てみます。ひとつはイラン通貨リアルの為替レートであり、もうひとつは原油価格の変化です。制裁強化はリアルの暴落を招き、これはイランの経済規模が半分以下にまで縮小していることを意味しています。他方ホルムズ海峡封鎖発言に対して原油価格には大きな変化は見られていません。その結果、ホルムズ海峡封鎖への言及で原油高を企図したイランは心理的には追い詰められつつあります。

このような石油の問題が浮上するたびに、日本はその対応策が緊急の課題になります。それを解消するためには、今後とも湾岸諸国からの原油輸入を分散化させていくことが必要になると思われます。

鈴木均(ジェトロ・アジア経済研究所主任調査研究員)

鈴木均
(ジェトロ・アジア経済研究所主任調査研究員)

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