アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

8. アフリカにおける中国のエネルギー採鉱事業の軌跡

現在中国は世界の鉱物価格の主要な牽引者であり、多くのアフリカ国家がこの働きの主要な受益者である。中国は銅、亜鉛、ニッケルならびに多様な原材料について自国の需要を満たすことができない。よって中国は現在毎年1000億米ドル相当のベースメタルを輸入し、世界の供給量の25%以上を消費している。これには亜鉛産出量全体の30%、鉛産出量全体の25%、精製銅生産の22%が含まれている。さらに中国経済は、世界の鉄鋼の27%とアルミニウム産出量の25%を消費している。

2003年に中国は米国を抜いて世界最大の銅消費国となり、翌年には米国よりも46%も多く消費した。2006年に中国は鉱産物の戦略備蓄を設定、ウラニウム、銅、アルミニウム、鉄鉱石およびその他の鉱物を貯蔵すると発表した。備蓄の構築によって中国は重要な緩衝をえることになり、市場の乱高下を調整し、危機を管理し、資源供給確保を保証することができるようになる。

アフリカは中国経済への主要鉱物の供給においてきわめて重要な役割を果たしている。鉱物の場合、中国はコバルト輸入やマンガンに関して著しくサブサハラ・アフリカに依存している(マンガンはガボン、南アフリカ、ガーナ)。サブサハラ・アフリカはまた木材(主としてガボン、コンゴ共和国、カメルーン)、クロム(主として南アフリカ、マダガスカル、スーダン)の重要な供給国であり、中国の輸入全体のそれぞれ約7分の1を提供している。ただし鉄鉱石と銅の輸入についてサブサハラ・アフリカは、増加はしているのもの、まだ比較的貢献度が小さい。

中国はザンビア、タンザニア、モザンビークを含む南部アフリカ中央部の鉱山帯への関心を強めてきた。この地域は銅、鉄、マンガンやその他のベースメタルが潤沢である。



これら3国のうちザンビアへの関与がもっとも進んでいる。中国は銅、石炭、マンガンの埋蔵に関しては直接所有権を確保した。19981年にチャンビシ銅鉱山の株式85%を約2000万米ドルで購入したのが中国の最初の鉱山投資であった。2003年の再開後、この鉱山には継続して2億米ドル以上の新規投資を投入し、精錬プラントの建設も行った。鉱山の生産能力は、2008年には年間銅15万トンに達した。

石炭についてはSinazongwe地域の旧Nkandabbwe鉱山において、中国のCollum Mine社が2003年に産出を開始した。2005年には、ザンビアの古い企業町カブエで、確定埋蔵量400万トンのマンガン鉱山を中国の民間企業が購入した。

2006年にはザンビアの銅輸出の27%が中国向けであったが、マンガン輸出につては100%であった。

政治的に中国のザンビアとの関わりは問題が多い。反対勢力のマイケル・セイタは、2006年の大統領選挙キャンペーンで、ザンビアで中国のプレゼンスが増すことを強く批判して、中国の投資は搾取的でありザンビア人労働者を酷使しているので、中国は放逐されるべきだと主張した。これに対して中国の関係者は政府与党との関係を強めた。

南アフリカは中国の鉱山会社にとってもっとも望ましい場所であるが、現地鉱業界での競争は激しい。また、同国における厳格な黒人経済力増強(BEE)規準は、中国の投資家をして鉱山部門への大規模投資を躊躇させている。この傾向は他の国々、ことにカナダ企業も同様である。

したがって、他の国々と比較して中国の鉱業部門への固定資本投資は比較的小規模である。しかしながら、中国人は北ケープの鉄鉱石鉱山の獲得を狙っているという最近の指摘がある。例を挙げれば、中国鉄鋼界の巨人Baosteelはオーストラリアの鉱山会社の株を取得したが、同社は北ケープに探査許可地域を有している。南アフリカで活動しているその他の中国鉱山会社には以下が含まれる:Sinosteel、East Asia Metals Investment(Sinosteelの子会社)、Jinquan Iron & Steel (Jisco)、MinMetals、Zijin Mining、PMG。

8.1. 国別事例研究

コンゴ民主共和国(DRC)

鉱物採掘における中国のアフリカにおける意思は、2007年9月に中国がDRCのインフラ開発向けに50億米ドルの融資を発表し、続いて2008年1月に38億米ドルの鉱山投資プロジェクトに署名したことで、これ以上になく明瞭になった。融資額の大きさを欧米は驚きをもって受け止め、中国はアフリカの最重要開発パートナーになろうとしているという認識を強くした。Pierre Lumbi国家再建大臣が署名した協定の文言によれば、中国輸銀は、銅とコバルトの採掘権の見返りに、DRCの採取産業地を結ぶ道路(4000km)と鉄道(3200km)を敷設改修するため、また同国の戦略的採鉱部門を成長させ再建するために、90億米ドルの融資と資金提供を公約した。これと引き換えに中国は、15年間にわたり最大1000万トンの銅と42万トンのコバルト(確定埋蔵量)を獲得する権利を得た。

協定は、労働者5人当り1人だけを中国人とすると規定していた。各プロジェクトにおいて、技術移転とコンゴ人スタッフの訓練に投資金額の0.5%が投下される。地域の社会活動に1%、環境コストをカバーするのに3%が使われなければならない。作業の10~12%をDRC企業に下請発注することになっている。

DRC議会は2008年5月に協定を承認したが、これには以下のような中国企業グループが含まれていた。China Railway Engineering Corporation (CREC)、Sinohydro Corporation、Metallurgical Group Corporationであり、これら各社が新しい合弁会社Sicominesの株式68%をもち、残りはGécaminesとDRC政府が保有する。

長距離道路と鉄道建設のほかにも、水力電力ダム2基と空港2ヵ所の改修が予定されている。この全額が支払われると、アフリカにおける中国の最大の単独投資となる。ほかのいかなる国も国際金融機関も、このような短期間にかくも巨大なプロジェクトを手掛けたことはない。欧米の外交官の何人かは個人的見解として、この協定は、適正に実行さえされれば、DRCを大いに助けるだろうと言っている。

ローンの規模が明らかになると直ちに、国際通貨基金(IMF)はDRCがあまりに大きな債務を負うことになるとして、これを公に批判した。最近の報告によれば、ローンは60億米ドルに減額されるかも知れない。加えて、市況低迷によって多くの中国鉱山企業がDRC内のコバルト操業を停止した。東部コンゴでは紛争が継続しており、治安が改善されるまで中国は、融資協定にリンクした開発事業をすべて停止した。東部コンゴでは外国人労働者が武装強盗、泥棒、ハイジャックなどの犠牲になり、なかには、中国人労働者1名が頭部を切断されて杭に刺されたまま放置されたという報告もある。東部コンゴにある中国人鉱山労働者住宅の大半が閉鎖され、人々は安全な地域へと移動し、国外に脱出してアンゴラなどに移動しているケースもある。

ギニア

きわめて重要な原材料にアクセスしようとする中国の決意は、混沌というに近いほど不安定ながら鉱物資源が豊富な国、ギニアでも明らかである。2008年7月初旬にコンテ大統領の前官房長官Sam Mamady Soumahがリオ・ティントに、膨大な鉄鉱石埋蔵が潜在するシマンドゥ採掘権を無効にするという書簡を送ったことは、鉱業同業者に衝撃を与えた。

政府が、BHP-ビリトン、Benny SteinmetzのBGP、いくつかの中国ベンチャーとシマンドゥの採掘権交渉を水面下でしているという噂を、リオ・ティントのトップマネジメントは承知していた。

すでに死去したコンテ元大統領は、DabolaとTouguéを結ぶ鉄道を建設するという中国の申し出を受けた後、リオ・ティントとSimferの連合に埋蔵鉄鉱石の現地精製に対する投資をスピードアップするよう要請したといわれる。その観測はリオ・ティントがシマンドゥ採掘権から排除命令を受けたと同時に確証されたようだ。なぜなら、ギニアと中国の交渉では採掘権と交換に数十億ドルの中国投資が流入することになっているからだ。財政難に直面しているリオ・ティントは、世界経済状況が好転するまではギニアのいかなる新規拡大計画にも関わるつもりはないことを明らかにした。会社では、政府と交わしている協定は今回の遅延を許容するものであると感じていた。だが政府は同意しなかった。

中国側のオファー

2008年7月、中国開発銀行(CDB)の人間を含む使節が、一連の投資プロジェクトに関して国や民間セクターの投資家と議論するため、ギニアに一週間滞在した。一方では、国会議長のEl Hadj Aboubacar Somparéが2008年7月13-20日に中国を訪問した。Ousmane Doreギニア経済財務大臣によると、この合意の運用詳細に関して中国企業と協議するため、数ヵ月後にさらなる使節が北京を訪問することになっていた。同国のプロジェクト計画を監督・実行するために、すでに戦略委員会が組織されている。ボーキサイトと鉄鉱石を中国人が利用できるようにすることにより、ギニアはこれらのプロジェクトをサポートする投資の全額を確保したのである。

重要なのは、信頼できる情報源によればこれらの会合がコナクリに対する巨額の資金援助につながり、それが、リオ・ティントのシマンドゥ採掘権解約の背後にある主要な理由だということだ。

ギニアの国会議長は中国側のカウンターパートであるWang Jiaruiから招待され、いくつかのブリーフィング(中国開発銀行とHenan International Mining Corpの河南本社)に出席したが、信頼できる筋によるとそこでJiaruiは、IMFや世界銀行の厳格な条件とモニタリング条項とはまったく違う鉱業投資ソリューションを、北京がギニアにオファーできるという考えを提示したという。これに熱狂したSomparéは、コナクリに戻ってからコンテと会い、中国のアルミニウム不足は深刻であり、ギニア採掘権のためには「あらゆるもの」を与えるだろう(道路、病院、ダム、食料、機械類、学校、さらには都市まるごと)と伝えた。

中国人たちは次にスアレ首相に接触した。同首相は9月の北京オリンピック期間中に、北京で胡錦濤主席、中国輸出入銀行と開発銀行の頭取、さらに金属企業・非鉄金属企業コンソーシアムのトップたちと面会したが、これには強力なチャイナルコも含まれていた。チャイナルコはかつてギニアにおける野心的なボーキサイト開発計画に関与したが、いくつかの仲介ネットワークを関与させよというコナクリの要求があったためにキャンセルしたという経緯がある。

彼はまた河南省の鄭州を訪れ、そこで最近設立された、主としてシマンドゥ鉱区とその他地域のボーキサイト資源を探査するためのコンソーシアム、Henan International Mining Corp. Ltdのトップたちと面談した。このコンソーシアムは少なくとも8社から12社の企業を含んでいる。Yongcheng Coal、Henan Yongshang Metals and Minerals、Xuchang Minerals and Industry、Henan Hongxing Mining Machinery、Henan Ruishi Special Refractary Co.、CAECなどである。中国人たちには、ギニアにとって「持続できる総合的な開発計画」を提案できることを条件に、シマンドゥ鉄鉱石鉱区の持分41~50%をオファーされたという。

最終的にシマンドゥ採掘権の一部は、イスラエル人の企業家Benny Steinmetzの手に渡った。その開発能力はきわめて疑わしい。中国のコナクリに対する意欲は、同国の政治的混乱があったために一時低下した。世界経済が低迷していることから、中国企業にとってはリスクが高すぎるとみなされた。

2008年の終わり頃、もうひとつの中国の合弁企業Henan International Mining Coが、ギニア西部の複数のボーキサイト採掘許可のための交渉を開始した。このライセンスは558 km2をカバーし、鉱石100万トンを埋蔵すると推定される。2007年9月26日に創設された合同企業は、China Henan International Cooperation Group Co Ltd (Chico、41%)、Yongcheng Coal & Electricity Group Co Ltd (51%)、Henan State-owned Assets Operations Co (4%)およびHenan Zhonglian Mines Co Ltd (4%)が含まれており、2億6500万米ドルの資本を有している。

8.2. 最近の鉱山開発

  • 2009年1月、リベリアはその主要鉱石鉱山を開発するために26億米ドルの契約をChina Unionと調印した。China UnionはBong鉄鉱山に年間100万トンの精製所を建設すると約束した。これはモンロビアから約150kmに位置している。
  • 2009年4月24日、中国はニジェールに対してウラニウム生産を拡大するために9500万米ドルの特別ローンを供与した。中国の国有ウラニウム会社(SINO-U)は、来年に生産量が能力に達すると年間700トン産出すると見込んでいる。
  • China Non-Ferrous Metals and Construction (CNMC)とYunnan Copper Industryは、共同してザンビアのチャムビシで3億米ドルの銅精錬所を立ち上げる。この町は中国の投資家を引き寄せるために、現在非課税経済特区になっている。

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