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資料紹介:子どもたちの生きるアフリカ――伝統と開発がせめぎあう大地で――

アフリカレポート

No.56

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050434

資料紹介:清水 貴夫、亀井 伸孝 編『子どもたちの生きるアフリカ――伝統と開発がせめぎあう大地で――』

■ 資料紹介:清水 貴夫、亀井 伸孝 編『子どもたちの生きるアフリカ――伝統と開発がせめぎあう大地で――』
児玉 由佳
■ 『アフリカレポート』2018年 No.56、p.78
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本書は、アフリカの子どもたちを「主役」にすえ、「途上国で貧困に苦しむ子どもたち」といったステレオタイプなイメージを打破し、その多様性と主体性を描き出すことを目指している。14か国、17の事例から、さまざまな子どもたちの姿を取り上げている。気候別の構成となっており、乾燥地、サバンナ、熱帯雨林、水辺、都市の5部構成で、自然環境とも関係が深い子どもたちの日常生活が描き出されている。気候別の構成は、子どもたちの多様性とともにアフリカの多様性も同時に表している。各部の冒頭で、気候ごとの環境と文化、そして現在直面している問題などが簡単に解説されており、格好のアフリカ入門書にもなっている。

すべての事例をここで紹介することはできないが、多くの事例が子どもの生活の中心となる「遊び」と「学び」、そしてその二つの関係を取り上げている。子どもたちの「ごっこ遊び」のような「遊び」が生業活動の「学び」へとつながっていく場合も多い。学校教育とは異なる「学び」が、子どもたちが将来生きていくうえで需要な役割を果たしていることがわかる。

「学び」に関していえば、複数の章がイスラームを学ぶ子どもたちを取り上げているのが興味深い。サブサハラ・アフリカの地域において、ムスリムは人口の約3割を占めており、イスラームが生活に根づいている地域も多い。セネガルやマリのクルアーン学校での子どもたちは、厳しい規律のもとで、子どもらしくも穏やかな日々を過ごしている様子が描かれている。クルアーン学校は、巷間いわれる「テロリスト養成場」のようなものとは異なるものだということがわかる。

それ以外にも、幼年期の子どもではなく若年層を対象とした恋愛や労働などもテーマとして取り上げている。子どもから成人への移行期にあたるこの年代は、調査対象としては取り上げにくいのだが、具体的なテーマから接近を試みることで、かれらを取り巻く状況や思いを伝えてくれる。

各章の著者たちが、上からの目線ではなく、子どもたちと対話を重ねることで、統計データではわからない、子どもたちの日々の生活の様子や思いが、彼ら自身の言葉を通して伝わってくる。子どもに対する調査方法が多様であるために、章を移るたびに各著者のアプローチの違いに戸惑うこともあるが、今のアフリカの子どもたちの生活をいきいきと伝えてくれている。

児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)