2013年の芳しくない経済パフォーマンス

ブラジル経済動向レポート(2013年12月)

地域研究センター 近田 亮平

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貿易収支: 12月の貿易収支は、輸出額がUS$208.46億(前月比▲0.1%、前年同月比+5.6%)、輸入額がUS$181.92億(同▲4.9%、同+4.0%)で、貿易収支はUS$26.54億(同+52.6%、同+18.0%)と2013年中で最大の黒字額を計上した。この結果2013年の累計は、輸出額が過去3番目のUS$2,421.78億(前年同期比▲0.2%)、輸入額が過去最高額のUS$2,396.17億(同+7.4%)で、11月まで赤字だった貿易収支はUS$25.61億(同▲86.8%)と辛うじて黒字に転じた(グラフ1)。

輸出に関しては、一次産品がUS$87.97億(1日平均額の前月比▲8.2%)、半製品がUS$27.41億(同+5.1%)、完成品がUS$88.89億(同▲3.6%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$33.41億、同+1.6%)、2位が米国(US$22.21億、同+16.9%)、3位がアルゼンチン(US$13.68億、同▲13.7%)、4位がパナマ(US$11.89億)、5位がオランダ(US$11.60億)であった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、一次産品の鉄鉱石(US$32.05億、同+8.6%)と原油(US$17.71億、同▲27.0%)、完成品である原油採掘プラットフォーム(US$11.55億)の3品目が、US$10億を超える輸出額を計上した(「その他」を除く)。

一方の輸入は、資本財がUS$42.49億(1日平均額の前月比▲4.3%)、原料・中間財がUS$77.22億(同▲17.4%)、非耐久消費財がUS$14.58億(同▲5.2%)、耐久消費財がUS$16.76億(同▲12.8%)、原油・燃料がUS$30.87億(同+9.0%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$27.94億、同▲11.2%)、2位が米国(US$27.90億、同▲10.4%)、3位がドイツ(US$12.12億)、4位がアルゼンチン(US$11.79億、同▲4.9%)、5位がナイジェリア(US$8.73億)であった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、原料・中間財の化学薬品(US$20.70億、同▲2.0%)と鉱物品(US$14.05億、同▲18.8%)の2品目、その他燃料(US$17.18億、同▲6.6%)と原油(US$13.69億、同+38.0%)、資本財の工業機械(US$15.40億、同+17.1%)がUS$10億を超える輸入額となった。

グラフ1 2013年の貿易収支の推移

グラフ1 2013年の貿易収支の推移

(出所)工業貿易開発省

2013年の貿易収支は最終月の12月で黒字を確保したが、輸出額が大きく恒常的ではない石油採掘プラットフォーム(年間US$77.36億、前年比+426.4%)に依るところが大きく、US$25.61億という黒字額は▲US$6.98の赤字を記録した2000年に次ぐ芳しくないものとなった(グラフ2)。なお2013年の主要輸出先は、1位が中国(US$460.26億、同+10.8%)、2位が米国(US$248.56億、同▲8.2%)、3位がアルゼンチン(US$196.16億、同+8.1%)、4位がオランダ(US$173億)、5位が日本(US$80億)であった。また主要輸入元は、1位が中国(US$373.03億、同+8.0%)、2位が米国(US$362.79億、同+10.4%)、3位がアルゼンチン(US$164.63億、同▲0.7%)、4位がオランダ(US$152億)、5位がナイジェリア(US$96億)であった。

グラフ2 2000年以降の年間貿易収支の推移

グラフ2 2000年以降の年間貿易収支の推移

(出所)工業貿易開発省

物価: 発表された11月のIPCA(広範囲消費者物価指数:月率)は0.54%(前月比▲0.03%p、前年同月比▲0.06%p)で、10月に高騰した食料品価格が0.56%(同▲0.47%p、▲0.23%p)と落ち着いたこともあり、前月より若干低い数値となった。また、年初来累計は4.95%(前年同期比▲0.06%p)と2013年で初めて前年同期を下回り、過去12ヶ月(年率)も5.77%(前月同期比▲0.07%p)と前月より数値が更に低下した。
食料品に関しては、トマト(10月18.65%→11月11.58%)が前月に続いて高い上昇率となったが、消費量の多いフェイジョン豆(carioca:同▲9.30%→▲7.96%、mulatinho:同▲7.23%→▲1.98%、preto:同▲0.56%→▲1.04%)やコメ(同▲0.16%→▲1.04%)をはじめ、値下がりした品目が多く見られた。一方の非食料品では、10月に大きく値上がりした衣料分野(同1.13%→0.38%)と家財分野(同0.81%→0.58%)が落ち着いた数値となった。しかし、家政婦賃金が上昇するとともにタバコの価格調整が行われた個人消費通分野(同0.43%→0.87%)、電気料金が値上がりした住宅分野(同0.56%→0.69%)、航空運賃が6.52%と高騰した航空運賃(同0.17%→0.36%)などの伸びが顕著であった。

金利: 12月は政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は開催されず。次回、2014年初めのCopomは1月14日と15日に開催予定。

為替市場: 12月のドル・レアル為替相場は、月初の前週末に発表された10月の政府のプライマリー・サープラスが同月および年初累計で史上最低を記録し政府財政への不安が高まったことや、ブラジルの第3四半期GDPが予想を下回ったことからレアルが売られる一方、米国の雇用統計が予想を上回ったことで金融緩和策の変更が早まるとの観測からドルが買われる展開となった。月の半ばにかけては、Tombini中央銀行総裁が年末まで毎日実施している為替介入を来年も継続する予定だと発言したこともあり、レアルを買い戻す動きが強まった。
しかし、ブラジルの12月第1週の外貨フローでドルの流出傾向が発表されたことに加え、米国で懸念されていた予算が合意に至ったことや金融緩和政策終了の正式発表を受け金利上昇を見込んだ動きが強まったことから、ドルは20日にUS$1=R$2.3817(売値)まで上昇した。その後、月末に向け若干レアルが値を戻したものの、月末は前月末比で+0.76%のドル高レアル安となるUS$1=R$2.3426(売値)で2013年の取引を終了した(グラフ3)。なおこの2013年末の株価は、前年末比で+14.64%のドル高レアル安であった。

グラフ3 2013年のレアル対ドル為替相場の推移

グラフ3 2013年のレアル対ドル為替相場の推移

(出所)中央銀行

株式市場: 12月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は月のはじめ、政府が燃料価格の値上げを決定したものの、外国人投資家をはじめとする市場から引上げ幅が不十分であるとともに市場への政府の政治的介入だと判断されたため、Petrobrasを中心に大幅な売りとなり過去5年で最大となる▲10%以上もの下落を記録した。また、ブラジルの第3四半期が前月比▲0.5%だったことをはじめ、投資や農牧業の後退が顕著だったことを嫌気して更に下落した。その後、公開されたCopomの議事録でSelicの引上げを今後ペースダウンするとの見解が示されたこともあり、株価は一時上昇したが、米国で向こう2年間の予算に関する合意がなされ量的な金融緩和が縮小されるとの観測が強まり、再び下落した。そして13日には50,051pと、2013年8月下旬以来となる50,000p割れの寸前まで値を下げた。

しかし、米国が金融緩和政策を来年から変更するものの、その実施は急激ではなく段階的であるとの発表が市場では好意的に捉えられ、株価は上昇。その後、クリスマス休暇などで取引が閑散となった月末はほぼそのレベルのままで推移し、月末は前月末比▲1.86%となる51,507pで2013年の取引を終えた(グラフ4)。なおこのブラジルの株価は、前年末比で▲15.50%と主要国の中でも下落率が顕著であり、2013年は芳しくない一年となった。

グラフ4 2013年の株式相場(Bovespa指数)の推移

グラフ4 2013年の株式相場(Bovespa指数)の推移

(出所)サンパウロ株式市場