拡張型知識資本モデルの開発と利用

調査研究報告書

小山田 和彦  著

2016年3月発行

表紙 / 目次 (160KB)
開発途上国が海外直接投資を誘致するためにとることのできる手段にはどのようなものがあるだろうか。この問いに答えるため、本研究では数値モデルを開発し、一連のシミュレーション分析を実施する予定としている。ここでは、分析のために開発中の拡張型知識資本モデルに関する解説、およびモデルの基本的な性質を確認するために行った分析の結果を紹介する。現在、明らかにできていることは次のようなものである。
  1. 二つの非市場国間で相対的要素賦存に大きな違いが見られず、要素間の相対価格が似たようなものである場合には、多国籍企業は市場国への直接投資のみを行い、非市場国への進出は行われない。
  2. 二つの非市場国が経済規模や相対的要素賦存の面で異なる場合には、市場国と非市場国間での完成品貿易にかかる費用(輸送費や輸入関税)の低下が、他の市場国に設立された企業に水平型輸出基地戦略をとる強い動機を与える。
  3. 複合型の直接投資は、中間財の輸送費が世界的に非常に低く、完成品の市場国間での輸送費が高いという経済環境のもとで、 市場国と非市場国が貿易を自由化するような状況でのみ現れる。