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トルコにおける2015年総選挙とエルドアン体制の政策変容

中東レビュー

Volume 3

岩坂将充 著
2016年3月発行
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概 要

はじめに
2002年11月以来、トルコではエルドアン(Recep Tayyip Erdoğan)を中心とした政治体制——ここではエルドアン体制と呼ぶ——が続いてきた。エルドアンは、新興の公正発展党(Adalet ve Kalkınma Partisi: AKP)党首として同月実施された総選挙に勝利し単独政権を打ち立てた後、2003年3月からは首相を務め、続く2回の総選挙(2007年6月・2011年6月)でも単独政権の維持に成功した。さらに、2014年8月には議院内閣制を採用するトルコで初の直接選挙となった大統領選挙にも出馬・勝利し大統領に就任、公的にはAKPを離党し党首・首相の座をダヴトオール(Ahmet Davutoğlu)に譲ったものの、過去に類を見ないほど政治に積極的に関与する大統領として依然トルコの政治的中心となっている。

しかし、このように順風満帆に見えたエルドアン体制は、2015年6月総選挙においてAKP が初めて議会議席の過半数を割り単独政権の維持に失敗したことで、1つの転機を迎えることとなった。かろうじて議会第一党に踏みとどまったAKP は、連立政権の不成立を受けて実施された同年11月総選挙で再び単独政権に返り咲いたが、この過程においてエルドアン体制は6月総選挙以前とは異なる路線を歩み始めたのである。この意味において、トルコとエルドアン体制にとっての2015年は、選挙の年であっただけではなく、政治的変化の年でもあったといえる。

本稿では、これら2015年の2回の総選挙を分析するとともに、とりわけ6月総選挙後に顕著に見られたエルドアン体制の政策の変容——トルコ民族主義的傾向の強化——が、総選挙の結果だけではなく、それらを通じてみられた各アクターの戦略や関係性の変化に強く影響されたものであることを明らかにする。