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資料紹介: アフリカ・ドラッグ考 ——交錯する生産・取引・乱用・文化・統制——

アフリカレポート

資料紹介

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アフリカ・ドラッグ考
■ 資料紹介:落合 雄彦 編 『アフリカ・ドラッグ考 ——交錯する生産・取引・乱用・文化・統制——』
福西 隆弘
■ 『アフリカレポート』2014年 No.52、p.100
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モンロビアの路地裏を描いた本書の表紙カバーが印象的である。何人かの男女が煙をくゆらしながらのんびり談笑しているが、ドラッグを吸っているのであろうか。警察官らしき人物もいるがとがめる素振りもない。編者は、「ドラッグ問題を単に『犯罪』としてだけでなく、(中略)アフリカの一側面として位置づけることの重要性」(まえがき)を説いているが、カバーからその一側面がビジュアルに伝わってくる。なお、麻薬にくわえて医薬品や嗜好品なども、「ドラッグ」として本書では扱われている。

本章の構成は、副題で明快に示される通り、ドラッグの供給・需要サイドの両方と、取引の規制が扱われている。供給サイドでは、西アフリカで拡大しているグローバルな麻薬取引の現状と、ケニアとエチオピアにおけるカートの生産と流通の構造が明らかにされている。需要サイドでは、紛争後のリベリアや民主化後の南アフリカを取り上げ、社会体制の変化との関連で麻薬使用の実態が描かれている。また、アビジャンにおけるレゲエと大麻の関係や、ガーナ農村部での医薬品の乱用の実態も取り上げられている。最後に、ドラッグの生産、取引に関する国際的な取り決めの歴史と現状が整理されている。

これらの論考は、社会におけるドラッグの多様な役割を読者に教えてくれる。アビジャンでは、大麻が抑圧された都市貧困層による抵抗の象徴として認識され、モンロビアでは、経済的、精神的に厳しい紛争後の環境を生き延びるための手段として、ガーナ農村部では、医療機関に頼らずに中絶するための薬剤として利用されている。また、カートの生産地では村人の重要な現金収入となっている一方で、南アフリカではギャングの資金源となっている。正確な情報を得ることが非常に難しいテーマであるが、その理解なくしては明らかにできないアフリカの一側面が ——必ずしもカバー絵のように平和的なものではないが—— 確かにある。

他方、本書で示されるドラッグに対しての様々な議論や評価を読んで、評者は混乱も覚えた。摂取による健康被害が比較的弱い(と思われる)カートや大麻と、健康被害が深刻なハードドラッグを、同じ「ドラッグ」として論じられるのであろうか。先駆的な研究分野として、今後、分析視点の整理が進むことが期待される。

福西 隆弘(ふくにし・たかひろ/アジア経済研究所)