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海外研究員レポート

モザンビークの前途多難な移民管理

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050604

2018年10月

移民送出国から一転、「有望投資対象国」へ

筆者が2018年6月末から赴任しているモザンビークは、アフリカ諸国の中でも、今後著しい経済成長が見込まれる国の一つである。その期待の背景には、2009年に世界有数の埋蔵量が確認されたモザンビーク北部沖合の天然ガスがある。現在、天然ガス開発は2023年の生産開始に向けて準備が進められているほか、直近でも新たな動きがある。2017年3月には鉱区Area 1のオペレーターであるイタリアの石油・ガス会社Eniが権益の一部を石油メジャー最大手のExxonMobilに販売し、今年7月にはExxonMobilが第1期の開発計画をモザンビーク政府に提出した。また、8月以降、隣接する鉱区Area 4のオペレーターであるAnadarkoとモザンビーク政府との共催で地元企業のためのセミナーを開催した。

同セミナーは、天然ガス開発地域である北部カボ・デルガド州ペンバを皮切りに全国各地で華々しく開催され、モザンビーク主要各紙の紙面を大きく飾った。失業率が24.5%(2017年、IOLデータ)にも達するモザンビークでは、今後の投資によって開かれる周辺産業へのビジネス・チャンスや雇用創出に大きな期待が寄せられている。ただし、実際に石油メジャーの開発プロジェクト自体に参入できるほどの地元企業は皆無である。期待を煽るようなセミナーの華々しさとは裏腹に、中小規模の地元企業が提供できるのはケータリングなどのサービス業に留まり、経済的恩恵もプロジェクト全体の規模から比べれば微々たるものになるだろう。

写真:地元企業向けセミナー広告

主要各紙に掲載された見開き数ページにわたる地元企業向けセミナー広告(筆者撮影)
ともあれ、有望な資源開発プロジェクトの始動も追い風となり、以下の図1に示すとおり、近年のモザンビークはかつてなく多くの移民を受け入れており、2017年にその数は24万7000人に上っている。今後もその数はいっそう増加すること間違いない。しかし、移民管理の現場の対応は移民の増加・多様化に追いついていないのが実情である。ここでは、モザンビークにおける近年の移民法の変遷について纏める。

図1:モザンビークにおける移民ストック 1990年-2015年(単位:1,000人) 

図1:モザンビークにおける移民ストック 1990年-2015年(単位:1,000人)

(出典)Global Migration Portal(https://migrationdataportal.org)より筆者作成。

国際移民の管理体制は、往々にして受入国において強固に構築される傾向があり、送出国の管理体制は整備されていないことが多い。移民管理の脆弱な国々の能力強化の必要性がようやく認識され、2018年1月には、国際連合統計部および人口部、経済開発協力機構(OECD)、国際移住機関(IOL)の共催、そして欧州委員会統計部(Eurostat)、国際労働機関(ILO)、国際連合欧州経済委員会(UNECE)、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)、世界銀行の後援によって移民統計に関する最初の国際フォーラムがパリで開催された1。同フォーラムでは政策的必要性を満たすために、国際移民に関する統計データの収集、編纂、普及に関する模範的実践が検討された。同フォーラムにはモザンビーク統計局の職員も参加している。

歴史的に長らく国際移民の送出国であったモザンビークの移民管理体制は不十分であり、体系的な移民統計が存在しないことは既に指摘されている2。モザンビークにおける公式の移民統計は『全国人口・居住調査(Recenseamento Geral da População e Habitação: RGPH)』に一部含まれている。RGPHは1980年、1997年、2007年、2017年に実施されているが、国立統計局のウェブサイトにアクセス可能なデータとして保存されているのは1997年以降のデータである。しかも、1997年および2007年のデータは必ずしも形式が統一されておらず、2017年の詳細なデータは2018年9月現在未掲載である。管見の限りにおいて上記の4回のRGPHのうち、国際移民の実数・出身国まで記載しているのは2007年のみである。少なくとも公表されている統計データは近年の著しい変化を捉えてはいない。

国際移民の受入国へ――2014年移民法改正

モザンビークが国際移民の送出国であることは依然として変わりないが、同時に、周辺諸国の政治状況やモザンビーク自体の経済環境の変化を受けて、国際移民の受入国としての側面も無視できないものとなっている。モザンビーク政府は1993年施行の旧移民法(Lei n.o 5/93)3を2014年12月31日に改正した(Decreto n.o 108/2014)4。 1993年の旧移民法では、ビザの分類は、1)外交、2)優遇、3)公用、4)居住、5)観光、6)トランジット、7)訪問、8)商用、9)就学の9つであったが、2014年移民法ではビザの分類が次のとおり15種類に増設された。1)外交、2)優遇、3)公用、4)就学、5)国境、6)商用、7)就労、8)トランジット、9)観光、10)居住、11)訪問、12)スポーツ・文化活動、13)投資活動、14)一時滞在、15)乗換乗務員である。2014年移民法では、ビザ分類のうち、1)~3)が外務協力省、4)~15)が内務省移民局の管轄となっている。なお、30日以上の滞在を目的とする場合には、上記のカテゴリーのうちの多くが入国後30日以内に各州の移民局にて滞在用ビザに更新することになっている。

1993年の旧移民法と2014年の改正移民法の最大の相違点は、就労ビザに関する部分である。旧移民法では、商用ビザのカテゴリーはあるものの、就労ビザのカテゴリーがなく、事実上、居住ビザと就労ビザの役割を兼ねていたのは、外国人居住許可書(Documento de Identificação e Residência para Estrangeiros: DIRE)であった。しかし、2014年末に改正された移民法が、ほぼ3年が経過しようという2017年10月に施行され、これに備えて2017年9月以降、DIRE新規発給は停止された。この時期にDIREの新規発給を停止した理由について、移民局のスポークスマンは、2014年の新移民法で就労ビザのカテゴリーを設けた段階でDIREの廃止は既に意図されていたが、就労ビザに関連する他の法令の整備に時間を要したためであると述べている5

就労ビザに関連する他の法令とは、例えば外国人の雇用に関する割当制を導入した法令第37/2016号(Decreto n.o 37/2016, de 31 de Agosto)が挙げられる。法令第37/2016号は、2007年労働法(Lei n.o 23/2007, de 1 de Agosto, Lei do Trabalho)に基づき、外国人の雇用手続きに関する細則(Regulamento dos Mecanismos e Procedimetnos para a Contratacao de Cidadaos de Nacioalidades Estrangeiras)である法令第55/2008号(Decreto n.o 55/2008, de 30 de Dezembro)を改正したものである。割当制の導入は、モザンビークの天然ガスの埋蔵量が世界有数であることが確認された2009年以降、大幅に変化した国内の労働市場環境の変化に対応し、外国人専門技能職を一定期間雇用しながらもモザンビーク人の雇用を確保することを目的としている。

こうした移民法と労働法の改正を並行して進めつつ、2014年移民法の施行を受けて内務省移民局は2017年9月8日から新規のDIREの発行を止め、新移民法に基づく就労ビザがこれに代わることになったのである。なお、旧移民法に基づいて2017年10月以前にDIREが発給されている外国人は、就労ビザの有効期限が満期を迎えるまで既存のDIREも併用するが、新規に就労ビザを取得する場合にDIREの取得は不要となった。

2014年新移民法における研究職の位置と諸手続き

しかし、2017年10月の2014年新移民法の施行に伴う変更点、とりわけ新設カテゴリーである就労ビザ手続きの詳細や、DIREと就労ビザが併存する状態に移民局の職員も混乱しているのが実態である。2018年6月時点で、新移民法下での入国用の就労ビザの取得、さらには入国後の長期滞在用の就労ビザへの切り替え手続きについて、現地移民局の職員が精通しているわけではない。移民局マプト州支部の掲示板に公示されている諸手続きに関する情報も旧移民法に関するものが残存し、情報が更新されていない。ましてや在京モザンビーク大使館領事部もその内容についての情報は持ち合わせておらず、すべて本国内務省移民局に照会する必要があった。

以下では、リサーチャー・ビザの分類枠のないモザンビークの事例において、研究職はどう位置づけられるのかを備忘録的に記す。まず、研究職であっても、開発協力等の分野の実務組織に所属し、長期滞在をする場合には、二国間の合意により、モザンビークの外務協力省が管轄する公用ビザが発給される。日本・モザンビーク間の事例を挙げれば、日本国際協力機構(JICA)に属する場合がそれに該当する。一方、二国間の合意の枠組みの外で、大学等に所属する研究職が長期滞在を希望する場合には、内務省移民局が管轄する就労ビザの取得を求められる。2014年移民法第20条第1項では、内務省移民局が管轄する就労ビザの取得要件を次のように記載している。

第20条(就労ビザ取得要件)
1.就労ビザの申請には、本規則第11条の共通要件のほかに、以下の書類を要求する:
  a)雇用契約書
  b)被雇用者の場合は管轄省庁による証明書もしくは労働許可証
  c)自由業の場合は労働許可
  d)許可を取得する職業に関する学歴証明
  e)宗教分野での活動に関しては管轄省庁の許可書および所属組織の誓約書
  f)協力合意の下で労働者が入国する場合には、協力分野を管轄する省庁の許可書
  g)健康診断書
  h)モザンビーク国内における居住条件を満たす証明書
  i)移民局の指示に従い、緊急時における外国人市民および
     その家族が出身国に送還するための費用負担 に関する誓約書

上記の記載に関して若干の説明を加える。まず、第1項の冒頭に示された「第11条の共通要件」とは、有効期限6カ月以上のパスポート、財政証明、申請料の支払いである。次に記載事項a)~i)についてである。官報(Boletim da República)には上記の書式のとおりa)~i)のすべてが並記されている。その内容をみると、a)~f)は就労形態に基づくいわばビザの下位分類であり、g)~i)は就労形態を問わず必要とされる書類である。つまり、厳密には、並記されるべきはa)~f)の就労ビザの下位分類であり、g)~i)はa)~f)の下位分類に共通して要求される書類である。

大学等に所属する研究職の事例に照らすと、研究者は滞在国のいずれかの研究機関に客員研究員として在籍し、研究活動を行うのが一般的である。そうした事例は、受入機関との協力合意が存在するという文脈からf)に分類される。そこで管轄省庁の許可書が求められる。なお、在京モザンビーク大使館領事部は、就労ビザ取得に際して必要な追加書類が何であるかは伝えるものの、それが就労ビザの下位分類のうち、どの分類として処理されているのかは明確に説明しない。筆者の事例では、一旦就労ビザの発給許可が下りたとの連絡を受けたのち、追加書類として管轄省庁の許可書を求められ、就労ビザの発給が一度差し戻されている。

さて、筆者が追加的に提出を求められた管轄省庁の許可書であるが、これは本来、リサーチャー個人が管轄省庁に発行を求めるものではなく、受入機関が管轄省庁に発行を求めるのが通例である。筆者の場合は、国立大学エドゥアルド・モンドラーネ大学(Universidade Eduardo Mondlane: UEM)に付属するアフリカ研究所(Centro de Estudos Africanos: CEA)が受入機関である。内務省移民局によれば、この事例では、高等教育機関を管轄する省庁である科学技術高等教育職業訓練省(Ministério da Ciência e Tecnologia, Ensino Superior e Técnico Profissional: MCTESTP)の許可書が必要となる。

しかし、これに関して今度は受入機関の側で問題が発生する。CEA所長によれば、受入機関であるUEMが自治を謳う大学であることから、UEMの客員研究員の受入およびその調査内容に関して省庁の許可を得る必要はなく、UEMもそれを申請する立場にはないという。さらに、CEAの客員研究員の受け入れ実績に照らして、客員研究員のビザ申請に際してCEAが当該大使館領事部宛てにレターを発行することはあっても、MCTESTPに許可書の発行を申請する事例は過去になかったという。ただし、それは2014年の新移民法が施行される2017年10月以前の段階での話である。2017年10月以降、受入機関とMCTESTP、移民局それぞれの役割については情報が一切共有されていなかった。

こうしてビザの申請者である筆者は移民局と受入機関の間で板挟みになる上に、MCTESTPの担当部局(Direcção Nacional)長は、就労ビザの発給手続きに関して許可書を発行する当事者であるという認識を持ち合わせておらず、ましてや許可書の申請手続きに関して情報を持っていない。そこでMCTESTPに対しては、UEM/CEAにおける客員研究員としての受入許可書および研究計画書を提示し、UEM/CEAの受入許可書が有効であるとの裏書を発行してもらうよう直接交渉する必要があった。なお、その裏書のドラフトは筆者本人が用意した。

上記の手続きを経て、移民局が求める管轄省庁の許可書を提出し、在京大使館領事部から就労ビザが発給された。この就労ビザの有効期間は入国後30日間であり、その期間内に長期滞在用の就労ビザに切り替える必要がある。次のステップは、モザンビーク入国後、国内の内務省移民局マプト州支部での長期滞在用への切り替えである。このビザ切り替えの際の手続きおよび必要書類について在京大使館領事部に確認するも、有効な情報は持ち合わせていなかった。そこで在京大使館領事部に提出した書類一式を用意し、入国後に内務省移民局マプト州支部にて必要書類の確認から再び手続きが始まった。

写真:内務省移民局マプト州支部の外国人用部局

20年来規模の変わらない内務省移民局マプト州支部の外国人用部局(筆者撮影)

最終的に筆者の長期滞在用就労ビザへの切り替えと帯同家族の滞在ビザの切り替えに際して必要となった書類は以下のとおりである。まず、本人の就労ビザ切り替えについては、1)申請書(所定用紙購入)、2)パスポート、3)パスポート・コピー(データページ、入国時就労ビザ、入国スタンプの各ページ)、4)無犯罪証明書、5)帯同家族関係証明書類(戸籍謄本もしくは住民票)、6)勤務先財政証明、7)受入機関招聘状、8)関係省庁発行の許可証(MCTESTP発行の調査許可書)、9)受入機関推薦状(移民局宛)である。このうち、英文で発行された4)~7)の書類は移民局では受理されないため、ポルトガル語の公認翻訳・公証印が必要となる。帯同家族の一時滞在ビザの切り替えについては、帯同家族本人の1)~4)に加え、就労ビザ保持者の5)~9)のコピー、さらに10)就労ビザ保持者による帯同家族に関する信任状(Termo da responsabilidade)が必要となる。

上記の書類を数週間かけて揃え、ようやく移民局マプト州支部に提出した。しかし、移民局内でも、新移民法が施行された2017年10月以降、新移民法第20条第1項「f)協力合意の下で労働者が入国する場合には、協力分野を管轄する省庁の許可書」に該当する事例、すなわち就労ビザであるものの労働許可書を要件としない分類は稀有な事例らしい。申請者である筆者が自分の事例について説明したうえで、さらに目の前の窓口内部では複数の職員の間で書類が閲覧され、相互に確認し合いながら処理が進められていた。

入国後30日以内に長期滞在用のビザに切り替えられなければ、日本で苦労して取得した就労ビザも無駄になるうえに出国を余儀なくされる。一旦、隣国に出国したとして、再度入国するのに手持ちの書類で取得できるビザは、30日毎に出国を余儀なくされる短期滞在用である。長期滞在用のビザへの切り替えが滞りなく行われるよう、文字通り祈るような気持ちで、目の前の移民局職員の間を行ったり来たりする自分の書類を目で追っていた。その後、移民局が発行した領収書記載の発給予定日を数日過ぎたものの、申請していた就労ビザと帯同家族の滞在ビザは入国後30日を経過する間際に切り替えることができた。

おわりに

モザンビークも含め、長らく国際移民の送出国であった国々において移民の管理体制は極めて脆弱であり、その問題が国際的に認識されたのは近年のことである。冒頭にも記したとおり、まずは送出と受入の実態を体系的に把握する必要性が認識され、2018年1月に初めての国際フォーラムが開催されたばかりである。

移民の管理体制の強化が認識されたのには国内的かつ国際的な経済社会的な複数の要因がある。2010年代以降の新たな資源開発が牽引する投資に伴い、モザンビーク政府は特定の人的資源の受入を促進する一方で、モザンビーク人のための雇用を創出し、それを守る必要もある。また、長らく手薄であった移民管理は、非正規あるいは不法な移民の流入も許してきた。近年、そうした一部の移民の流入が近隣諸国で活動する過激派組織と繋がりを持つことが判明し、国際的な安全保障の問題として取り上げられつつある。

モザンビークにおいて近年の資源開発と非正規・不法移民の流入、さらには過激派武装組織による治安悪化はいずれも隣国と国境を接する北部地域に集中していることは偶然ではない。南部アフリカ開発共同体(SADC)やアフリカ連合といった地域機構が人の移動を促進する姿勢を示す中で、適切な移民管理を行うことが求められている。モザンビークにおける移民管理の法的枠組みはほぼ整備されたが、これが現場で適切に実践されるには今しばらく時間を要するであろう。

注記:出典のうち、インターネット上で入手したものについては、アクセス日はすべて2018年9月18日。
著者プロフィール

網中昭世(あみなかあきよ)。アジア経済研究所海外研究員(在マプト)。専門は国際関係学、地域研究、ポルトガル語圏を中心とした南部アフリカ地域の社会経済分野。現在、国立エドゥアルド・モンドラーネ大学アフリカ研究センター客員研究員として、モザンビークの社会変容と労働移動に関する研究をおこなっている。主な著作に「モザンビークにおける土地法の運用と政治力学」(武内進一編『現代アフリカの土地と権力』2017年)、『植民地支配と開発──モザンビークと南アフリカ金鉱業』山川出版社(2014年)など。

  1. UN DESA. "First international forum on migration statistics to kick off," 12 January 2018.
  2. Patrício, Gonçalves. 2016. "Moçambique: Compulsando as migrações internas e internacionais" Inter Espaço, 2 (5): 78-101.
  3. República de Moçambique. 1993 "Lei n.o 5/93" Boletim da República, 2.o Suplemento.
  4. República de Moçambique. 2014. "Decreto n.o 108/2014" Boletim da República, 24.o Suplemento, 31 de Dezembro de 2014.
  5. "No more DIREs for foreigners entering Mozambique to work, since September last," Club of Mozambique, November 9, 2017.