中東における家族の変容
調査研究報告書
村上 薫 編
2018年3月発行
表紙(228KB)
第1章
遺伝性疾患をもつ若者たちの結婚とリプロダクションの選択:トルコにおける重症型サラセミアの男女の事例から(997KB)/ 細谷 幸子
第2章
家族ワクフをめぐる家族の争い エジプト最高憲法裁判所の2008年違憲判決が示すこと (496KB)/ 竹村 和朗
第3章
病の前の舅の姿を求めて (484KB)/ 鳥山 純子
本稿では、私の記憶にある舅の姿をできるだけ忠実に描写することを試みる。それは学術論文の体はなさないが、今後、舅とその家族との介護を通じた関係の変遷を、舅という人物の物語に位置づけ考察するためには欠かせないプロセスである。本文では、舅の姿を、1)私にとっての舅の印象、2)私にとっての舅、3)舅のライフコース、4)子どもたちにとっての舅、5)寝たきりになるまでの舅の闘病、という要素に分けて記述した。
第4章
アラブ「家族」再考に向けて:研究動向と人口の概観 北アフリカ・チュニジアを中心に (619KB)/ 岩崎 えり奈
アラブ地域は1970年代に入るまで子沢山で知られる地域であった。ところが1970年代以降に急速に出生率が低下し、少子化に向かっている。少子化がアラブ地域の「家族」と社会にどのような変化をもたらすのかを考えるため、本稿では、アラブ社会の「家族」研究の動向と人口構造の変化を概観する。
第5章
単位としての世帯と家族的つながりに関する覚書:エジプトの「家族・親族」を捉える諸側面 (321KB)/ 岡戸 真幸
本稿では、エジプトの家族について、個人を基点に、いくつかの併存する視点から考えていく。まず、エジプトの政策のなかで家族がいかに考えられてきたかを、オスマン帝国領から独立を目指した19世紀以降のエジプトの政策に焦点を当てたいくつかの文献を元に明らかにする。世帯が国家により独立した単位として注目されるようになる過程を整理する。次に、中東を事例とした人類学で従来言及されてきた家族の特徴について、説明する。父系出自集団や父方平行イトコ婚の分析は、現地調査を経てまとめられてきたものであるが、人類学では常に世帯を超えたつながりに注目してきたと考えられる。その後、筆者が現地調査で行ってきたアレクサンドリアの地方出身者を事例として、出稼ぎ労働者の社会的ネットワークと、都市にある同郷者団体における地縁の再生産を具体的な事例として検討し、家族的つながりについて説明していく。最後に、エジプトの家族を考えるうえで、検討すべき課題は何かを述べる。
第6章
トルコにおける養子縁組へのまなざし (374KB)/ 村上 薫