ベトナムの労働市場と雇用問題-統計と先行研究のレビュー-

調査研究報告書

坂田 正三  編

2015年3月発行

表紙 / 目次 (200KB)
第1章
本稿は、公刊統計と既存研究のレビューを通じて、ベトナムの労働市場と企業雇用の変化について把握することを試みた。その結果、就労構造の転換が進みつつある一方で労働に対する需給のミスマッチも生じているとみられること、市場経済化に伴い企業の雇用慣行も変化しつつあるものの、そのプロセスは単線的に進んでいるとはいえないことなどが明らかになった。既存研究がとりあげてきたテーマや分析手法には偏りがあり、フォーマルセクターとインフォーマルセクターや所有形態といった通常の分類では把握しきれない複雑な現象も生じている。研究者には、実態の把握を可能とするようなデータや分析手法のいっそうの工夫が求められる。

第2章
本稿は、1970年代にILOが提唱した「インフォーマルセクター」概念とインフォーマルセクターの形成メカニズムに関する議論の変遷をレビューすることを目的としている。そして、2007年の労働力サーベイ以降明らかにされたベトナムのインフォーマルセクターおよび家内企業の状況を概観し、今後の当該分野における研究課題を示す。