southafricaKinky World of Hair キンキー・ワールド・オブ・ヘア

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立

1971年(2008年インド・ゴドレージュ・コンシューマー・プロダクトが買収)

売上高

9,620万ランド(2008年)

収益

1,060万ランド(2008年)

従業員数

400人

店舗数

24

会社概要と沿革

キンキーは、黒人やカラードの女性向けのファッションかつら、付け毛(エクステンション)などの製造と販売を手がけるヘアケア用品企業だ。2008年には同社の成長を見込んだインド企業ゴドレージュ・コンシューマー・プロダクト(以下、ゴドレージュ)が、2億6,500万ランドで同社を買収した。キンキーの製品は南アフリカ国内のダーバンで製造され、大手量販店を通じて販売されるほか、独自の専門店を展開し直接顧客に販売している。同社の2008年の売上高は9,620万ランド、収益は1,060万ランドで、2008年の買収以前の財務内容は非公開だが、CEOのレオナルド・バーラー氏によると、ここ数年の収益は年率30%台の伸びで推移している。

直販店の展開により収益増

近年収益が大幅に伸びている理由についてバーラー氏は、女性の美意識が高まっており美容品への支出を惜しまないことや、所得の底上げにより顧客層が広がったことを挙げている。また、美容品を必需品とみなす女性も増えており、不景気でも売れ行きは伸びているという。こうしたなか顧客を取り込むため、キンキーは販売戦略として直販店の展開を積極的に進めている。バーラー氏によると、美容品を専門とした直販店を持つ競合メーカーはまだ少なく、ニーズの拡大に合わせて素早く専門店舗を展開させるのが成功のカギになるという。従来、女性はヘアサロンでかつらや付け毛を選ぶというのが一般的だったが、サロンではスペースが限られており特定の種類のかつらやヘア用品しか選べないことが消費者の不満につながっていた。

キンキーは1971年に直販店第1号店をオープンし、90年代には5店舗、その後2008年までに16店舗、2009年には24店舗にまで店舗数を増やした。専門店販売にこだわる理由としてキンキーは、顧客の選択肢が広がるということだけでなく、自社ブランドが構築されるというメリットを挙げている。これまで、経済力がなくサロンを利用できない低所得者は、路上や量販店の隅に置かれた無名ブランドのカツラを購入していた。ところが、キンキーの専門店では品質の保証されたヘア用品が置かれ、専門のスタッフが商品の特徴やアレンジなどの利用方法を丁寧に説明する。こうして付加価値を明確にすることで顧客の満足度を高めているという。

多様な商品レンジで幅広い顧客層にアピール

キンキーは、幅広い顧客層を取り込むため、ファッション用かつらだけでも30ランドから700ランドまでの価格帯で幅広い製品を用意している。これは顧客の間に大きな所得格差があることを考慮しているためだ。所得分布の格差を示すジニ係数は1に近づくほど不平等が高いとされるが、南アフリカのジニ係数を人種別にみると黒人が0.62、カラード0.56、アジア系0.53、白人が0.46で、黒人間の所得格差が最も大きいのがわかる。

幅広い顧客を対象としているため、宣伝にも工夫が必要だ。キンキーは、CMや雑誌での広告のほか、とくに低所得者層向けの宣伝方法として口コミの効果を重視している。黒人層の多くは住居が密集するタウンシップで生活しており、都市部の生活と比べて近所との結びつきが強いからだ。同社は口コミの評判を高めるため、商品を市場に導入する前には頻繁に商品テストとサンプル配布を行い、多くの人々が新商品を無料で経験する機会を増やしている。

女性の社会進出で美容品市場が成長

一方、バーナー氏は、売れ筋商品の変化として、これまで人気のあった低価格商品から現在は高価格商品に売れ筋がシフトしていることを指摘している。この理由として、中間層に位置する黒人女性の間で、美容品への執着が強くなっていることを挙げている。このような顧客は製品への知識が高く、人毛かつらなどの品質の良いものを求めており、高価格のモノを身に付けたがる傾向がある。また、中間層の女性の特徴としてブランド志向が高く、テレビで人気タレントが着用したかつらと同じものを使いたがるなど流行に敏感であることを挙げている。中間層の女性は社会的地位が高い場合が多く、消費トレンドをリードする存在としても注目している。

ケープタウン大学ユニリーバ研究所は、中間所得層の女性を「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」として、その市場規模は150万人で購買力は女性の購買力全体の約4割にあたる1,200億ランドだとしている。男性との所得格差も縮小していることから、中間所得層の女性の台頭は、化粧品、ヘア用品、スキンケア用品などの美容部門の消費を引き上げるとみている。

周辺国市場の将来性にも期待

キンキーを買収したゴドレージュは生活用品を扱うインド企業だ。同社は、2006年には南アフリカのヘアカラー製造販売会社のラピドルも買収した。ラピドルは1952年に設立された歴史のある企業である。ラピドルが販売するヘアカラー用品のイネクトブランドは、エスニック(黒人・カラード)向けのヘアカラー用品では80%の市場シェアを誇り、2008年の売り上げは前年比30%増と順調に伸びている。また、ザンビア、モザンビーク、タンザニア、コンゴ民主共和国、スワジランド、ガーナ、ナミビア、ジンバブエ、モーリシャス、セイシェル、マダガスカルなどの周辺国でも販売流通網を築き売り上げを伸ばしている。2008年のラピドル全体の業績をみると、売上高が前年比12%増加の9,200万ランドで、営業利益は1,220万ランドとなっている。ラピドルを買収した際、ゴドレージュは、「成長が著しい巨大なアフリカ市場への進出を加速させていく」とコメントしているほか、キンキー買収の際には、「ほぼ全ての黒人女性は何らかのヘア用品(付け毛)を使っている。アフリカは将来的に高い潜在性を秘めている」とコメントしている。このような同社のアフリカのヘアケア市場参入への積極的な動きからも、市場のポテンシャルの高さが窺える。

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