ghanaGold Fields Limited

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

Gold Fields社は、南アフリカ、ガーナおよびオーストリアの8つの鉱山で金の採掘を行う世界最大の金採掘企業の1つであり、南アフリカで設立された。現在、金(ペルーでは銅)を抽出するための16の鉱石処理施設を運営している(南アフリカ8ヵ所、ガーナ4ヵ所、オーストラリア3ヵ所、ペルー1ヵ所)。年間生産量は約3億6400万oz、鉱石8300万oz、鉱物資源2億5100万ozである。

同社は、南アフリカのトランスバール州ウィットウォータスランド金鉱で得た資産を持つCecil RhodesとCharles Ruddによって1887年に設立された。1892年に南アフリカGold Fields 合同会社(Consolidated Gold Fields of South Africa :Consgold社)として再編成されたが、様々な不確実性によって苦しみ、本当に安定していたのは、アングロ・アメリカン社と協力して西部高地開拓を先導していた1930年代だけだった。一方、West Witwatersrand Areas社(West Wits社)は新規分野を開拓するために1932年に設立された。1959年にWest Wits社は、大規模なリストラクチャリングの一環で社名も「Gold Fields of South Africa」に変更し、イギリス系企業というよりもむしろ南アフリカの現地企業となった。1971年にWest Wits社は、その名前だけでなくGold Fields社の持つ南アフリカの全資産を引き継いだ。1990年代には、Gold Fields社とGencor社(General Mining and Finance社とUnion社が1980年に合併した会社)が合併した。この合併によってGold Fields社は、国内で2番目に大きく、全株式を公開している金採掘企業としては世界最大企業の1つとなった。 1999年にGold Fields社は、所有してなかったSt. Helena Gold Mines社の残りの株を買った。2001年11月には、St. Ives and Agnew Gold Mines社の株を買収した。次の年にはAbosso Goldfields社を買収している。

1993年にGold Fields Ghana 社は、Ghana政府からTarkwaの鉱業権を取得した。2000年8月には政府の同意を得てTeberebie北部の鉱業権を割り当てられた。Teberebieの権利は2018年、Tarkwaの権利は2027年に期限切れになる。2004年11月にGold Fields社はTarkwaで新しいSAG工場とCIL工場の連続運転を始めた。Tarkwa鉱山は国営の電気送電線網・水道・道路・鉄道の基盤に頼っている。必要物資のほとんどは、タコラディに最も近い海港や首都アクラ近くのテマ港から運ばれる。その海港までは陸路で約140km離れており、テマまでは陸路で約300km離れている。

Damangの露天採鉱は1997年8月に始まり、Gold Fields社は2002年1月23日に経営を担うようになった。歴史的に言えば、地下鉱山は1878年から1956年まで運転されていたが、長引くストライキとキャッシュフローの不足のために閉鎖されていた。Damang鉱山も国営の電気送電線網・水道・道路の基盤に頼っている。必要物資のほとんどは、タコラディの最も近い海港やアクラから運ばれる。その海港までは陸路でおよそ200キロメートル離れており、アクラまでは陸路でおよそ360キロメートル離れていた。Abosso社は、2025年まで有効の鉱山賃借権を政府から得て、Damangの鉱山利権を保持している。

国内の所在地

Tarkwaの金鉱はガーナ南西部の北緯5度15分・西経2度00分に位置し、首都アクラから西に陸路で約300km離れている。この金鉱はTarkwaの町から西に約4km離れている。Damangの金鉱はガーナ南西部の北緯5度11分、西経1度57分に位置し、首都アクラから西に陸路で約300km離れている。この金鉱はTarkwaの町から北に約30km離れている。

製品・サービス

Gold Fields社は地下と地表の金採鉱関連の活動(探査、抽出、処理、製錬)に主に関与する。またGold Fieldsは、白金族金属探査プロジェクトに関心がある。

従業員数

2008年6月30日の時点で、Tarkwaでは約2,900人の派遣社員を含む約4,700人の従業員が働いている。またDamangでは約1,350人の派遣社員を含む約1,600人の従業員が働いている。

財務情報

2008年6月30日締めの会計年度にはTarkwa鉱山は65万オンスの金を生産し、そのうち46万オンスはGold Fields社に分配され、残りはGold Fields Ghana社の少数株主に分配された。Damang鉱山は19万4000オンスの金を生産し、その内13万8000オンスはGold Fields社に分配され、残りはAbosso社の少数株主に分配された。

以下の表は、2007年度と2008年度の、Gold Fieldsの総販売量(オンス)と1オンスあたりの加重平均総キャッシュコスト(ドル)と総生産費(ドル)を述べたものである。

  2007年度 2008年度 単位あたりの総キャッシュコストの増加割合(減少割合) (%) 単位あたりの総生産費の増加割合(減少割合) (%)
金の販売量 ($/oz) 総キャッシュコスト ($/oz) 総生産費 (千oz) 金の販売量 ($/oz) 総キャッシュコスト ($/oz) 総生産費 ($/oz)
南アフリカ
Driefontein 1,017 349 419 928 414 515 18.6 22.9
Kloof 923 367 458 821 432 543 17.7 18.6
Beatrix 543 378 455 438 520 615 37.6 35.2
South Deep 166 595 714 232 768 919 29.1 28.7
ガーナ
Tarkwa 697 378 434 646 492 553 30.2 27.4
Damang 188 597 602 194 658 678 10.2 12.6
以下は、過去3年間のTarkwaの営業・生産成績の詳細である。
  年度は6月30日に終了
2006 2007 2008
生産
トン(千) 21,487 22,639 22,035
回収された金の等級(g/t) 1.0 1.0 0.9
金生産高(千oz) 709 697 646
営業成績($百万)
収益 373.0 444.8 531.5
総生産費 248.2 302.6 357.0
総キャッシュコスト 212.6 263.6 317.6
現金利益 160.4 181.2 213.9
1オンス当たりの金の原価($)
総生産費 350 434 553
総キャッシュコスト 300 378 492
金1オンスの生産に対する名目現金支出($) 357 500 753
以下は、過去3年間のDamangの営業・生産成績の詳細である。
  年度は6月30日に終了
2006 2007 2008
生産
トン(千) 5,328 5,269 4,516
回収された金の等級(g/t) 1.4 1.1 1.3
金生産高(千oz) 235 188 194
営業成績($百万)
収益 123.1 119.5 160.4
総生産費 105.0 113.1 131.6
総キャッシュコスト 101.5 112.2 127.8
現金利益 21.6 7.3 32.6
1オンス当たりの金の原価($)
総生産費 447 602 678
総キャッシュコスト 432 597 658
金1オンスの生産に対する名目現金支出($) 450 624 717

市場シェア

Gold Fields社の市場占有率は、2008年に23%であった。

金の生産高は2008年に260万オンスで4%増加した。金の価格上昇の結果、鉱業収益は23億ドルまで増加した。2008.6.30会計年度には、Tarkwaは65万オンスの金を生産し、そのうち46万オンスはGold Fields社に分配された。Damangは19万4000オンスの金を生産し、その内13万8000オンスはGold Fields社に分配された。

事業目的

持続可能な金採鉱において世界をリードする会社となり、5年以内に500万オンスの良質な金を生産する。

ビジネスモデル

Gold Fields社の戦略は、以下の基本的な3本柱を前提とする。第一の柱として、既存資産の最適化によって収益改善できるように、卓越した経営を行うことである。この経営は、まず生産性を改善することによって達成される。また、コストマネジメントの取り組みと成長分野への投資によってコストを削減できる。第二の柱として、長期的に利益を生む資産のさらなる獲得と開発を通して、地理的、技術的および製品のリスクを分散することによってGold Fields社を発展させることである。第三の柱として、Gold Fields社が操業している国と地方で操業許可を安定的に保持することによって、またコーポレートガバナンスの強固な規則を守ることによって、Gold Fields社の将来を保証することである。

Gold Fields社はグローバル企業と自認しているものの、一方では一部に、いくつかの国際事業を持った南アフリカの国内企業と見られていることを承知している。この認識を変え真にグローバルな企業として認められるためGold Fields社は、その経営を4つの地域に再構成するプロセスを開始した。その4つの地域とは、南アフリカ・西アフリカ・南アメリカ・オーストラリアであり、現在の構造よりも自律性をもった経営を行うことになる。これらの地域は、特に発展していて、ビジネスの成長に大いに関係しているだけでなく、安全かつ効率的な鉱山運営を任せる優秀な経営陣によって導かれる地域である。

地質学的にGold Fields社の要求に見合う鉱山を所有し得る国や地域の探索は別として、探査・経営企画グループは、将来の大規模な鉱業をどの国で展開するか判断することに多大な努力を割いている。金の保有が急速に減少する背景を考えると、会社のアプローチの1つとしては、一般的なリスク回避よりもむしろリスク評価とその管理を重視している。Gold Fields社は、他国の新規参入を容易にする現在の市場状況と必要性に照らして、長期の戦略的な重要性をもつ地域と繋がるために戦略的パートナーシップを結び、価値拡大の機会を捜し続けている。

株主・所有権益

Tarkwa鉱山の鉱業権をもつGold Fields Ghana社は、Gold Fields社が71.1%、IAMGold社が18.9%、ガーナ政府が10.0%所有している。Damang鉱山の鉱業権を持つAbosso社は、Gold Fields社71.1%、IAMGold社18.9%、ガーナ政府10%の所有で、Gold Fields Ghana社の持ち株構造を反映する。

政府との関係・社会貢献

新しい鉱物・鉱業法は、2006年3月31日に施行された。この鉱物・鉱業法は、現行の鉱物・鉱業法やその改正法を無効にした。しかし、鉱物に関して責任のある大臣の規制によって特に定めのない限り、無効となった法律のもとに与えられていた賃借権や許認可は今後も継続するということを新しい鉱物・鉱業法は定めている。

新しい鉱物・鉱業法の主要な規定は、以下の5点である。1点目に、鉱物事業での政府がもつ10%のfree carried interest(占有料を支払わない権益)は、租鉱区に制限される。2点目に、ブロック単位で境界を定められる地籍システムと呼ばれる土地の境界を定めるための新しいシステムの導入を行う。新しいシステムの下の租鉱区域とは、1ブロック未満または300以上の隣接するブロックでないこと示すことができる。3点目に、既存および新事業に関して、少なくとも5億ドル投資済もしくは投資予定の鉱業会社は、安定開発協定によって利益を得ることができる。すなわち、法や規制のいかなる改正があったとしても、15年以内は現在および将来の租鉱権の保有者は保護される。とりわけ、慣習・他の義務や税の支払いの程度、鉱山使用料・為替管理に関する条項、資本移転・配当送金に関するものである。4点目に、保有者が賃借期間の更新の申請を行った場合、さらに最高30年までの期間で租鉱権を更新することとする。ただし、保有者が法律や租鉱権の義務を遵守している場合に限られる。5点目に、鉱山使用料率を鉱業の総収入の6%以下3%以上に制限する。

ガーナの法律において政府は、補償の支払いなしで、ガーナで租鉱権を持つガーナ企業の10%の株を得る資格がある。政府は、Gold Fields Ghana社とAbosso社の各々のこの10%の利益を既に受けた。Gold Fields Ghana社の事業に適用され続ける鉱物・鉱業法の下で、また新しい鉱物・鉱業法の下でも、政府は、会社との同意の有無にかかわらず、鉱業会社の「特別な株式」を得るオプションを持っている。政府はGold Fields Ghana社に対しては、このオプションを行使しないことに同意したが、Abosso社に対してこのオプションを保持した。

ガーナの鉱業法によると、租鉱権の保有者がガーナの預金口座に特定の費用のためにその外貨収益額の一定割合を保持することに関しては、ガーナ中央銀行や金融担当大臣によって許可される。外貨保有勘定に関する政府との合意によると、Gold Fields Ghana社はTarkwa鉱山に由来するその収益の20%をガーナまで送金し、そこへ送金された収益をガーナで使うか、ガーナの口座で預金することが求められる。ガーナ政府に認可されるAbosso社の送金額は2年おきに再交渉されるが、2009年時点でAbosso社はガーナにその収益の25%を送金する義務がある。2009年時点でGold Fields社は、ガーナの事業からの収益の約40%をガーナに送金する。

一般法人所得税率は、2006年1月1日には28%であったが、2009年時点では25%に引き下げられている。資本設備の税法上の減価償却は、資本控除制度の下で運用される。資本控除は、資産コストの80%にあたる初期引当金から成り、その残存価額は次期に繰越され、定率法で1年ごとに50%の割合で下がる。政府とGold Fields Ghana社によるプロジェクト開発協定と政府のAbosso社との認可行為において同意したことによると、政府は、ガーナに通常在住しない株主には、Gold Fields Ghana社またはAbosso社によって申告される配当や資本払戻に関しては、源泉徴収税を払わなくてもよいとされる。

Gold Fields社は、現地鉱業収益の3%から12%の範囲で計算される四半期の鉱山使用料をガーナ政府に支払うならば、権利が期限切れになるまで、全3つの現地の地表・地下の金開発ができる。2008年の会計年度に、TarkwaとTeberebieで生産される金に対して、Gold Fields Ghana社が収益の約3%に相当する鉱山使用料を払い、Damangで生産される金に対して、Abosso社が収益の約3%を払った。

製品開発

2008年会計年度にGold Fields社は、North工場の堆積浸出パッドの建設、CIL設備の拡張、採掘装置の拡張などのために、Tarkwa事業での資本支出として約1億7000万ドルを使った。2009年会計年度には、同様の目的で約1億4600万ドルを予算に組んだ。

Damangは、Damang採掘の合理化(DPCB)によってより高い等級の鉱石のために金生産を毎年増やし、また第7の浸出タンクの建設と初期の試運転によって効率を改善した。最終的な採掘限界に到達する2013年会計年度に、DPCBは完了される予定である。

2002年1月のGold Fields社によるDamangの取得後に、Damang租鉱区域で熱水性と集塊性の鉱化作用をテストすることによって、既存のDamang採掘場にとって代わるような産地を捜すために、探査プログラムが始まった。REX採掘場は、Damang租鉱区域の南に置かれる新しい採掘場である。この採掘場は当初、2010年会計年度で採掘される予定だったが、REX探査プログラムによって2006年会計年度で行われた。REXプロジェクトにおいて違法な鉱業活動の発生を考慮して、経営者側は2009年の会計年度にレックス採掘場での作業を早めることに決めた。会社と不法な鉱山労働者との間の交渉は数カ月続いたが、結果として何事もなく鉱山労働者の解雇となった。不法な鉱山労働者は、鉱床の一部を採掘したが、鉱業計画が大幅に影響を受ける前に、彼らを追い出した。

2009年8月に、Gold Fields社は、西アフリカの地域発展の拠点となるガーナ事業の計画を発表した。結果として、副社長兼ガーナ地域責任者のPeter Turnerは、取締役副社長の地位を得て、2009年8月1日付けで西アフリカ地域部門長に昇進した。

鉱山の資源力(MRP)プロジェクトは、国営の電力網を補う発電を行えるように、ガーナの4つの主たる鉱山運営者の間で合併事業を行って、2008年の第2四半期に完了した。このプロジェクトは、電力不足の時の国の負担を軽減するために行われた。MRPは、Gold Fields社の電力需要の約25%を補う。