ラテンアメリカ・レポート
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論稿
サンパウロにおける外国人の犯罪被害と安全への取り組み
近田 亮平
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2022 年 39 巻 1 号 p. 60-75

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抄録

グローバル化の進展や紛争により多くの人々が国境を越えて移動し、先進国地域や世界の主要都市に外国人が集まる傾向が強まった。そして、国内に流入する外国人をめぐるさまざまな問題への関心が高まり、外国人や外国系住民のおかれた状況をはじめ、受け入れ社会の雇用環境、経済成長、社会保障に与える影響などに関する研究が行われてきた。外国人の流入という点において、ブラジルは歴史的に移民大国であるとともに難民も多く受け入れ、民族の多様性や人種混交により寛容性の高い国として知られている。ただし、ブラジル最大の都市サンパウロは、多発する日常的な犯罪に加え南米最大級の麻薬組織の拠点であるため、治安は劣悪な状況となっている。

本稿では、外国人の受け入れで先駆的な国であるブラジルのサンパウロを事例として、外国人の犯罪被害と安全への取り組みを定性的に分析する。「サンパウロの外国人は犯罪被害に関してどのような問題を抱え、それらに対して官民問わずどのような取り組みが行われ、課題があるか」という問いを立てる。そして、外国人は不法滞在や違法労働などの問題から安全に関する取り組みへのアクセスが困難となり、犯罪被害に遭う可能性が高くなると指摘する。また、流入外国人の質量ともの変化に対応した安全への取り組みが試みられているが、問題の改善には受け入れ側だけでなく外国人自身による取り組みが重要だと論じる。

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© 2022 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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