2023 年 64 巻 2 号 p. 2-22
本稿は,韓国鉄鋼業が急速に発展を遂げた要因の一つとして,韓国最初の銑鋼一貫製鉄所である浦項製鉄所の建設における日本企業からの技術協力の効果的な学習に着目し,韓国企業がどのように製鉄所建設というエンジニアリング・プロジェクトにかかわる技術を学習していったのか,その学習のプロセスを明らかにすることを目的とする。浦項製鉄所の第1期建設では日本企業が製鉄所の基本設計から設備の詳細設計と供給,建設工事,そして操業に至るまで包括的な協力を行った。しかし,あくまでも建設の主体は韓国企業のポスコであり,ポスコの技術担当者が計画段階から建設のすべての過程に主体的に参加して技術学習の機会を得た。とくに同じ技術担当者が計画当初から継続してエンジニアリング・プロジェクトの特定分野を担当することによって,技術を効果的に学習した。このことは,ポスコがその後,独力で製鉄所を建設できるまで技術能力を高める,大きな足がかりになったと考えられる。