アフリカレポート
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特集 コロナ禍におけるアフリカの人々
ナイジェリアにおけるCOVID-19の経験――ロックダウン下において生起する暴力――
玉井 隆
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2021 年 59 巻 p. 28-41

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抄録

本稿は、ナイジェリアにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まる2020年2月から、本稿執筆時である2020年10月を対象として、政府がどのようにCOVID-19に対応したのか、またそれが実施される現場において、人びとはなぜ、どのように暴力の被害を受けたのかを検討する。ナイジェリア政府はこれまでさまざまな感染症対策を経験しており、COVID-19の流行への対応にそれが十分に活かされていた。先行研究はそうした過去の経験の重要性を指摘し、政府がWHOの推奨する施策を適切に行なった結果、COVID-19の被害が当初の想定よりも少なかったことを肯定的に評価している。しかし本稿は、ナイジェリア政府がCOVID-19の感染拡大を抑止するためのロックダウンを実施したことで、国家の治安機関が暴力を行使する契機を増加させていると指摘する。社会的に脆弱な人びとの生活を考慮しないロックダウンは、COVID-19の世界的な感染拡大阻止という大義名分と正当化のもとで、ナイジェリア国家権力による暴力を拡大させている。

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© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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