アフリカレポート
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論考
TICADの変遷と世界――アフリカ開発における日本の役割を再考する――
高橋 基樹
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2017 年 55 巻 p. 47-61

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抄録

TICAD VIをめぐっては、ビジネスや中国との競争など国益に関心が集まったが、本旨のアフリカ開発についてはどのような議論が重ねられ、今後どう対応していくべきだろうか。日本の対アフリカ支援とTICADの議論は、両者の状況や世界の情勢に応じて変化してきた。1993年の第1回から10年後の第3回までの前半期には、アフリカ経済の低迷を受けて、アジアの経験の強調、貧困削減の重視などが掲げられた。また、日本の援助理念の到達点である人間の安全保障の観点からアフリカが抱える深刻な課題が取り上げられ、それを果たせない国家のあり方が問題にされた。他方、2008年の第4回以降はアフリカの高度成長とそれにより強まったアフリカ諸国の立場を反映し、これらの問題への注目度は低下し、経済成長や民間投資の促進が関心の的となった。しかし、依然として人間の安全保障とそのための国家の改革は開発の基盤である。中国との競争に走るよりも、戦略的棲み分けを模索すべきであり、工業化など、長期の視点から、アフリカの開発に資する支援に注力すべきである。

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© 2017 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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