アフリカレポート
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論考
ウガンダ北部紛争をめぐる国際刑事裁判所の活動と地域住民の応答
川口 博子
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2017 年 55 巻 p. 36-46

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抄録

国際刑事裁判所(ICC)は、現地の社会的な特性を省みない応報的な処罰を指向しており、裁判のプロセスへの被害者の参加が限定的であるという批判を受けてきた。ウガンダ北部の紛争に介入した当初にも、現地社会の論理や価値観を無視しているという批判が強かった。一方、2015年に容疑者のひとりが逮捕されたことで、ICCは現地住民から目撃談や被害申告を集める活動を開始し、地域住民は好意的に応答している。ただしICCがその対象者として想定していた人びとは、多くの地域住民が認識していた紛争被害者とは異なっており、その乖離がおおやけに議論されることがないままに、対象者の範囲が拡大された。地域住民は多様な紛争経験をもち、彼らの社会関係はその経験と密接に関連している。本稿ではICCの活動プロセスを、地域社会の現状と住民の紛争経験に関する認識との関連のうえで明らかにし、その活動が地域社会に対してどのような意義をもっているのかを検討する。

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© 2017 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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