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開発途上国における工業化と脱工業化

調査研究報告書

佐藤 創 編

2018年3月発行

表紙 / 目次(132KB)

第1章

20世紀においては、工業化による産業構造の変化こそが経済成長をもたらすものと考えられ、また実際に、多くの国でそうした現象が観察されてきた。しかし、世界経済を全体としてみると製造業の雇用者数は実は過去数十年間さほど変化しておらず、また開発途上国のなかでも工業化が進む国と経済発展の初期段階で脱工業化がはじまっている国とが存在し、そのことが21世紀に入ってより顕著になっているとする議論がある。「早すぎる脱工業化(premature deindustrialization)」論である。はたして早すぎる脱工業化は本当に起こっているのか、起こっているとしたらなぜか、について、先駆的な業績であるダスグプタとシンの研究(2007年)とロドリクの研究(2016年)を中心に、本稿は検討を加えた。前者は工業化が経済成長のエンジンであることを確認しつつ、他の産業(サービス)もまた経済成長のエンジンでありうることを示唆しているのに対し、後者は早すぎる脱工業化が生じている理由はグローバリゼーションにあると主張し、また21世紀における後発国の経済成長には悲観的である。こうしたインプリケーションの基礎となる、早すぎる脱工業化が本当に生じているのか、またそのメカニズムはなにかという論点について、先行研究の間でまだ合意があるわけではなく、さらなる検討が必要である。

第2章

本章では、第1章で議論された「早すぎる脱工業化」(Premature Deindustrialization)の実証分析のためのデータについて議論を行う。代表的研究であるDasgupta and Singh[2007]およびRodrik[2016]において行われている実証分析について、より包括的な分析を行うためのデータの利用可能状況について述べた後、各データの特徴や問題点について検討する。