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発展途上国の女性の国際労働移動――東アジアを中心に――(基礎理論研究)

調査研究報告書

児玉由佳

2017年3月発行

第1章

本章では、発展途上国の女性の国際労働移動に関する現状と課題について、統計データと先行研究をもとに検討する。統計データが示すように、近年の移民の特徴の一つはほぼ半数を女性が占める「移民の女性化」である。海外女性労働者の多くは家事・介護労働など親密圏とされる領域で労働に従事するため、受入国や送出国の社会に影響を及ぼす。受入国での社会的変化についての先行研究には蓄積があるが、送出国の社会における影響については今後さらなる研究が必要であろう。

第2章

世界中にいる在外フィリピン人は2013年に約1024万人と推定され、これはフィリピン人口の約1割に相当する。ただし、彼らの中には現地で家族と共に生活する永住移民も多く含まれる。短期的な雇用契約によって海外に出稼ぎに行く海外就労者は、世界中に約420万人いると推定されている(2013年)。フロー統計でみると、年間約180万人超が出国している。彼らの送金がフィリピン経済を支えているといっても過言ではなく、その経済的役割は大きい。フィリピン女性に限れば、彼らの職業は依然として家事労働を主としたサービス従事者が大半を占める。行き先も中東地域が多い。技能を持つとされる介護福祉士や、高度な専門知識を持つ看護師なども少しずつ増加しているが、圧倒的に人数の多い家事労働者の影に隠れている。また、受入国の移民政策にも影響されやすく、安定しない。職種に限らず国内外の賃金格差が存在し、なおかつ受入国が外国人労働者に門戸を開放する限り、フィリピン女性の海外就労は続くと思われる。