一党支配体制下の議会:中国、ベトナム、ラオス、カンボジアの事例から
調査研究報告書
山田 紀彦 編
2014年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
山田 紀彦 編『 独裁体制における議会と正当性——中国、ラオス、ベトナム、カンボジア—— 』研究双書No.621、2015年11月発行
です。
本稿における研究課題に対する暫定的な結論は、以下の2点である。
①ドイモイ以降、選挙は制度的にも実態的にも概ね一党独裁体制の維持に寄与する方向で実施されていると考える。
②国会は、国会の立法機能と監視機能を強めつつ、一党独裁体制の維持に寄与する方向にあるものの、地方議会は一党独裁体制の維持を困難にしかねない状況にあるように考える。
民主的政治制度が導入された1993年以降、国民議会は行政府や司法府に対するチェック機能を果たすことが期待されたが、カンボジア人民党による支配が確立した2000年代以降、政策決定の効率性を重視した制度変更が頻繁に行われるようになった。
人民党は2000年代半ば以降、憲法および国民議会内規の改正という「民主的」手続きを経て、定足数の削減、本会議におけるグループ制の導入、または議会指導部ポストの分配などの手段を通じて、野党だけでなく連立を組むフンシンペック党をも政策決定過程から実質的に排除し、議会の「効率化」を進めている。