開発と社会運動 - 先行研究の検討 -
調査研究報告書
重冨真一 編
2007年3月発行
Edited by Shinichi Shigetomi and Kumiko Makino Protest and Social Movements in the Developing World
Edward Elgar、2009年5月発行
です。
第1節 社会運動理論のレビュー
第2節 途上国の社会運動研究
第3節 途上国社会運動研究の方法論的課題
現在社会運動研究の主流をなす理論は、「マーケッティング理論」と総称できる特色をもっている。すなわち社会運動体を企業に擬して、それが商品開発(イシューのフレーミング)により人々の需要(不満)を掘り起こし、市場機会(政治機会)のあるところで商品の売り込み(イシューの普及、賛同者の獲得)をする、というのが現代の社会運動理論なのである。これは先進国の状況を前提とした理論であり、民衆の置かれた客観的状況自体が不満のあり方、社会運動体の活動方法、機会を規定する途上国にそのまま適用できるものではない。しかし途上国に関する研究は、構造的問題から直接運動が導かれるような議論が多い。構造と運動を結びつける中間項の研究が求められている。
第1節 中国における環境汚染被害者の行動に関する研究
第2節 日本における公害被害者等の社会運動に関する研究
むすびにかえて— 今後の研究課題 —
中国における環境汚染被害者の行動を分析する枠組を探るため、中国の事例に関するいくつかの先行研究や関連資料に加えて、当該分野において研究蓄積の豊富な日本に関する文献を中心に研究サーベイを行い、論点の整理を試みた。今後の研究課題として、制約条件下における情報収集のあり方とその吟味の重要性、中国の実情にあった分析枠組の構築の必要性などを指摘した。
第1節 インドにおける社会運動研究
第2節 女性学、フェミニズム視点からの女性運動研究
第3節 社会運動理論と女性運動
おわりに
本稿は、インドにおける社会運動研究と女性運動研究の文献紹介から、前者における女性運動研究の位置づけ、また後者における社会運動理論の適用について検討している。これまでの多くの研究では、両者間の相互関係は限定的であった。漸く、社会運動とフェミニズム両方の理論を統合した研究も登場し始めたところである。
第1節 産油地域の住民をめぐる動き
第2節 問題への視点・論点の推移
むすびにかえて
ナイジェリアの石油産出地域(通称ナイジャーデルタ)では、1990年前後から住民による権利要求の動きが活発化し、社会運動として組織化を伴いつつ展開してきたが、とくに「青年」組織のなかには過激な活動にはしるものもあらわれた。先行研究では政治経済学的な分析が主流ながら、その評価が分かれるところであり、マイノリティ論やエスニシティ論としての展開を経て、新たな分析視角が求められている。
第1節 南アフリカのエイズ政策と社会運動
第2節 民主化後の社会運動に関する先行研究
第3節 政策形成と社会運動
アパルトヘイト体制から民主主義体制へと移行した南アフリカで、1990年代後半以降、新しいタイプの社会運動が出現している。そのような社会運動の一つである治療行動キャンペーン(TAC)を次年度にケーススタディとして取り上げる準備作業として、(1)事例の概要紹介、(2)民主化後の南アフリカの社会運動論の整理、(3)事例分析に用いる視角の提示、を行う。
第1節 ラテンアメリカにおける社会運動と研究の流れ
第2節 「新しい社会運動」論の影響とラテンアメリカにおける適用
第3節 新しい形態の民衆運動:都市下層民の運動、CEB、人権運動
第4節 急進的社会運動の再生?:今日の民主化の質を問う民衆の抵抗・要求運動
おわりに:ラテンアメリカの社会運動—自律的市民社会の形成を求めて
ラテンアメリカにおける社会運動は1980年代の経済危機と民主化過程を背景に多様化し、この時期を対象とした社会運動研究も隆盛期を迎えた。1990年代、構造調整政策に続く市場自由化経済路線をとった民主体制は、新たな矛盾と対立・不満を生み、1990年代後半から再び社会運動の挑戦を受けている。現代ラテンアメリカの社会運動、特に民衆運動の趨勢は、政治体制とその政策転換に大きく連動している。