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『新編地誌』(全20巻) / アリー・ムバーラク著

الخطط التوفيقية الجديدة لمصر القاهرة ومدنها وبلادها القديمة والشهيرة / تأليف علي مبارك بولاق، المطبعة الأمرية الكبرى، ه 1306 ( 1888) 20 ج
Ali Mubarak, al-khitat al-tawfiqiyah al-jadidah li-misr al-qahirah wa muduniha wa biladiha al-qadimah al-shahirah. Bulaq, alMatba` al-Amiriya al-Kubra, H. 1306 (1888) 20 v.
使用言語 : アラビア語

【解説】
アリー・ムバーラク著『新編地誌』(『タウフィーク治世下の誉れあるエジプトと、その由緒ある著名な町や村の新編地誌』)は、近代エジプト社会史研究の資料的宝庫である。

ここで「地誌」という訳語を充てたヒタト(al-khitat: الخطط)とは、「地誌と歴史と伝記とを総合した」中世エジプトの独特の叙述スタイルを指す。こうした百科全書的な叙述は、著名な年代記歴史家マクリーズィー以来たえて久しかったが、『新編地誌』という浩瀚な書物によって5世紀ぶりに復活したのである。ムハンマド・アリー朝の開明官僚であり、当時、最大級の文人であった著者は、前近代のイスラム的知識人と近代知識人の橋渡しをする人物であった。

本書は、全20巻からなり、最初の6巻分がカイロ、次の1巻がアレキサンドリア、続いて10巻分が地方の著名な町や村々、2巻分がナイル川の治水、最後の1巻が貨幣史に充てられている。本書が依拠するのは、ヘロドトスなど古代ギリシアの著述家に始まり、「新編」のための「原本」であるマクリーズィーと、その後の年代記作家たち、さらにはナポレオンのエジプト遠征隊が作成した『エジプト誌』の原資料などからなる、膨大な文献群である。

また、文部省や公共事業省などの大臣を歴任した著者は、執筆に当たって、当時の部下の官僚たちから直接、情報を収集することができた。カイロの街区や宗教施設に関する細かい記述、ウラマーを中心にした膨大な評伝集、ナイロメーターなどの灌漑技術の情報、さらには地方の慣行や伝説などの興味深い話も各所に挿入されている。

筆者は、アジア経済研究所図書館が所蔵するこの貴重な初版本(ブーラーク版)をデジタル画像化し、現在、その部分的な検索システムを開発し、公開に向けて準備を行っている。 (公開予定サイト  http://ricas.ioc.u-tokyo.ac.jp )なお本誌は全20巻が4分冊にまとめられている。

(長沢 栄治/東京大学東洋文化研究所教授)


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