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図書館

アジア経済研究所図書館は、開発途上地域の経済、政治、社会等を中心とする諸分野の学術的文献、
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中東・北アフリカ・中央アジア

国際ブックフェア

第22回 アサド図書館国際ブックフェア2006

2006年8月 1日~11日、アサド図書館で恒例の国際ブックフェアが開催された。例年9月に開催されているのだが、今年はラマダーン(断食月)が9月半ばから始まるため、日程が早まり8月初旬、隣国のレバノンでヒズボッラーとイスラエルとの戦争が続く中での開催となった。ベイルート-ダマスカス間の道路は既に寸断されており、レバノンの書店の参加は期待できないと思われたが、予想に反してシリアに次いで多くの書店が参加していた。アサド図書館の担当者によると、ブックフェアに参加した書店数は例年と変わらないとのことであった。国境が閉鎖されたわけではないので、レバノンの書店は、劣悪な道路事情にもかからず、本を運んできたわけだ。これは戦時下で聞く明るいニュースの一つであった。

アサド図書館で作成・販売している『販売書籍リスト』の付録:国別参加書店リストによると、各国からの参加店数(代理店を含む)は以下である。

シリア:124 レバノン:84 エジプト:64 サウジアラビア:24
ヨルダン:20 クウェート:5 オマーン:3 アラブ首長国連邦:2
モロッコ:2 カタル:1 イギリス:2 ドイツ:1
(計332)

隣国ヨルダンからの参加が思った以上に少ないのが意外であったが、シリア、レバノンに比べて出版 も行っているような書店が少ないことを考えれば、それほど不思議ではないかもしれない。各国とも首都にある書店が大半だが、地方都市に拠点を置く書店(シリアではアレッポやラタキア、デリゾール)も少数ながら参加していた。この他にアラブ連盟、シリア赤新月社(レバノンでの戦争関連の写真展 示のみ)が参加しており、また各国政府機関も出版物を販売・配布していた。(付録:参加国リストによるとヨルダン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、シリア、チュニス、カタル、クウェート、レバノン、リビア、エジプト、オマーン、モロッコ、イエメン、スペイン、イギリス、イラン、ドイツ、ベルギー、ロシア、韓国、インド、アメリカが参加していたとされるが、筆者が訪問した際に見た記憶のない国も挙げられている。上記“国別参加書店リスト”には政府機関もいくつか含まれている。)

例年ブックフェアの際にアサド図書館が作成しているこの『販売書籍リスト』は、94 年に筆者がブックフェアを訪れた際には1冊だったが、今年は3巻組みになっており、約10 年間で出版点数が増 大したことを感じさせられた。冊子体のリストは主題別・書名順で作成されており、書店名と価格もあわせて掲載されている。第3巻は、販売書籍のうち特に2005 年及び2006 年に出版されたもののみを集めて、同様に主題別・書名順で掲載している。この販売書籍リストは、数百もある書店のブースを1軒ずつ覗かなくても関心のある分野の書籍情報をまとめて得ることができるため、それなりに便利である。ただし掲載点数が多く字もかなり小さいため、リストでのチェックも骨の折れる作業ではある。

また、冊子体のリストでは、関心分野がリストの主題分類にない場合(例えば“ 女性”あるいは“ジェンダー”という項目はないので、代わりに“政治”、“経済”、“社会”などの)関連する複数の主題を見なければいけない。この点に関しては10 年前には存在しなかった検索機能付CD-ROM が4年前から作成されるようになり、飛躍的に状況が改善された。特定の書籍を簡単に探せるだけでなく、特定の単語が含まれる書籍や特定の著者の資料を検索でリスト化できる。会場では、これらを活用して作成したと思われるリストを見ながら本や書店を探している人の姿もちらほら見かけた。会場には、政府機関コーナー、児童書コーナー及び洋書、コンピューター関連書籍コーナーが設けられている。他は特に明示はされていなかったが、アサド図書館の担当者によると、扱っている書籍の主題が近い書店がまとまるように、書店のブースを配列したとのことであった。ただし1つの書店が複数の主題の本を扱っている場合も多く、特定の主題の資料を網羅的に集めるには、前述の販売書籍リストを利用した上で、会場の地図で目当ての書店のブース番号をチェックし赴く方が効率的であった。しかし参加書店リストには載っているのに、会場の地図には載っていない書店もあり、またようやく書店のブースに辿り着いても販売書籍リストにある本が実際にはないというケースもあった。まだサービスに関しては改善の余地はあるものの、様々な書店の資料を1箇所で入手できる利点はかなり大きい。

シリアの書店情報に関しては東京大学のアジア研究情報ゲートウェイに詳しい情報と地図が出ているが、ここに掲載されていない書店も多数参加しており( 一方で出店していない大手書店もあったが)、書店の新規開拓にはまたとない機会となった。加えて戦争の影響で行きにくくなってしまったレバノンの書店から資料を購入できたことは、大きな収穫であった。さらにブックフェアでは割引価格(割引率は書店によって異なる。筆者が買った中で一番割引率が大きかったのはシリア文化省で4割引。)が適用されるため、お得でもある。アサド図書館の担当者によると、ブックフェア期間中、約3000人が訪れたというが、今年の来訪者数は例年に比べて少なかったという。シリアで最も暑い8月に開催されたことも影響していると思われるが、アサド図書館の担当者によれば、レバノンでの戦争の影響が大きいという。確かにシリアには多くの避難民が流入しており、各省庁やNGOの担当者は避難民支援に追われたようだが、一般市民の日常生活には物理的にはそれほど大きな影響は出なかった。にもかからわず、隣国レバノンでの戦争は人々に精神的に大きなプレッシャーを与えていたようだ。戦争が終わって気分的にようやく解放された、という声があちこちで聞かれたことを考えれば、戦争中はブックフェアに行く気分になれなかった人が多かったのかもしれない。来訪者数の減少は売上の減少にも直結したようで、今年 の販売書籍数は例年よりも少なかったという。シリアでは、新しい書店を見かける一方、大手書店が閉店したり、以前は社会科学系の書籍を扱っていた書店が児童書や料理本などよく売れる本しか扱わなくなっていたり、という寂しい状況を目の当たりにすることもある。ブックフェアが戦争の影響を受けたことは非常に残念だが、今後も規模とサービスを拡大してこの国の出版文化を支えていって欲しいものである。

(報告: 在ダマスカス 高橋理枝海外派遣員)