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奥田 聡研究員インタビュー

「集積したファクト・データを独自の視点で編上げ分析する」 


所属:地域研究センター 主任調査研究員
専門分野:韓国経済
現在は韓国のFTAとその主要貿易相手への影響に関する研究を実施中。
[略歴] [主な著作] [その他]
  • これまでの韓国研究について
    1985年に研究所に入り最初に配属されたのが当時の動向分析部。いきなり「アジア動向年報」の韓国担当になったのですが、中学時代に短波ラジオでハングル放送を聞いていたので、韓国には親近感があってあまり戸惑いはなかった。でも、専門の経済だけでなく、政治、外交、社会とオールラウンドの研究が求められたので最初は大変でした。当時の育成方法として、現地の新聞、雑誌からの情報や過去の蓄積からファクトを抽出するという訓練、いわばどっぷり現地につかるやり方が主流だった。こうした経験が地域研究者として現在も役立っている。また、韓国情勢についてマスコミや官公庁、企業からの問い合わせに対応する必要があり、彼らとのコミュニケーションを通して多様なニーズや切り口がつかめたのも良い経験だった。最初の海外派遣では、学問としての国際経済学、とりわけ「比較の視点」をトレーニングしたいと思って米国に行ったけれども、韓国から距離をおいて初めて地域専門家の比較優位、重要性がわかった。ただ、2回目に韓国に赴任した時には、逆に対象にどっぷりつかっていても見えないこともあることがわかった。

  • 韓国経済研究における重要な視点、あるいはアジ研ならではの研究手法など。
    僕の場合、現地の新聞や雑誌あるいは統計からファクトやデータを抽出して編み上げる手法を基本としている。たとえば、定性的な部分を把握した上で、膨大な貿易データからミクロな個別品目を積み上げて多角的に分析し全体の傾向や影響を見つけ予測することにしている。現地調査の際は、自分の仮説や集めたデータに対し、現地で一国民、一消費者がどう見ているか聞くようにし、果たして自分の考えがシェアされているか裏を取るようにしている。その意味で、タクシーの運転手に話を聞くのも重要で、統計が示す変化より一般市民の方がより鋭いものを感じている場合がある。しかし最近、現地の政府、企業から本音を聞き出すのが難しくなっている。近年、韓国は日本に追いついてきて、むしろ半導体などは韓国の方が進んでいる。競合相手として日本に情報を漏らすことを警戒しているのでしょう。さらに、情報過多のため取捨選択し、情報の吟味に手間がかかるようになってきている。

  • 今回刊行した「韓国主要産業の競争力」について。
    経済危機後、韓国の各産業は荒波に揉まれながらも年5%の経済成長を維持し全体的によくやっているというのが本書の主旨です。それまで韓国の産業は日本モデル追随の一点張りだったが、ちかごろでは日本の戦略とは別な分野での成功例が見られる。例えばサムスン電子がD-RAMやフラッシュメモリーの開発に取り組み成功したように。東南アジアでは裾野産業がなかなか広がらない状況だが、韓国はそこから脱却し始めたと言える。自動車部品も国内で生産できるようになり、何もかも日本頼みということはなくなった。今後の課題は何を動力産業とするかだが、問題が山積しているのも事実だ。あまりにも急激な発展を遂げているので自前の技術開発が進んでいない点、少量多品種的な生産について未対応という状況で、さらに中国の追い上げも激しい。

  • 今関心を持っている研究テーマ、現在取り組んでいる研究テーマについて。
    今年度取り組んでいるのが韓国のFTAに関する研究ですが、サブプライムローン問題でFTAはかき消されてしまった状況だ。いま、この問題が新たな経済危機をもたらすかに関心を持っている。韓国は国際化を進め、輸出、海外投資が韓国経済の成長を牽引してきた。こうした国際化が「過ぎたる国際化」として負の側面が表面化した場合、しばらく回復に時間がかかるかもしれない。ただ、現在のウォン安を活かして輸出に向けられれば急場を凌げ、次の戦略を立てることも可能だ。韓国では10年前の経済危機の経験から、一般の個人、企業は保守化しており、危ない投機も以前ほどはしなくなった。金融当局のモニタリングも厳しくなっているので、韓国国内の要因で事態が悪化する可能性は少ないのではないか。、日本の「失われた10年」ほど深刻にはならないのではないかと思う。その面でも日本から学んでいますから。

(取材:2008年11月25日)