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国宗 浩三 研究員インタビュー

「IMFにおいて期待される日本の役割は?」


国宗 浩三 研究員

所属:開発研究センター 国際経済研究グループ長
専門分野:マクロ経済学、国際金融論、通貨危機の理論など

  • いつごろから国際金融論に関心をもたれたのですか?
    ちょうど私が大学院生のころ、ラテンアメリカの債務危機が起きたのでマクロ経済学では国際金融論が花形の分野でした。それで、「どうすれば債務を返 せるようになるのか」、「こんなに債務が多いと返したくなくなるんじゃないか」といった今に通じるような議論がされていて非常に面白かった。個人的にも途上国に一人旅をし、「どうして経済的な格差が発生」して「どうすればなくなるのか」と、非常に素朴な関心から途上国の問題と国際金融の研究が自然とつな がったわけです。

    マクロ経済学が私の専門領域ですが、アジ研に入所して4、5年後に「アジア通貨危機」が勃発したため『トピックレポートNo.28』や『アジアを見る眼No.99』といった出版物にまとめているうちに、いつの間にか通貨危機の研究にどっぷりつかってしまったという感じです。

  • 「岐路に立つIMF」は包括的なIMF研究書
    國宗 浩三
    アジ研では国際金融の専門家は少ないのですが、所内研究者4名と外部委員2名で研究会を立ち上げ、IMFの機能と役割、これまでの活動や今後のあり方について包括的にまとめました。日本でもアジア通貨危機の際、IMF政策を批判する研究や論調が一時的に盛り上がりましたが、一般的にIMFに対する関心が低い。でも、日本は第2の出資国ですからもっと影響力を行使すべきです。IMFでは、出資国上位五カ国は、単独で理事を置くことができます。日本は米国に次ぐ第二の出資国なので、当然、単独の理事を送り込んでいますから、さまざまな情報も得やすい立場にあります。このように、日本は潜在的に影響力のあるポジションにあるわけですからもっと発言すべきです。

  • アメリカ発の金融危機が途上国へ与える影響は?
    この本の編集中に今回の未曾有といわれる金融危機が勃発したので、残念ながらこの状況変化は本書の内容には反映されていません。ほんの少し前まではIMF は商売上がったりの状態で、運営資金にも事欠く状況だったのが、今後IMFへの支援要請が急増したら資金が底を着く可能性が懸念されるまでに至っております。

    しかし、こうした状況変化に率先して対応したのが日本政府であったのは、嬉しい誤算です。日本政府は、昨年10月のG7で危機の伝播に苦しむ開発途上国にとって、従来のものよりも使い勝手のよいIMFの金融融資制度が必要だという提案を行いました。IMFはこれに応えて、10月末には短期流動性融資制度という新制度を創設しています。その後も、日本政府はIMFの出資額倍増を提案し、それが実現するまでの措置として、最大1000億ドル(10兆円)の資金をIMFに融資する表明しています。同時に、IMFの意思決定方法の改革が必要であるとしています。いずれも高く評価したいと思います。

    さて、多くの途上国にとっては、今回のアメリカ発の危機では、金融面での影響よりむしろ日米欧が同時に不況に突入したことによる貿易面での影響の方が大きいと思われます。今年度は国際資本移動に関する研究会を実施しており、この中でも金融危機の途上国への影響についても分析することになると思います。

  • 2003年にはIMFの客員研究員でしたが、IMFの印象は?
    通貨危機が起きた際、マクロ経済の観点から金融対策を立てるがIMFです。IMFの中でどのように意思決定が行われているか実際の現場をこの眼で見たかったのです。

    IMFでは職員のトレーニングを非常に重視していて、セミナーやトレーニングコースが毎月のようにあります。全米から高名な研究者を招いて集中講義を開いたり、その流れで共同研究の話が自然に出てくる。最新のエコノミクスをどう活用すべきかに関心が高い。国際金融論ではIMFのワーキングペーパーが質が高く眼を通すようにしています。

    ところで、現在の世界的な危機に際して、先進国が最初にやった政策が財政拡大と金融緩和による金融機関の救済です。でも、アジア通貨危機の時、IMFはどう言ったかというと「財政は引き締めなさい、金利は引き上げなさい、安易な銀行救済はしてはいけません」と180度反対のことを言っていました。IMF資金の主な出し手である先進国のダブルスタンダードぶりにはあきれるばかりです。

  • 研究のスタンスは?
    研究ということでは、途上国研究に限らず通説は疑ったほうがいい。自分の頭で考えるようにしています。長期的に見た場合、10年前常識だったことが全部ひっくり返っていることが良くありますが、10年後に読み返してもぶれていないような研究が理想です。

(取材:2009年2月17日)