環境・資源

リサイクル Recycling

インドネシアの埋立処分場近くでの再生資源の分別作業(2008年2月小島道一撮影)
インドネシアの埋立処分場近くでの
再生資源の分別作業
(2008年2月小島道一撮影)

開発途上国では、路上のゴミ捨て場や廃棄物の埋立処分場で、ゴミ拾いが盛んに行われており、都市貧困層の生業の一つとなっています。拾い集められた古紙や金属類、プラスチックなどの再生資源は、仲介業者をとおして、リサイクル工場に運ばれ、原料として利用されます。

ごみの処分は、廃棄物に含まれる水分が多いことや経済的にコストがかかるため、一部の都市を除き、大規模なごみの焼却炉は設置されておらず、大部分のゴミは埋立処分されています。廃棄物埋立処分場のゴミが燃え大気汚染が発生したり、浸出水による水質汚濁の問題が発生したりしており、廃棄物埋立処分場の建設をめぐって、各地で反対運動がおこり、徐々に、新規の処分場の立地が難しくなっているのが実状です。このようななかで、分別収集の実施、拡大生産者責任の導入などリサイクルにより積極的に取り組む方向性を示す国も増えてきています。

経済成長の著しい開発途上国では、国内で発生する再生資源だけでは、再生資源需要を満たせないため、先進国など海外から再生資源の大量に輸入するようになってきています。例えば、中国は、2007年に廃プラスチック691万トン、古紙2266万トン、鉄スクラップ339万トン、銅スクラップ558万トン、アルミニウムスクラップ209万トンを輸入しています。

リサイクルは、一般的にエネルギーや資源の保護につながり、環境には良いと考えられていますが、リサイクルの過程で大気汚染や水質汚濁といった問題が発生し、場所によっては、健康被害も生じています。このような健康被害は、公害関連の規制の執行の強化で対処すべき問題ですが、開発途上国では規制がゆるかったり、執行が十分にできなかったりすることも少なくありません。そこで、有害廃棄物がリサイクル目的や処分目的で開発途上国に輸入され、汚染を引き起こすのを防止するため、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」という国際条約ができています。バーゼル条約では、有害廃棄物の越境移動には、輸入国政府の同意が必要であることを定めており、輸出国政府は輸入国政府の同意を得て初めて、輸出者に輸出許可を出すこととなっています。この条約により、鉛屑の貿易量が減少するなど、一定の効果があったと考えられていますが、それでもいまだに、正規の手続きを経ずに有害廃棄物が貿易され、輸入国で摘発される事例も少なくありません。また、輸入された再生資源のリサイクルだけでなく、国内で発生した再生資源のリサイクルの過程での汚染も生じており、対策が必要となっています。

小島 道一