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障害 Development and Disability

開発途上国社会にも障害者、障害は個人ではなく社会の問題

フィリピン、ダバオの協会前の盲人の物乞い
フィリピン、ダバオの
協会前の盲人の物乞い
ミレニアム開発目標は2015年までに一日1ドル未満の所得の人の半減を目標としていますが、こうした開発目標の達成のためには、貧困の問題、中でも開発途上国に世界の8割がいると言われる障害者の問題を避けて通ることはできません。またWHOによれば全人口の約10%は障害者であると言われています。このことを世界銀行第9代総裁James D.Wolfensohn 氏は、「周縁においやられている人たち人たちを開発途上国のメインストリームに連れ出すことは、貧困削減にとって極めて重大で、差別と排除の中にある人々の希望、また人間の反映する機会を拡大することになる。」 のように表現しています。国際的にも世界銀行、USAID(アメリカ)、DFID(イギリス)、JICA(日本)で、開発途上国の障害者の問題は各機関の中で正式に扱う課題となってきています。さらに2006年8月25日には、国連では、メキシコからの提案を受けた障害者の権利条約草案が特別委員会で可決され、総会に提出されました。この条約草案では、途上国も含めた世界の国々での障害者の権利の保障と実現がうたわれており、国際協力の条項もあることから、日本など先進諸国による途上国開発支援の枠組みとも大きく関係してくることになるはずです。
障害については、従来は、医学やリハビリテーションの側面からのみとらえる傾向がありましたが(これを「障害の医学モデル」と言います)、こうした障害を個人の問題、個別的、周縁的な問題ととらえる考え方から、近年、障害というのは、基本的に社会との関係の中に存在する問題であり、社会の側が障害者と呼ばれている人たちを排除していることに問題があるという観点から、社会環境の不備に障害を見いだす考え方、「障害の社会モデル」に移りつつあります。国連総会でもこうした観点から、1993年に「機会均等基準」が採択されましたが、これもこうした動きとリンクした動向です。国際社会の認識は、こうした社会的障壁の除去にすでに軸足を移し、先に述べた障害者の権利条約との絡みで障害者の問題については、かつての「慈善アプローチ」に代わる「権利アプローチ」が主流となりつつあります。

インドのデリーにある障害児と
インドのデリーにある障害児と
非障害児を一緒に教育する学校で
こうした世界的な動向を受けて、世界各国でこの分野の研究も加速しています。地域的にはNGOの活動が盛んなインドをフィールドとした研究が目立つほか、従来は医学的な障害そのものについての概説や支援の方法などについて論じていたものが多かったのが、社会の問題との関わりや社会的排除の仕組みとの関わり、またA.センのケイパビリティ・アプローチを援用しようとする試みなどが出るようになってきています。まだまだ新しい分野ですが、政策的必要性はとみに増しています。障害者をも包括した開発(Disability-Inclusive Development、DID)をどのように達成したら良いのか、エンパワメントとメイン・ストリームを二つの柱としたツイン・トラック・アプローチという「障害と開発」分野の主流的考え方の実現のための基盤的研究が課題です。

この分野で取り組まれないとならない研究的課題としてはたとえば、「人道主義の中に含まれる慈善主義的開発は、障害の社会モデルの立場からはどのように評価すべきか」、「開発援助においてCross-Cutting Issueとしての障害を位置づけるためにはどのような組織制度が望ましいのか」、「マイクロ・ファイナンスをDIDのツールとして有効に位置づけるための必要条件」、「途上国の中で障害者であり、かつ女性でもあるといった人たちの問題はどのようなもので、何がアプローチとして今、必要なのか」といったものがあります。
森 壮也