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貿易・投資 Trade and Investment

モノ、カネは利潤を求めて国境を越える


世界の貿易額(クリックすると拡大します)

近年、国境を越えた経済活動が増大しています。具体的には、経済活動のためのヒト・モノ・カネの国際的な移動の増大ですが、このうち、貿易はモノの移動を、投資はカネの移動をとらえたものです(ヒトの国際的な移動については国際人口移動を参照)。

世界の貿易量は年間13兆6000億ドルに達し(2007年)、1985年の1兆8000億ドルと比較して約7.6倍に増大しています。このような急速な貿易量の増大は、世界全体の経済成長にともなう、いわば「自然増」に加えて、1)貿易自由化にともなう関税の引き下げ、2)輸送費・通信費などの国際的な取引コストの低下、が貢献していると考えられます。
ガントリー・クレーンでコンテナ化された
ベトナム・ダナンのティエンサ港
貿易自由化については、主にGATT/WTOの場を利用した多国間交渉によって進められてきましたが、近年、主に先進国と発展途上国間の農業問題を巡る対立によって、停滞を余儀なくされています。代わって急速に増加しているのが2国間で貿易自由化を行う自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)で、日本も2002年のシンガポールとの協定締結を皮切りに、各国とのFTA交渉を積極的に進めています。ただ、こうしたFTAが無秩序に増加することで貿易相手別に異なるルールが適用され、貿易実務が混乱する「スパゲティ・ボール・エフェクト(spaghetti bowl effect)」の発生が懸念されています。

また、輸送費・通信費など国際的な取引コストの低下によって、一般的に貿易は増大しますが、それに加えて、従来は一国の国内で行われていた生産工程が国境を越えて行われるようになることも、世界的な貿易量増大の一因であると考えられています。

国際貿易は、先進国が工業製品を途上国が一次産品を輸出する「産業間貿易」、先進国同士が同様の製品(例えば乗用車)を相互に輸出する「産業内貿易」、さらには、同じ製品の工程が国境を越えて行われることで生ずる「工程間貿易」が加わって、複雑化しています。これにともない、国際貿易理論の側でも、主に産業間貿易を念頭にした伝統的な比較優位(comparative advantage)の理論、ヘクシャー=オーリンの定理(Heckscher-Ohlin theorem)から、産業内貿易を説明する新貿易論(new trade theory)、工程間貿易を説明するフラグメンテーション(fragmentation)理論など、現実に即した説明を行う努力が続けられています。

ベトナム北部ハイフォン港の
コンテナ・ヤード
一方、国際的な投資は、投資先の企業を経営することを目的とした直接投資と、金融資産として運用することを目的とした証券投資に分けられます。世界の直接投資は2007年には過去最高の1兆8000億ドルに達しましたが、世界金融危機の影響を受けて2008年には1兆7000億ドル、2009年は1兆2000億ドル以下に減少すると見られています(UNCTAD推計)。一方、日本の対外直接投資(日本から海外への直接投資)は、1990年をピークに減少し、1990年代後半からはほぼ横ばいの状態が続いていました。しかし、2005年以降は再び増加する傾向にあります。直接投資を説明する理論としては、ダニング(J. Dunning)が提唱したOLIフレームワークが有名です。また、貿易論や空間経済学においても、直接投資の主体である多国籍企業の活動を取り入れる試みが盛んに行われるようになっています。

一般的に、直接投資は受け入れ国の経済成長に貢献すると考えられています。特に、1985年のプラザ合意以降の円高に対応するために日本企業が行った対外直接投資は、ASEAN各国を中心に受け入れ国の経済成長に大きく貢献したと考えられます。ただし、先進国の企業が途上国で活動することで環境を汚染したり、児童労働を促進することを懸念する声もあります。

熊谷 聡