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技術-知的財産権 Intellectual Property Rights and Developing Countries

知的財産権と開発途上国

ジェトロ・北京センターのニセモノ展示館
ジェトロ・北京センターのニセモノ展示館
知的財産権とは、新しい工業製品や製法といった発明、文学・音楽などの芸術作品、あるいは植物品種などを独占的に利用する権利です。知的財産権には、特許権・著作権・植物新品種育成者権などいくつかの種類ありますが、それらはいずれも各国政府が発明者・創作者・育成者に与えます。政府がこのような独占権を付与する背景には、発明者等の権利が法的に保証されなければ、技術進歩や創作活動が充分に行われないというロジックがあります。たとえば新製品という発明には、アイデアを練る時間や実験のコストなどがかかります。このような発明コストを回収できる見込みがなければ、発明者は努力を費やさないでしょう。知的財産権制度は、発明者が一定期間だけ独占的利潤を得ることを許し、発明のインセンティブを高めるのです。
さて今日の開発途上国は、世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)のもとで発効した「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定」(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights: TRIPS Agreement)を通じ、知的財産権保護に関する最低基準(ミニマムスタンダード)の遵守を義務づけられています。しかし医薬品の特許保護や植物新品種保護の義務化は、途上国国民の保健や食糧といった生命に直接関わる分野において独占力を生むものとして、強く警戒されています。また、日本を含め、今日先進国と呼ばれる国々は知的財産権の保護水準をその時々の発展段階に応じて選択してきたにもかかわらず、TRIPS協定は途上国に高度な保護を求めているのは不公平にも思われます。

途上国における知的財産権のあり方に関しては、今でも議論が続いております。その一方で、知的財産権が途上国経済に与える影響については、まだ分からない部分があるのも事実です。たとえば日本・韓国・台湾など東アジアで飛躍的な経済成長を成し遂げた国では、欧米技術の模倣が技術進歩に貢献したことは間違いありません。しかし、地場企業による「小さな技術開発」を保護するよう設計された独自の特許制度や実用新案制度が、これらの国の技術開発を支援したことが、最近の研究で明らかになりつつあります。また、知的財産権制度が先進国から途上国への技術移転に貢献するという研究結果も発表されています。

TRIPS協定の改正などを通じ、国際的枠組が再構成されようとしている現在こそ、知的財産権制度が途上国経済に与える影響をよりよく理解する必要があるでしょう。
(久保 研介)