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エネルギー Energy

成長と生活向上の動力源

中国四川省の国有炭鉱 (注)
中国四川省の国有炭鉱 (注)
エネルギーは経済成長にとって不可欠のインフラのひとつですが、先進国と発展途上国とでは持つ意味合いが若干違うと言えます。先進国では、既に産業構造がエネルギーをたくさん消費する形態ではなくなっており、経済成長とエネルギー消費の増加に関する関連性は強いものではなくなっています。例えば日本の状況を見れば、自家用車の普及や宅急便の増加により輸送部門の消費するガソリン、あるいはエアコンの普及による民生部門の電力消費などがエネルギー消費量を増加させる要素ですが、産業によるエネルギー消費はこの30年もの間、非常に低い増加に止まっています。したがって先進国のエネルギー消費量全体の伸びは非常に限定的で、横ばいないし減少している場合すらあります。ところが、発展途上国の中には、工業化により経済成長を達成している国が数多く存在し、そうした国ではエネルギー消費は産業部門によって牽引されており、非常に大きな伸びとなっています。通常、こうした段階にある国はGDP成長率とエネルギー消費量の成長率が大体同じくらいの伸びで増えていくということが経験的に言えます。また発展途上国の中には、工業化以前の段階にある国も多数存在しています。そのような国では、基本的な生活インフラのひとつとして、煮炊きに用いる石炭や灯油、照明やテレビなどの簡易な電化製品を利用できる程度の電力を幅広く供給できるかどうかが求められることとなります。
2004年時点での世界のエネルギー生産量は合計112億2328万トン(石油換算、以下同じ)で、その内訳は石油39億5461万トン(全体に占める比率35.2%)、石炭27億7572万トン(同24.7%)、天然ガス23億695万トン(同20.6%)、原子力7億1407万トン(同6.4%)、水力2億4148万トン(同2.2%)、バイオマス11億7302万トン(同10.5%)、再生可能エネルギー・その他5734万トン(同0.5%)となっています。消費状況を見ると、アメリカが群を抜いた第1位で23億2589万トン(20.7%)、続いて中国が16億935万トン(14.3%)、その後ロシア6億4153万トン(5.7%)、インド5億7285万トン(5.1%)、日本5億3320万トン(4.8%)となっています。先進国では石油や天然ガスがエネルギー消費の中心となっていますが、例えば中国やインドでは石炭の比率が非常に高いという状況があります。また貧困国では、バイオマスなどがエネルギー消費の大半を占める場合も往々にしてあります。

地域によっては、エネルギー産業が経済の根幹を占める国というのも少なからず存在し(端的な例が中東諸国)、そういった国々ではエネルギー開発が国の経済発展を考える上で重要な課題ともなります。エネルギー開発が経済発展に及ぼす影響というのはなかなか複雑で、エネルギー資源を有していることは本来安価なエネルギー供給を利用して経済発展にも有利なように思えますが、実際には産業構造がエネルギー開発一辺倒のモノカルチャー構造に陥ってしまい、製造業などの発展が見られないなど、逆にエネルギー開発が発展を阻害しているという見方があります。実際、エネルギー生産国で製造業も発展している国はそれほど多くはありません(その大きな例外がアメリカですが)。また国際関係論では、技術を持った先進国が中核として存在し、発展途上国は周辺に置かれ、付加価値の低い一次産品やエネルギーを供給する役割を押しつけられ、搾取される構造があるとする従属論のような見方もあります。

またエネルギー消費は環境問題とも密接な関わりがあります。しかしエネルギー消費に起因する環境問題は先進国では、地球温暖化問題を別にすれば、既にほぼ解決済みの問題であると言えます。煤塵やSOxやNOxなどの汚染物質については、除塵装置、脱硫剤の添加、排煙脱硫装置、燃焼時の熱管理、脱硝装置などによる技術的対応が可能であるためです。他方、こうした技術的対応策の費用は発展途上国の企業にとっては負担が大きく、その導入がなかなか進まない状況があります。したがって工業化の過程で化石燃料の消費が増加することで、大気汚染が深刻化するケースは途上国ではしばしば生じます。また一方で、貧困国では商業エネルギーの普及段階にも到達していないため、エネルギー源としてバイオマスなどの非商業エネルギーに依存し、そのため木材が伐採されるという問題があります。それが砂漠化の原因ともなるため、それに代わる持続可能なエネルギーシステム(例えば灯油の供給など)を構築することが重要な課題となります。

(写真 注)半世紀近くに及び、中国のエネルギー消費を支えてきた石炭生産の根幹を担ってきた国有炭鉱は、市場経済化の過程で赤字経営に悩まされている。かつて日本も経験した地域経済、雇用の問題など非常に大きな深刻な問題が横たわっている。
(堀井 伸浩)