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米政策と日本の支援

アフガニスタン動向

新領域研究センター 鈴木 均
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この記事は2009年11月5日にデイリープラネット(CS放送)「プラネットVIEW」でオンエアされた『アフガニスタン: 米政策と日本の支援』(鈴木均研究員出演)の内容です。

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アフガニスタンでは今月2日、アブドゥラ候補の決選投票辞退に伴って8月の投票から2ヶ月ぶりにカルザイ現大統領の再選を発表しました。それを受けオバマ大統領は、カルザイ大統領を電話で祝福する一方で、アフガン安定と汚職の根絶に向け「言葉ではなく行動」で取り組むようカルザイ大統領に念押ししたといいます。一方、岡田外務大臣は2010年から5年間で総額40億ドル程度の民生支援などを示しています。大統領選の結果によってアフガニスタンはどう変化するのでしょうか?また、アフガニスタンへの日本の支援策はどうなるのでしょうか?

まず、2日にカルザイ大統領が再選したアフガニスタンですが、大統領選の結果はどう影響するのでしょうか?

aイランの場合は6月の選挙以来現在でも政治危機が続いていますが、アフガニスタンの選挙では米国にとって問題はカルザイでもアブドゥラではなく、政権のレジティマシーの確保こそが重要でした。その意味では決選投票の中止は米戦略にとってプラス面とマイナス面があります。

決選投票の中止は米戦略にとってプラス面とマイナス面があります。プラス面(1)治安確保、投票率などリスクのある決選投票を行なう必要がなくなり、アフガン政策の次の段階への迅速な意向が可能にプラス面(2)米国にとってカルザイ大統領は気心が知れているマイナス面(1)不正選挙の疑惑が残ったことで政府の正統性が揺らいだマイナス面(2)汚職等の批判をしてきた米国とカルザイ政府との関係にしこりが残る可能性

qアフガニスタンの米軍増派問題はどうなるでしょうか。

aオバマ 大統領は数週間のうちに1万~4万の増派を決定するでしょうが、米軍はタリバンに対する圧倒的な勝利を目指している訳ではありません。目標はカルザイ政権による支配の維持拡大とタリバンの切り崩しで、そのためには民生支援が最大の柱となります。

q日本政府も鳩山総理の反対にもかかわらず、北沢防衛大臣はけさの会合で首都カブールのISAF=国際治安支援部隊への自衛官の派遣などを提案していますが…

aアフガニスタンの情勢は現在非常に厳しく、戦闘地域への自衛隊派遣は問題外でしょう。さらに外国軍の駐留に反発するアフガン国民の一般的感情を考えても、制服組の派遣は民生支援そのものの障害になる可能性すらあります。韓国軍も2007年以降ISAFからは撤収しており、現時点でISAFに自衛隊を送るという提案は現実的ではありません。民生支援の警備に自衛隊を派遣するのであれば、むしろアフガニスタン警察や国軍との連携を先に検討するべきではないでしょうか。

qそして復興支援策ですが、岡田外務大臣は2010年から5年間で総額40億ドル程度の民生支援などを示しています。これについて結論には至っていませんが、どうお考えですか?

a日本としてできることとできないことを明確にし、戦略的に組み立てることが大切です。アフガン情勢を考えれば自衛隊派遣は問題外であり、鳩山首相も11月4日にそう発言しています。農業支援、医療教育支援、インフラ整備、警察支援などの分野は「安全な地域から」推進すべきです。ですが、「穏健派元タリバン兵士の職業訓練」については実効性が低いと考えられます。

「穏健派元タリバン兵士の職業訓練」については実効性が低いと考えられる理由(1)穏健タリバンの範囲や定義も明確でない。(2)訓練を実施した兵士が再びタリバンに合流すれば、敵に塩を送る結果になる。(3)仮に成功した場合、現状では逆にテロ攻撃の標的になる可能性もある。

q岡田外相は11日のカルザイ大統領との会談で、「元タリバン兵士への職業訓練を実施する方針」を表明しました。これはタリバン参加者に社会復帰への道を開くことでタリバンの切り崩しをしようとの発想ですね。

a戦略的にはむしろ最もタリバンから遠い所から支援を拡大するべきなのではないでしょうか。日本政府としてはDDR(武装解除・動員解除・社会復帰支援)で一定の成果を収めたという自負があります。しかしDDRについても成功したという発想だけではなく、むしろなぜその後定着しなかったのかを反省する姿勢が必要ではないでしょうか。

民生支援は対タリバン戦争の最前線であると考えるべきです。もし仮に米軍が即時撤退し、カルザイ政権が崩壊してアフガニスタンが完全にタリバン化しても、日本政府はアフガニスタン支援を続けるのかといえば、そんなことはないでしょう。

対タリバン戦争は価値観の戦争であり、近代化というものを常に外部からの介入・侵略としてしか受け止めてこられなかったアフガニスタンの国民に近代化の果実を実感してもらうことこそが重要だと思います。

2009年11月