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ウマラ政権、わずか4カ月で首相辞任

ペルー情勢レポート

在リマ海外研究員 清水 達也
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2011年12月31日
2011年12月10日、サロモン・ラーナー首相が辞任した。後任の首相には、ラーナー内閣で内務相を勤めていた元軍人のオスカル・バルデス氏が就任、同時に行われた内閣改造では10人の大臣が交代した。カハマルカ州で続いている鉱山プロジェクトに対する抗議活動を収拾できなかった責任をとったものとみられている。ウマラ氏の選挙キャンペーンを資金的にも戦略的にも支えて大統領の信任も厚かったラーナー首相が、わずか4カ月で辞任に追い込まれたことは、今後のウマラ政権の運営にどのような影響を与えるのだろうか。

前回のレポートで報告したコンガ・プロジェクトに反対する無期限ストを巡る情勢は、その後以下のように推移した。中央政府は民間企業による投資を積極的に受け入れる立場を取っており、12月4日にはラーナー首相がカハマルカ市に乗り込んでサントス州知事など反対派との直接交渉を行い、事態の収拾を試みた。しかし両者は合意に達することができなかった。これを受けてウマラ大統領は同日夜、カハマルカ州の4郡に非常事態宣言を発令した。非常事態宣言下では、夜間外出禁止令など自由な往来が制限されるほか、自由に集会を開けなくなったり、警察が市民を拘束したり、通常の手続きを踏まずに家宅捜索をできるようになる。これによって政府は、無期限ストを力で抑え込もうとした。しかし反対派はカハマルカ州内の非常事態宣言が発令されていない郡に抗議活動に加わるよう呼びかけるなどして抗議活動を続けた。このような背景の中、ラーナー首相が辞任した。

エル・コメルシオ紙などの報道によると、閣内における意見の不一致がラーナー首相の辞任につながったという。ラーナー氏とともにガルシア・ナランホ女性社会開発相やギセケ環境相などの比較的左派と言われている人物や、モラ国防相やブルネオ生産相などトレド元大統領が率いるペルー・ポシブレ系の大臣が辞任している。これによりコンガ・プロジェクトについての閣内の意思を統一し、合意の見込みが得られない交渉を続けるのではなく、実施に向けた具体的な手続きを進めるための体制を整えた。

その後、サントス州知事は12月14日に無期限ストの中止を宣言し、これを受けて政府も16日に非常事態宣言を取り消した。19日にはバルデス首相がカハマルカ市でサントス州知事らと交渉、コンガ・プロジェクトの環境影響評価調査について再検討する方向で交渉していたものの、最終的には合意に達しなかった。27日、政府はリマ市にカハマルカ州の関係者を招いて、環境影響評価調査を国際的な専門家に依頼するとした合意文書に署名したが、サントス州知事や一部の反対は組織の代表は出席しなかった。それどころかサントス州知事は28日、コンガ・プロジェクトは実施できないとする州法を公布した。これに対してバルデス首相が、州の権限を越えており、権利の乱用として憲法裁判所への提訴する方針を示した。現在も両者の対立が続いており、事態収拾の見通しは立っていない。

今回の内閣改造では、経済政策を担当するカスティーヤ経済財政相や自由貿易協定の締結を推進しているシルバ貿易観光相は留任しており、財政規律の遵守や民間投資の促進をとおした経済成長の維持という路線に変更はない。プレスに対して発言の少ないウマラ大統領も、地方での演説では、鉱山への投資を促進してそこから得られる歳入で社会開発を進めると発言しており、これまでの方針と変わりはない。ただし、バルデス首相がすすめるような中央政府の力を背景とした交渉が、ペルー各地で起こっている社会紛争を解決することにつながるのか、現時点では明らかではない。