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株と通貨レアルの同時安

ブラジル経済動向レポート(2018年6月)

海外調査員(サンパウロ大学客員教授)近田 亮平

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貿易収支:6月の貿易収支は、輸出額がUS$202.02億(前月比+5.0%、前年同月比+2.1%)、輸入額がUS$143.20億(同+8.0%、同+13.7%)で、貿易収支はUS$58.82億(同▲1.7%、同▲18.3%)の黒字額を計上した。また、年初からの累計は、輸出額がUS$1,138.34億(前年同期比+5.7%)、輸入額がUS$837.79億(同+17.2%)で、貿易黒字額はUS$300.55億(同▲17.1%)だった。

輸出に関しては、一次産品がUS$95.58億(一日平均額で前年同月比▲0.3%)、半製品がUS$29.10億(同▲2.7%)、完成品がUS$72.58億(同+7.6%)だった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$58.52億、同+15.1%)、2位が米国(US$27.35億、同+17.2%)、3位がアルゼンチン(US$15.57億、同▲0.2%)、4位がオランダ(US$9.43億)、5位がチリ(US$4.64億)であった。輸出品目に関して、増加率では銅カソード(同+286.9%、US$0.33億)と燃料油(同+136.5%、US$2.41億)が100%以上増加し、減少率では豚肉(同▲59.0%、US$0.58億)と粗糖(同▲53.7%、US$4.97億)が50%以上減少した。輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$41.99億、同+25.2%)が顕著で、さらに鉄鉱石(US$16.07億、同+17.7%)と原油(US$12.25億、同▲38.0%)の一次産品がUS$10億以上の取引額となった。

一方の輸入は、資本財がUS$16.87億(一日平均額で前年同月比+33.8%)、原料・中間財がUS$89.19億(同+13.2%)、耐久消費財がUS$6.11億(同+45.9%)、非・半耐久消費財がUS$15.84億(同+13.4%)、基礎燃料がUS$8.58億(同+15.7%)、精製燃料がUS$6.56億(同▲27.1%)だった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$26.52億、同+21.7%)、2位が米国(US$21.47億、同▲5.3%)、3位がアルゼンチン(US$10.00億、同+23.5%)、4位がドイツ(US$9.43億)、5位がメキシコ(US$4.62億、同+30.5%)であった。

物価:発表された5月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.40%(前月比+0.18%p、前年同月比+0.09%p)で、年初累計は1.33%(前月同期比▲0.09%p)、直近12カ月(年率)は2.86%(前月同期比+0.10%p)だった。

分野別では、5月下旬のトラック運転手による道路封鎖ストライキの影響もあり、飲食料品分野は0.32%(前月比+0.23%p、前年同月比+0.67%p)と今年1月(0.74%)に次ぐ高い数値だった。タマネギ(4月19.55%→5月32.36%)やジャガイモ(同▲4.31%→17.51%)など、野菜の値上がりが顕著だった。電気料金(同0.99%→3.53%)が値上がりした住宅分野(同0.17%→0.83%)で上昇率が最も大きく、数値は低下したが衣料部門(同0.62%→0.58%)と保健・個人ケア部門(同0.91%→0.57%)も高い伸びを記録した。また、道路封鎖ストライキの原因となったディーゼル(6.16%)やガソリン(3.34%)の高騰により、運輸交通分野(同0.00%→0.40%)の上昇率も大きかった。一方、サッカーW杯の需要が一服しテレビ・AV・情報機器(▲1.55%)が値下がりしたため、家財分野(同0.22%→▲0.06%)は唯一マイナスとなった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)20日、Selicを6.50%で据え置くことを全会一致で決定した。Selicの史上最低水準での据え置きは3回連続で、多くの市場関係者の予想通りであった。景気の回復が緩慢である中、5月下旬のトラック運転手の道路封鎖ストライキにより物流が約1週間停止したことに加え、為替市場でのドル高レアル安の進行によりインフレ圧力となる輸入品価格の上昇が懸念されるなど、ブラジル経済に関して不安要素が増した。そのため、今後の状況次第ではあるが、今回を含めSelicはしばらく据え置かれるとの見方が多くされている。

為替市場:6月のドル・レアル為替相場は株価と同様、月の上旬にドル高レアル安が急速に進んだ。先月下旬に燃料費の高騰に抗議してトラック運転手が全国の主要道路を連日封鎖しブラジルが停止状態に陥ったため、月の初めに政府が石油公社Petrobrasの総裁を交代させたが、このことが同社への政治的介入と受け止められ同社株とともにレアルが売られることになった。また、Temer大統領をめぐる贈賄疑惑の捜査が進展したことを含め、先月から続く大統領選をはじめとする政治をめぐる不透明感が増したことや、先月末に発表された第1四半期GDPが予想を下回るなど景気回復の足取りが鈍いことも材料視された。そして、米国の利上げ観測の高まりからブラジルをはじめとする新興国通貨が売られる中、7日に2016年3月2日以来となるUS$1=R$3.900(売値)を記録した。

ただし、このレベルになると中央銀行が為替介入を行い、11日には月内のドル最安値となるUS$1=R$3.6907(買値)までレアルが買い戻された。しかし、米国が2018年で2回目の利上げに踏み切るとともに利上げペースを速める可能性を示唆したため、再びドルが買われる展開となった。その後、中央銀行が為替介入を連日行ったためドル高レアル安に一定の歯止めがかかったものの、政策金利Selicが史上最低水準の6.50%で据え置かれたことや、米国と中国による貿易戦争への懸念が再燃したことから、月の終わりにドル高傾向が再び強まった。そして月末は、ドルが前月末比3.18%の上昇となるUS$1=R$3.8558(売値)で6月の取引を終えた(グラフ1)。

グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2016年以降

グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2016年以降

(出所)ブラジル中央銀行


株式市場:6月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は先月半ばからの流れを引き継ぎ、通貨レアルと同様、特に月の前半大きく値を下げた。先月下旬のトラック運転手による道路封鎖ストライキの後、月の初めに石油公社Petrobrasの総裁が交代させられた際、Temer大統領は同社への政治的介入は行わないと述べたものの、その後の燃料価格の決定に政府が関与したことが市場では嫌気され、また、このことが政府の財政支出を増加させる点も懸念材料となった。さらに、株安と同時に進行する為替相場での急激なレアル安がインフレ圧力など経済へ悪影響を及ぼすとの懸念、中国がブラジル産鶏肉への関税引き上げを発表し食肉加工大手BRFが大きく値を下げたこと、米国での利上げ決定と更なる利上げ観測の高まりによりブラジルなどの新興国から米国へ資金が還流していること、米国のTrump大統領が中国製品に対して追加関税を課すると警告するなど一時は相互の歩み寄りが見られた米中の貿易戦争が再燃したことなども材料視された。そして株価は18日、去年8月以来の70,000p割れとなる69,815pを記録した。

月の後半、値を下げた株を買い戻す動きがあった一方、為替市場でのドル高レアル安や先月下旬のトラック運転手による道路封鎖ストライキの影響から、6月前半の物価(IPCA-15)が1.11%と大幅に上昇したことや、今年のGDP成長率の予測が引き下げられことから、株価は上値が重い展開となった。月末に原油の国際価格が上昇しPetrobrasなどエネルギー関連株が買われたものの、終値は前月末比▲5.20%の下落となる72,763pで6月の取引を終了した(グラフ2)。

なおブラジルのカントリー・リスクは、先月下旬のトラック運転手による道路封鎖ストライキの発生後、株と通貨レアルの同時安が進むとともに急激に上昇し、6月18日と19日には2016年12月以来となる340p超を記録した(グラフ3)。

グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2017年以降

グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2017年以降

(出所)サンパウロ株式市場


グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2016年12月以降

グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2016年12月以降

(出所)J.P.Morgan