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景気回復の踊り場的な局面

ブラジル経済動向レポート(2018年3月)

海外調査員(サンパウロ大学客員教授)近田 亮平

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貿易収支:3月の貿易収支は、輸出額がUS$200.89億(前月比+16.0%、前年同月比0.0%)、輸入額がUS$138.09億(同+11.3%、同+6.7%)で、貿易収支はUS$62.81億(同+28.0%、同▲12.1%)の黒字額を計上した。年初からの累計は、輸出額がUS$543.70億(前年同期比+7.7%)、輸入額がUS$404.17億(同+12.1%)で、貿易黒字額はUS$139.52億(同▲3.3%)だった。

輸出に関しては、一次産品がUS$99.06億(一日平均額で前年同月比+8.4%)、半製品がUS$25.31億(同+16.8%)、完成品がUS$71.51億(同+8.3%)だった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$57.80億、同+10.4%)、2位が米国(US$22.31億、同+7.8%)、3位がアルゼンチン(US$17.06億、同+21.9%)、4位がオランダ(US$7.40億)、5位がチリ(US$5.17億)であった。輸出品目に関して、増加率ではトウモロコシ(同+168.5%、US$1.05億)や原油(同+149.7%、US$3.82億)など4品目で100%以上増加し、減少率では鋳鉄(同▲38.1%、US$0.38億)などが顕著だった。輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$34.35億、同+6.4%)、原油(US$16.97億、同+41.7%)、鉄鉱石(US$16.77億、同▲21.0%)の一次産品がUS$10億以上の取引額となった。

一方の輸入は、資本財がUS$15.62億(一日平均額で前年同月比+20.5%)、原料・中間財がUS$82.90億(同+12.2%)、耐久消費財がUS$5.27億(同+50.5%)、非・半耐久消費財がUS$16.27億(同+8.4%)、基礎燃料がUS$8.54億(同+48.9%)、精製燃料がUS$9.41億(同+44.3%)だった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$26.34億、同+34.8%)、2位が米国(US$23.91億、同+18.1%)、3位がアルゼンチン(US$8.76億、同+14.9%)、4位がドイツ(US$8.02億)、5位が韓国(US$5.30億、同+14.5%)であった。

物価:発表された2月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.32%(前月比+0.03%p、前年同月比▲0.01%p)で、前年を僅かに下回り2月として2000年(0.13%)に次ぐ低い数値だった。年初累計は0.61%(前月同期比▲0.10%p)、直近12カ月(年率)は2.84%(前月同期比▲0.02%p)であった。

分野別では、2カ月連続でプラスだった飲食料品分野が▲0.33%(前月比▲1.07%p、前年同月比+0.12%p)と再びマイナスに転じた。ニンジン(1月18.54%→2月▲3.88%)、ジャガイモ(同10.85%→▲3.57%)、トマト(同45.71%→▲3.29%)など1月に急騰した野菜類がマイナスを記録したことが、全体の物価下落に大きく影響した。非飲食料品では、新学期を迎え授業料の値上がりした教育分野(同0.22%→3.89%)や、カーニバルで旅行や外出の需要が高まるとともに一部の市内バス運賃が値上げされた運輸交通分野(同1.10%→0.74%)で高い伸びとなった。ただし、衣料分野(同▲0.98%→▲0.38%)が引き続きマイナスになるなど、その他の分野は全体的に落ち着いた数値となった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は21日、Selicを6.75%から6.50%に引き下げることを全会一致で決定した。Selicは12回連続で引き下げられたため、前回記録した史上最低値を更に下回ることになった(グラフ1)。物価が低い水準で推移していることもあり、前回と同じ幅0.25%bpの引き下げはある程度予想されていたが、今回Selicが引き下げられればこれ以上の引き下げは行われないだろうとの見方が多くなされていた。しかし、いくつかの経済指標が景気回復の踊り場的な局面を示していることもあり、Copomは声明で次回5月の会合でSelicを更に引き下げる可能性を示唆した。

グラフ1  過去10年間の政策金利Selicの推移

グラフ1  過去10年間の政策金利Selicの推移

(出所)ブラジル中央銀行


為替市場:3月のドル・レアル為替相場は、概ねドル高レアル安の展開となった。月のはじめ、発表された2017年のGDP成長率が年間で1.0%と3年ぶりのプラスに転じたが、第4四半期が0.1%(前期比)と予想を下回ったことや、1月の鉱工業生産指数が前月比▲2.4%と2017年8月以来のマイナスになったことが、レアル安の要因となった。

月の半ば、リオデジャネイロにおいて警察の犯罪への関与を告発していた人権活動家の市議会議員が殺害され、ブラジルで人権や治安問題の改善が見られないと判断したEUが、ブラジルを含むメルコスルとの交渉中断を要請したことも材料視された。また、1月の経済指標(前月比)に関して、サービス部門の売上高が▲1.9%、中央銀行版GDPが▲0.56%と芳しくなかったことも、レアル売りにつながった。さらに、米国でPowellがFRB議長になって初の会合が開かれるのを前に、利上げへの期待感からドルを買う動きが強まる中、ブラジルの政策金利Selicが12回連続で引き下げられたことも影響した。

月の後半、10月の大統領選に出馬すべく(大統領または別の立場かは未定)Meirelles財務大臣が辞任し、今後の経済運営に対する不安が高まったことや、2017年のPetrobrasの損益が過去6年間で5度目となる損失だったことも、レアル安の要因となった。ただし月末、リオ沖の海底油田の入札が行われ、最低価格を622%上回るR$80億もが政府に支払われることになり、レアル高へ振れた。

しかし、月末の為替相場は前月末比で2月(+3.39%)に続き+2.43%ドルが連続上昇し、US$1=R$3.3238(売値)で3月の取引を終えた。ブラジルの経済を支えているアグリビジネスなどの輸出企業にとってレアル安は有利な状況だが、景気回復への評価から2016年以降レアルが買われていた為替相場は、踊り場的な局面に入ったともいえよう(グラフ2)。

グラフ2 レアル対ドル為替相場の推移:2016年以降

グラフ2 レアル対ドル為替相場の推移:2016年以降

(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:3月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は月の前半、米国のTrump大統領がブラジルの主要輸出品である鉄鋼製品とアルミニウムに高い輸入関税をかける方針を表明し懸念が広がった。しかし、ブラジルの1月の正規雇用者数(新規雇用-失業)が2013年以降で最大の77,822人だったことや、2月の物価(IPCA)が0.32%と2000年(0.13%)に次いで低く、史上最低値を記録した政策金利Selicが更に引き下げられる可能性も出たことから、これらを好感して上昇した。

月の半ば、石油公社Petrobrasの2017年の損益が▲R$4.7億で4年連続の赤字だったため、同社株が大きく売れられた。中央銀行版GDPと言われる経済指標(IBC-Br)が発表され、1月が前月比▲0.56%と昨年8月以来のマイナスだったことも売り要因となった。Selicが史上最低値を更新する6.50%へ引き下げられたことは好材料だったが、米国のTrump政権が中国製品を対象とした輸入制限を決定したことに対して、中国が報復措置を行うと発表するなど、米中をはじめ世界で貿易戦争が激化するとの懸念から、株価は上値の重い展開となった。

月の後半、リセッションに陥ったブラジル経済を立て直した貢献者の一人であるMeirelles財務大臣が、大統領選を見据え同職を辞することが決まった。また、Eletrobraに関して民営化法案の審議が議会で滞っている中、2017年が▲R$17億の損失だったことが発表され、株価は下落。ただし月末、リオ沖の海底油田の入札が政府の予想を大幅に上回る額で落札されたことを好感し上昇した。

月末の終値は前月末比+0.01%で、2月末とほぼ同じとなる85,366pで3月の取引を終了した。ブラジルの株式相場は為替相場と同様、2016年から値を上げる展開が続いていたが、景気回復が踊り場局面に入った可能性があり、前月末比は2カ月連続で1%未満の上昇(2月は+0.52%)にとどまった(グラフ3)。

グラフ3 株式相場(Bovespa指数)の推移:2016年以降

グラフ3 株式相場(Bovespa指数)の推移:2016年以降

(出所)サンパウロ株式市場