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2017年GDP 3年ぶりのプラスだが

ブラジル経済動向レポート(2018年2月)

海外調査員(サンパウロ大学客員教授)近田 亮平

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2017年GDP:2017年の年間と第4四半期のGDPが発表され、年間の名目額がR$6兆5,559.9億、成長率が0.1%で、統計史上初だった2年連続のマイナスから3年ぶりのプラス成長となった。一人当たりGDPは名目額がR$ 31,587、成長率が0.2%で、4年ぶりに成長率がプラスへ転じた(グラフ1)。ただし、第4四半期の前期比は0.1%で大方の予想(0.3%)を下回るとともに、2017年の四半期(第1:1.3%、第2:0.6%、第3:0.2%)の中で最も低く(グラフ3)、伸び率が漸次低下した。そのため、景気回復の足取りは思った以上に鈍いとの見方が強まり、2018年のGDP予測を若干下方修正(2%台後半)する動きが見られた。

グラフ1  過去5年間の年間GDPの推移

グラフ1  過去5年間の年間GDPの推移

(出所)IBGE   (注)単位はGDPの金額が左軸、成長率が右軸。「B」は「10億」。


2017年GDPの需給部門を見ると(グラフ2)、需要面で家計支出が1.0%と2年連続のプラスとなり消費が戻ってきたことを示すとともに、輸出(5.2%)は3年連続、輸入(5.0%)は4年ぶりのプラスとなった。緊縮財政の影響から政府支出(▲0.6%)は3期連続、設備投資である総固定資本形成(▲1.8%)も4期連続のマイナスだが、総固定資本形成のマイナス幅は大幅に縮小した(2015年▲13.9%、2016年▲10.3%)。また供給面では、農牧業(13.0%)が景気回復を牽引していることを示し、工業は0.0%ながらも4年ぶりにマイナス成長を脱し、サービス業(0.3%)も消費回復の影響もあり3年ぶりにプラスに転じた。
グラフ2 2017年GDPの需給部門

グラフ2 2017年GDPの需給部門

(出所)IBGE

2017年の第4四半期GDP(名目)はR$1兆7,025.9億(前期比0.1%、前年同期比2.1%)で、4期連続のプラス成長だったものの伸び率(前期比)は漸次縮小する傾向を示した(グラフ3)。第4四半期の需給部門の概要(グラフ4)および前期比の推移(グラフ5)では、家計支出(同0.1%、2.6%)が前期比で4期連続プラスながら、今期は通常消費が増える年末があったにも関わらず伸び率が大きく縮小した。この傾向はサービス業(同0.2%、1.7%)にも見られ、景気回復の鈍化とも受け止められる。一方、総固定資本形成は通年では依然マイナスだが第4四半期(同2.0%、3.8%)はプラスに転じ、特に前期比で3期連続のプラスかつ伸び幅の漸次増加となった。また工業(同▲0.7%、▲2.4%)では、建設業(同▲1.6%、同0.0%)や鉱業(同▲0.1%、▲1.2%)が低迷している一方、製造業(同6.0%、同1.5%)が好調だった。

グラフ3 四半期GDPの推移:2016年第4四半期以降

グラフ3 四半期GDPの推移:2016年第4四半期以降

(出所)IBGE (注)成長率(%)は左軸、金額は右軸。「B」は「10億」。
グラフ4 2017年第4四半期GDPの需給部門

グラフ4 2017年第4四半期GDPの需給部門

(出所)IBGE 


グラフ5 直近5四半期GDPの需給部門の推移:前期比

グラフ5 直近5四半期GDPの需給部門の推移:前期比

(出所)IBGE 


貿易収支:2月の貿易収支は、輸出額がUS$173.15億(前月比+2.0%、前年同月比+11.9%)、輸入額がUS$124.08億(同▲12.6%、同+13.7%)で、貿易収支は2月としての過去最高となるUS$49.07億(同+77.3%、同+7.6%)の黒字額を計上した。年初からの累計は、輸出額がUS$342.83億(前年同期比+12.8%)、輸入額がUS$266.07億(同+15.2%)で、貿易収支もUS$76.76億(同+5.4%)と過去最大の黒字額となった。

輸出に関しては、一次産品がUS$68.09億(1日平均額の前年同月比▲7.5%)、半製品がUS$22.45億(同+1.8%)、完成品がUS$78.53億(同+41.6%)だった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$34.90億、同▲2.4%)、2位がオランダ(US$22.66億)、3位が米国(US$18.36億、同▲3.1%)、4位がアルゼンチン(US$14.65億、同+15.2%)、5位がチリ(US$4.16億)であった。輸出品目に関して、増加率では300%超だったセラミック板(同+361.3%、US$1.10億)を含め6品目で100%以上増加し、減少率では航空機(同▲54.0%、US$1.06億)や粗糖(同▲45.3%、US$3.54億)が顕著だった。輸出額では(「その他」を除く)、原油(US$15.26億、同▲26.4%)、鉄鉱石(US$12.58億、同▲14.4%)、大豆(US$10.93億、同▲22.1%)の一次産品に加え、原油採掘プラットフォーム(US$15.35億)がUS$10億以上の取引額となった。

一方の輸入は、資本財がUS$12.70億(1日平均額の前年同月比+24.4%)、原料・中間財がUS$74.14億(同+11.7%)、耐久消費財がUS$4.65億(同+78.8%)、非・半耐久消費財がUS$15.63億(同+10.7%)、基礎燃料がUS$7.26億(同+12.5%)、精製燃料がUS$9.69億(同+4.1%)だった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$25.07億、同+32.1%)、2位が米国(US$21.34億、同+0.2%)、3位がドイツ(US$8.17億)、4位がアルゼンチン(US$7.50億、同+17.7%)、5位が韓国(US$4.30億、同+29.8%)であった。

物価:発表された1月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.29%(前月比▲0.12%p、前年同月比▲0.09%p)で、直近12カ月(年率)は2.86%(前月同期比▲0.09%p)であった。

分野別では、最近はマイナスや低い伸びだった飲食料品分野が0.74%(前月比+0.20%p、前年同月比+0.39%p)で、2016年7月(1.32)以来の高い伸びとなった。主食のフェイジョン豆(fradinho:12月0.01%→1月▲3.94%、carioca:同▲6.73%→▲3.32%、mulatinho:同▲4.35%→▲1.92%)など値下がりした品目もあったが、トマト(同1.58%→45.71%)、ニンジン(同▲5.56%→18.54%)、ジャガイモ(同▲0.36%→10.85%)が2桁の伸びを記録したこともあり全体的に高い数値となった。非飲食料品では、サンパウロなどの主要都市で市内バスの運賃が値上げされた影響から、運輸交通分野(同1.23%→1.10%)が前月に続き高い伸びとなった。ただし、住宅分野(同▲0.40%→▲0.85%)および前月高騰した衣料分野(同0.84%→▲0.98%)がマイナスとなり、その他の分野も落ち着いた数値となった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は7日、Selicを7.00%から6.75%に引き下げることを全会一致で決定した。今回の0.25%bpの引き下げ幅は前々回の0.75%bp、前回の0.50%bpより小さかったが市場関係者の予想通りであり、6.75%は1996年のSelic創設以降で最も低い数値となった。今までSelicを11回連続で引き下げて来たCopomは引き下げサイクルの終了を示唆したが、その後に発表された1月の物価(IPCA)が市場関係者の予想を下回ったため、過去最低値を記録したSelicが次回のCopomで更に引き下げられる可能性も取り沙汰されている。

為替市場:2月のドル・レアル為替相場は、1月24日のLula元大統領に対する有罪判決の影響で大きくレアル高に振れた分、ドルを買う動きが徐々に強まった。

月の前半、米国で株価が過去7年間で最大の下落を記録するなど世界の主要株価が急落したため、レアルをはじめリスクの高い新興途上国の通貨を売る傾向が強まった。また、政策金利Selicが1996年の創設以降の最低値まで引き下げられたことも、レアル売りの要因となった。月の半ばはカーニバル休暇を挟み、しばらくUS$1=3.3前後でもみ合う展開となった。月の後半は、政府が年金改革法案の採決を断念したこと、格付け会社Fitchがブラジル国債の格付けをBBマイナスへ引き下げたこと、2017年3月に13.7%を記録してから低下してきた国内の失業率(同月直近3カ月)が2018年1月に12.2%へ上昇(2017年12月は11.8%)したことなどから、徐々にドル高レアル安が進んだ。そして月末は、前月末比で+3.39%のドル上昇となるUS$1=R$3.2443(買値)で2月の取引を終えた。

株式市場:2月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、米国の大手航空会社BoeingがEmbraerと共同で第3の会社を設立する提案をブラジル政府にしたことで、Embraerの株が買われ上昇して始まった。しかし、インフレ懸念などから米国株が大幅に値を下げた影響によりブラジルでも株価が急落した。その後、市場が敏感になる中、米国の原油在庫が増加していることを嫌気して国際原油価格が急落したためPetrobrasなど関連株が売られた。また、米国株が再びUS$1,000以上急落した影響から、9日には月内最安値となる80,899pまで値を下げた。

しかし、カーニバル休暇明けのBovespaは、ブラジル経済への期待感から大幅に上昇した。カーニバル前後に治安の悪化したリオに対してTemer大統領が軍隊の本格介入(intervenção federal)を断行し、これにより政府は年金改革法案の採決を正式に断念することになり、年金改革は今年10月の大統領選挙で選出される次期政権に先送りされる可能性が大きくなった。このような状況でも株価は続伸し、26日に87,653pの過去最高値を記録した。しかし、米国での利上げ観測の高まりやブラジルの弱い雇用統計が発表されたことで下落し、月末は前月末比+0.52%の上昇となる85,354pで2月の取引を終了した。