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第2四半期GDPが示す緩やかな景気回復

ブラジル経済動向レポート(2017年8月)

地域研究センター 近田 亮平

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第2四半期GDP:2017年第2四半期のGDPが発表され、前期比+0.2%、前年同期比+0.3%、年初累計(上半期)比0.0%、直近4四半期比▲1.4%、総額(名目)がR$1兆6,393億だった(グラフ1)。今回のGDPは第1四半期より低い伸びだが、事前の大方の予測が前期比で0%やマイナス成長だった。そのため、緩やかではあるが予想よりも景気が回復傾向にあることを示すものとなった。

グラフ1 四半期GDPの推移

グラフ1 四半期GDPの推移

(出所)IBGE
(注)成長率は左軸、総額は右軸(Bは10億)。

第2四半期GDPの需給に関して(グラフ2と3)需要面を見ると、雇用や所得の状況が徐々に改善していることもあり、家計支出(前期比+1.4%、前年同期比+0.7%)がプラス成長となった。ただし、政府が緊縮財政を進めている政府支出(同▲0.9%、同▲2.4%)および投資を示す総固定資本形成(同▲0.7%、同▲6.5%)はマイナスだった。特に総固定資本形成の落ち込みは、景気は回復傾向にあるものの緩やかなペースがしばらく続く可能性を示している。また、輸出(同+0.5%、同+2.5%)は3月末に発覚した食肉の不正問題が懸念されたものの好調だった一方、輸入(同▲3.5%、同▲3.3%)は前期比と前年同期比とも大きく落ち込んだ。

供給面は、農牧業(同0.0%、同+14.9%)が前年同期比で大幅なプラスを記録した。一方、工業(同▲0.5%、同▲2.1%)では、鉱業(同+0.4%、同+5.9%)が好調で製造業(同+0.1%、同▲1.0%)も前期比でプラスだったが、建設業(同▲2.0%、同▲7.0%)の低迷などが影響した。サービス業(同+0.6%、同▲0.3%)に関しては、商業(同+1.9%、同+0.9%)で回復傾向が見られたものの情報サービス(同▲2.0%、同▲2.5%)などが低調だった。

グラフ2  2017年第2四半期GDPの受給部門の概要

グラフ2  2017年第2四半期GDPの受給部門の概要

(出所)IBGE
グラフ3 四半期GDPの受給部門別の推移:前期比

グラフ3 四半期GDPの受給部門別の推移:前期比

(出所)IBGE

2017年上半期のGDP成長率は前年同期比0.0%となり、2014年下半期から5期連続していたマイナス成長を脱した(グラフ4)。ただし需要面では、家計支出(同▲0.6%)、政府支出(同▲1.9%)、総固定資本形成(同▲5.1%)ともマイナスであった。一方、コモディティの国際価格の上昇や緩やかな景気回復による国内消費の復調により、輸出(同+2.2%)と輸入(同+2.9%)ともプラスに転じた。供給面では、輸出向けのアグリビジネスの成長が近年著しい農牧業(同+15.0%)が大幅な伸びを記録した。一方、工業(同▲1.6%)では鉱業(同+7.8%)が好調だったものの、建設業(同▲6.6%)や製造業(同▲1.0%)の落ち込みが影響した。サービス業(同▲1.0%)では不動産業(同+0.1%)が唯一プラスだったが、商業(同▲0.8%)をはじめ他の分野は低調な数値であった。

グラフ4 上下半期GDP(前年同期比)の推移:2008年以降(過去10年間)

グラフ4 上下半期GDP(前年同期比)の推移:2008年以降(過去10年間)

(出所)IBGE

貿易収支:8月の貿易収支は、輸出額がUS$194.75億(前月比+3.8%、前年同月比+14.6%)、輸入額がUS$138.76億(同+11.3%、同+8.0%)で、貿易収支はUS$55.99億(同▲11.1%、同+35.2%)だった。年初からの累計は、輸出額がUS$1,459.46億(前年同期比+18.1%)、輸入額がUS$978.37億(同+7.3%)で、貿易黒字はUS$481.09億(同+48.5%)と8月までで過去最大となった。

輸出に関しては、一次産品がUS$89.76億(1日平均額の前年同月比+24.2%)、半製品がUS$27.92億(同+3.4%)、完成品がUS$72.66億(同+9.7%)であった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$42.40億、同+41.0%)、2位が米国(US$24.40億、同+2.2%)、3位がアルゼンチン(US$16.25億、同+30.8%)、4位がオランダ(US$8.53億)、5位が日本(US$4.52億、同+18.8%)だった。輸出品目に関して、増加率では燃料油(同+189.1%、US$1.18億)と非冷凍オレンジ・ジュース(同+116.2%、US$1.11億)が100%を超え、減少率ではアルミニウム(同▲46.7%、US$0.32億)が顕著だった。輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$22.36億、同+40.6%)、原油(US$13.46億、同+26.0%)、鉄鉱石(US$13.35億、同+6.3%)の一次産品がUS$10億以上を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$14.71億(1日平均額の前年同月比+6.6%)、中間財がUS$87.79億(同+4.8%)、耐久消費財がUS$4.22億(同+8.7%)、非・半耐久消費財がUS$16.87億(同▲0.7%)、基礎燃料がUS$6.37億(同+49.8%)、精製燃料がUS$8.80億(同+61.9%)であった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$26.79億、同+22.5%)、2位が米国(US$21.65億、同▲5.8%)、3位がドイツ(US$9.53億)、4位がアルゼンチン(US$8.49億、同+6.6%)、5位が韓国(US$4.83億、同+16.8%)だった。

物価:発表された7月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.24%(前月比+0.47%p、前年同月比▲0.28%p)で、デフレだった6月からプラスに転じたものの、落ち着いた数値となった。年初累計は1.43%(前月同期比▲3.53%p)、直近12カ月(年率)は2.71%(前月同期比▲0.29%p)であった。

食料品は▲0.47%(前月比+0.03%p、前年同月比▲1.79%p)と3カ月連続のマイナスで、ジャガイモ(6月▲6.77%→7月▲22.73%)が20%以上も値下がりしたことをはじめ、主食であるフェイジョン豆(fradinho:同▲6.60%→▲7.11%、carioca:同▲25.86%→▲5.39%)も5%以上値を下げたことが全体の価格下落に寄与した。非食料品では、衣料分野(同0.21%→▲0.42%)や家財分野(同2.14%→▲0.77%)など4つの分野で価格が下落した。しかし、電気料金が6.00%値上がりした影響から住宅分野(同▲0.77%→1.64%)が大幅に上昇し、運輸交通分野(▲0.52%→0.34%)も燃料価格が0.92%上昇したため前月のマイナスからプラスに転じたことが、全体の価格を押し上げるかたちとなった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は、8月に開催されなかった。次回のCopomは9月5日と6日に開催予定。

為替市場:8月のドル・レアル為替相場は、7月の貿易黒字が過去最高だったことでレアルが買われて始まったが、月の前半はドル高レアル安の展開となった。その要因としては、米国のTrump政権が自国の軍事産業保護を目的として、ブラジルからの鉄鋼製品の輸入関税を引き上げると発表し、ブラジルの工業への悪影響が懸念されたことや、Petrobrasの第2四半期の利益が予想を大きく下回ったことが挙げられる。また、Temer政権が更なる財政緊縮策を発表するとともに、財政赤字の上限額をR$1,590億(2017年は予定よりR$200億、2018年はR$300億)に増額すべく議会に承認を求めたが、政権発足から試みている財政緊縮に関して、あまり成果が上がっていないとの見方が強まったことも影響した。

ただし月の後半、GDPの中央銀行版の指標であるIBD-Brが今年上半期0.25%のプラス成長だったことや、政府が電気公社Eletrobrasの民営化を提案したこと、5~7月の雇用状況が僅かながら改善(失業率:前期13.0%→12.8%、実質平均月収:同R$2,099→R$2,106)したとを好感し、レアル高に振れた。そして月末は、ドルが前月末とほぼ同じ水準の0.52%高となるUS$1=R$3.1465(買値)で取引を終えた。

株式市場:8月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、国内の政治的混乱が収束に向かったことや景気回復への期待感などから、ほぼ右肩上がりで値を上げる展開となった。

月のはじめ、Temer大統領の裁判の可否について下院本会議で賛成が227、反対が263で開廷に必要な賛成票が3分の2に達せず、裁判が回避された。国内政治の安定化とともに、政府が推す年金改革法案の可決の可能性が高まったことが好感され、株価は上昇した。Petrobrasの第2四半期の利益が前年同期比で▲14.6%、前期比では▲93%の大幅なマイナスになったことで、同社株をはじめ一時値を下げる場面も見られた。しかし、政府が公務員の年金保険料の引き上げを検討していることが明らかになり、また、政府の社会経済開発銀行(BNDES)の上半期の決算が発表され、▲R$22億の赤字だった昨年からR$13億の黒字に転じたことで、株価は上昇。Temer政権が今年と来年の財政赤字の上限額を引き上げるよう議会に承認を求めるとともに、総額R$140億に上る一連の増税や支出削減の対策を発表したことも好材料となった。さらに、政府による電気公社Eletrobrasの民営化方針の表明により同社株が大きく買われたこと、民間企業のイニシアティブを活用した交通インフラなど57事業のコンセッションを実施する予定だと政府が発表したこと、BNDESの融資の新たな長期金利に関する審議が下院で進んでいることなどが好感され、29日に株価は今年の最高値となる71,330pを記録した。Bovespa指数が71,000pを超えたのは、2011年1月以来であった。

ただし、6月の政府財政に関して、政府が改革を試みている社会保障費が▲R$135.1億と赤字額が大きく、6月として過去16年間で最大の▲R$161.4億に上ったことを嫌気し株価は下落。それでも月末の株価は、前月末比で7.46%も上昇し70,835pで取引を終了した。