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経済をめぐる楽観と低調

ブラジル経済動向レポート(2017年4月)

地域研究センター 近田 亮平

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貿易収支:4月の貿易収支は、輸出額がUS$176.86億(前月比▲11.9%、前年同月比+15.0%)、輸入額がUS$107.17億(同▲17.2%、同+1.9%)であった。この結果、貿易収支はUS$69.69億(同▲2.5%、同+43.4%)で4月として過去最大の黒字額を計上した。年初からの累計は、輸出額がUS$681.49億(前年同期比+21.8%)、輸入額がUS$467.62億(同+9.5%)で、貿易収支もUS$213.87億(同+61.3%)と過去最大の黒字額を記録した。ブラジルの主要輸出品であるコモディティの国際価格が上昇傾向なこともあり、貿易は上向いて来ている。

輸出に関しては、一次産品がUS$90.02億(1日平均額の前年同月比+29.2%)、半製品がUS$21.08億(同+27.5%)、完成品がUS$61.46億(同+25.7%)であった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$53.68億、同+33.0%)、2位が米国(US$21.63億、同+46.3%)、3位がアルゼンチン(US$13.66億、同+43.8%)、4位がオランダ(US$7.53億)、5位が日本(US$4.15億、同+24.3%)であった。輸出品目に関して、増加率では大豆油(同+173.9%、US$1.23億)、炭化水素(同+161.6%、US$0.85億)、精糖(同+139.1%、US$2.29億)が130%超で、減少率では葉タバコ(同▲30.5%、US$0.58億)が30%超で顕著だった。輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$39.48億、同+24.2%)、鉄鉱石(US$16.23億、同+87.6%)、原油(US$10.00億、同+58.6%)の一次産品3品目がUS$10億以上を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$11.16億(1日平均額の前年同月比▲5.9%)、中間財がUS$68.15億(同+16.5%)、耐久消費財がUS$3.78億(同+9.4%)、非・半耐久消費財がUS$11.65億(同+5.3%)、基礎燃料がUS$6.18億(同+8.7%)、精製燃料がUS$6.25億(同+56.8%)であった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$18.34億、同+40.0%)、2位が米国(US$17.00億、同+3.4%)、3位がアルゼンチン(US$7.01億、同▲0.1%)、4位がドイツ(US$6.06億)、5位が韓国(US$4.47億、同+46.2%)であった。

物価:発表された3月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.25%(前月比▲0.08%p、前年同月比▲0.18%p)で、3月として5年ぶり(2012年:0.21%)の低い数値だった。年初累計は0.96%(前月同期比▲1.66%p)で通貨レアルを導入した1994年以降で最も低く、直近12カ月(年率)は4.57%(前月同期比▲0.19%p)であった。

食料品は0.34%(前月比+0.79%p、前年同月比▲0.90%p)で、主食のフェイジョン豆(preto:2月▲9.22%→3月▲9.11%、carioca:▲14.22%→▲5.59%、mulatinho:4.35%→▲4.50%)が前月に続いて値下がりした。ただし、トマト(▲3.33%→14.47%)やアサイー(同10.95%→8.47%)など10%前後値上がりした品目もあったため、全体では前月のマイナスからプラスに転じた。非食料品では、電気とガスの料金が値上がりした住宅分野(同0.24%→1.18%)の上昇が顕著だった。しかし、前月に新学期の影響で高騰した教育分野(同5.04%→0.95%)の伸びが低下したことに加え、ガソリン料金が値下がりした運輸交通分野(同0.24%→▲0.86%)、一部の電話料金が引き下げられた通信分野(同0.66%→▲0.63%)、家財分野(同0.18%→▲0.29%)がマイナスに転じた。また、衣料分野(同▲0.13%→▲0.12%)も引き続き値下がりしたため、全体的に落ち着いた数値になった(グラフ1)。

グラフ1 IPCAの推移:2015年以降

グラフ1 IPCAの推移:2015年以降

(出所)IBGE

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は12日、Selicを12.25%から11.25%へ引き下げることを全会一致で決定した。1.00%pの引き下げ幅は2009年6月以来であった(グラフ2)。最近のブラジル経済は、物価が落ち着いて推移しており(グラフ1)、3月の新車販売台数(グラフ3)が前月比で39.4%も上昇し前年同月比で2014年12月以来のプラスになるなど、いくつかの経済指標で上向きな兆候が見られている。しかし、回復の兆しのあった鉱工業生産指数が2月に前年同月比(▲0.7%)、3月に前月比(▲1.8%)で再びマイナスになったことや(グラフ4)、雇用状況が悪化していることなどから、景気回復の足取りは依然として鈍い。そのため、より積極的な政策金利の引下げが必要と判断されたと考えられる。

グラフ2 Selicの推移:2011年以降

グラフ2 Selicの推移:2011年以降

(出所)ブラジル中央銀行
グラフ3 新車販売台数比率の推移:2014年以降

グラフ3 新車販売台数比率の推移:2014年以降以降

(出所)Anfavea(全国自動車生産者協会)
グラフ4 鉱工業生産指数の推移:2014年以降

グラフ4 鉱工業生産指数の推移:2014年以降以降

(出所)IBGE

為替市場:4月のドル・レアル為替相場は月のはじめ、前月末に急伸したドルを売ってレアルを買う動きが強まった。

しかし、米国の利上げ観測の高まりや米国によるシリアへのミサイル攻撃を受け、ドルが再び買われた。一方ブラジル国内では、Petrobras汚職事件に関する98名(議長を含む39下院議員、議長を含む24上院議員、3知事、8大臣)の案件を最高裁において、サンパウロ州のAlckiminなど9知事を含む201名の案件を高等裁判所において、現職議員ではない大統領経験者(Dilma、Lula、EHC)や議員特権が関係する案件を別の裁判所において審議する決定が公にされ、政治に対する不信や先行き不透明感が高まった。また、政府の年金改革法案が内容の変更にも関わらず賛同を得られぬままであり、同法案の議会採決が延期される見込みになったことで、レアル安が進んだ。さらに、28日に全国主要都市で実施されたゼネストにより、経済活動の停滞や交通機関の混乱だけでなく一部の参加者が暴徒化する事態になったことに加え、2017年代1四半期の失業者が1,418万人、失業率が13.7%と過去最悪を記録したことで、レアル売りに拍車がかかった。

月末は前月末比0.95%のドル高レアル安、月内のドル最高値となるUS$1=R$3.1984(売値)で取引を終えた。

株式市場:4月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は月のはじめ、政府の年金改革法案が議会で承認されない可能性が高まり、修正を余儀なくされたため下落した。その後、2017年の第1四半期の物価(IPCA)がレアル計画(1994年)後で最も低いレベルになったことを好感し上昇した。

しかし、最高裁がPetrobras汚職事件に関して、現在および過去の政権の主要な与野党政治家を含む約300もの案件を裁判所で審議する決定を下し、これにより政治的な混乱が深まるとの見方から下落。また、財政支出を抑える政府の年金改革法案が反対多数で変更を余儀なくされたにも関わらず、議会での承認の目処が立たない状況であることも嫌気し、13日には月内最安値となる62,826pまで下落した。

月の後半、3月の経常収支が2005年以降で最高となるUS$14億の黒字を記録するなど、一部で景気が上向いていることや、政府の労働改革法案が下院の特別委員会を通過したことを好感し上昇した。月末は月内で2番目の高値であり、前月末比0.65%の上昇となる65,403pで取引を終了した。。