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初めて2年連続でマイナスのGDP

ブラジル経済動向レポート(2017年3月)

地域研究センター 近田 亮平

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2016年GDP:2016年の年間と第4四半期のGDPが発表され、年間(2016年換算)はR$6兆2,668.9億(前年比▲3.6%)で、GDP成長率は統計史上初めて2年連続でのマイナスを記録した。ドル換算(時価)は為替の影響もあり、US$1兆7,994.4億(同0.1%)と前年より若干ながら増加した。また、1人当たりGDPはR$30,407(同▲4.4%)、ドル換算はUS$8,731(▲0.7%)だった(グラフ1)。

2016年GDPの需給部門を見ると(グラフ2)、需要面では設備投資である総固定資本形成(▲10.2%)のマイナスが依然大きかった。為替相場でドル安レアル高傾向が強まったが、コモディティ価格の上昇もあり輸出(1.9%)はプラスだった一方、供給サイドの商業(▲6.3%)と関連した家計支出(▲4.2%)で消費の落ち込みが示されたように、輸入(▲10.3%)はマイナスとなった。また供給面では、農牧業(▲6.6%)がマイナスへ転じたことに加え、工業(▲3.8%)では製造業(▲5.2%)と建設業(▲5.2%)だけでなく鉱業(▲2.9%)もマイナスを記録するなど、ブラジル経済の歴史的な不況さを具現するものとなった。

グラフ1  過去10年間の年間GDPの推移

グラフ1  過去10年間の年間GDPの推移

(出所)IBGE
(注)単位はGDPの金額(レアルとドル)が左軸、成長率が右軸。
グラフ2 2016年GDPの需給部門に関する概要と前年との比較

グラフ2 2016年GDPの需給部門に関する概要と前年との比較

(出所)IBGE

2016年の第4四半期GDPはR$1兆6,305.9億(前期比▲0.9%、前年同期比▲2.5%)で、前期比の成長率は8期連続のマイナスを記録した(グラフ3)。第4四半期の需給部門の概要(グラフ4)および前期比の推移(グラフ5)では、ドル安レアル高の影響を受けた輸入(前期比3.2%、前年同期比▲1.1%)と収穫期に当たった農牧業(同1.0%、▲5.0%)が、前期比で顕著なプラスとなった。また、緊縮財政を試みている政府支出(同0.1%、▲0.1%)も若干だが前期比でプラスだった。しかし、そのほかの部門では前期比と前年同期比とも全てマイナスとなった。工業(同▲0.7%、▲2.4%)では、鉱業(同0.7%、同4.0%)は好調だったが、建設業(同▲2.3%、同▲7.5%)や製造業(同▲1.0%、同▲2.4%)の落ち込みが大きかった。需要サイドの家計支出(同▲0.6%、▲2.9%)で前期比のマイナス幅が拡大した影響もあり、商業(同▲1.2%、▲3.5%)が依然停滞しているため、サービス業(同▲0.8%、▲2.4%)も引き続きマイナスとなった。

グラフ3 四半期GDPの推移:2015年第4四半期以降

グラフ3 四半期GDPの推移:2015年第4四半期以降

(出所)IBGE
(注)成長率(%)は左軸、金額は右軸。
グラフ4 2016年第4四半期GDPの需給部門の概要

グラフ4 2016年第4四半期GDPの需給部門の概要

(出所)IBGE
グラフ5 直近5四半期GDPの需給部門の推移:前期比

グラフ5 直近5四半期GDPの需給部門の推移:前期比

(出所)IBGE

貿易収支:3月の貿易収支は、輸出額がUS$200.85億(前月比+29.8%、前年同月比+25.6%)、輸入額がUS$129.40億(同+18.6%、同+11.9%)であった。この結果、貿易収支はUS$71.45億(同+56.7%、同+61.1%)となり、過去最大の黒字額を計上した。年初からの累計は、輸出額がUS$504.66億(前年同期比+24.3%)、輸入額がUS$360.42億(同+12.0%)で、貿易収支もUS$144.24億(同+71.7%)と過去最大の黒字額となった。

輸出に関しては、一次産品がUS$100.14億(1日平均額の前年同月比+29.7%)、半製品がUS$23.73億(同+7.4%)、完成品がUS$72.40億(同+12.3%)であった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$57.32億、同+38.0%)、2位が米国(US$22.68億、同+13.9%)、3位がアルゼンチン(US$15.38億、同+26.7%)、4位がオランダ(US$8.92億)、5位がドイツ(US$4.86億)であった。輸出品目に関して、増加率では鉄鉱石(同+186.7%、US$23.26億)、炭化水素(同+170.9%、US$1.03億)、燃料油(同+161.7%、US$1.68億)が150%超で、減少率ではトウモロコシ(同▲87.8%、US$0.43億)、綿(同▲53.2%、US$0.54億)、葉タバコ(同▲52.5%、US$0.72億)が50%超で顕著だった。輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$35.34億、同+15.6%)、鉄鉱石(前述)、原油(US$13.12億、同+145.9%)の一次産品3品目がUS$10億以上を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$14.20億(1日平均額の前年同月比▲10.5%)、中間財がUS$80.92億(同+10.6%)、耐久消費財がUS$3.83億(同▲11.1%)、非・半耐久消費財がUS$16.44億(同+4.3%)、基礎燃料がUS$6.28億(同+2.6%)、精製燃料がUS$7.15億(同+27.3%)であった。主要輸入元は、1位が米国(US$22.17億、同+2.1%)、2位が中国(香港とマカオを含む)(US$21.41億、同+4.3%)、3位がドイツ(US$8.70億)、4位がアルゼンチン(US$8.35億、同▲5.4%)、5位が韓国(US$5.07億、同+48.7%)であった。

物価:発表された2月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.33%(前月比▲0.05%p、前年同月比▲0.57%p)で、2月として2000年(0.13%)に次ぐ低い数値だった。年初累計は0.71%(前月同期比▲1.47%p)、直近12カ月(年率)は4.76%(前月同期比▲0.59%p)であった。

食料品は▲0.45%(前月比▲0.80%p、前年同月比▲1.51%p)で、3カ月ぶりにマイナスを記録した。ニンジン(1月7.98%→2月11.77%)やアサイー(同2.76%→10.95%)など10%値上がりした品目もあったが、主食のひとつであるフェイジョン豆(carioca:▲13.58%→▲14.22%、preto:▲3.75%→▲9.22%、fradinho:▲0.47%→▲3.15%)をはじめ、ニンニク(同▲0.48%→▲5.55%)やジャガイモ(同▲8.48%→▲5.06%)など、多くの品目で価格が下落した。非食料品では、新学期との関連で教育分野(同0.29%→5.04%)が5%超と大幅に上昇した。しかし、衣料分野(同▲0.36%→▲0.13%)が引き続きマイナスを記録したことに加え、運輸交通分野(同0.77%→0.24%)は伸び率が低下するなど、他の分野は全体的に緩やかな伸びにとどまった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は、3月に開催されなかった。次回のCopomは4月11日と12日に開催予定。

為替市場:3月のドル・レアル為替相場は、月の前半、ドル高レアル安の展開となった。その要因として、米国の利上げ予測が強まったこと、政府が財政改善のため支出削減に加えて増税を行う可能性を示したため景気回復が遅れるとの見方が高まったこと、2016年のGDP成長率が▲3.6%と前年の▲3.8%に続き1948年開始の統計で初めて2年連続でマイナスを記録したことなどが挙げられる。そして、9日にレアルは月内最安値となるUS$1=R$3.1735まで下落した。

月の半ば、Moody’sがブラジルの格付け見通しを「ネガティヴ」から「安定的」に上昇修正したことなどから、レアル高に転じた。しかし、ブラジルで食肉不正事件が発覚すると、世界各国がブラジル産食肉の輸入を一時や部分的に停止する措置を取った影響もあり、再びドル高レアル安となった。その後、オバマ・ケア見直しの失敗や温暖化対策の撤廃など米国のトランプ大統領の政権運営に対する不安から、ドルを積極的に買う動きは限定的であった。ただし月末、ブラジルの20016年12月~2017年2月の失業率が13.2%、失業者が1,355万人と過去最悪を更新したことでレアルは売られ、前月末比2.23%のドル高レアル安となるUS$1=R$3.1684(売値)で3月の取引を終えた。

株式市場:3月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、前月末に急進した分の利益をカーニバル明けに確定する売りで始まった後、1月の新規正規雇用数が3年連続で失業者数を下回りマイナスになったものの、過去2年より雇用数の減少幅が小さく、特に工業部門での雇用が2015年1月以来プラスに転じたことで上昇。しかし、政府の社会保障制度の改革案で受給年齢が引き上げられない可能性が示されたことに加え、2016年のGDPに関して投資が過去20年で最低だったことや旱魃などの悪天候で農牧畜業が落ち込むなど、経済規模が2010年の水準にまで後退したことで下落した。

月の半ば、2月の物価(IPCA)が0.33%と落ち着いた数値となり、2017年通年で4%を下回る可能性が出たことや、政府が社会保障などの改革や財政健全化に取り組んでいることが評価され、Moody’sが2015年に引き下げたブラジルの格付け見通しを上昇修正したことなどを好感し、再び上昇した。しかし、精肉大手企業(トップのBRFとJBSを含む)が食肉加工の不正を隠蔽し賄賂を贈っていた汚職事件が発覚すると、国内だけでなく輸出用の食肉生産と消費への打撃が懸念され下落。また、世界的な株安や、Petrobrasの2016年決算がR$148億の損失を計上し3年連続の赤字になった影響から、21日に月内最安値となる62,980pまで値を下げた。その後、政府がR$421億もの財政カット、増税、公社の民営化などにより2017年予算を確保する目処を示したことを受け上昇したが、月末は前月末比▲2.52%の下落となる42,794pで取引を終了した。であった。