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混迷した2016年の経済的一面

ブラジル経済動向レポート(2016年12月)

地域研究センター 近田 亮平

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貿易収支:12月の貿易収支は、輸出額がUS$159.41億(前月比▲1.7%、前年同月比▲5.0%)、輸入額がUS$115.25億(同+0.5%、同+9.3%)で、貿易黒字額はUS$44.15億(同▲7.2%、同▲29.2%)を計上した(グラフ1)。年初からの累計は、輸出額がUS$1,852.44億(前年同期比▲3.1%)、輸入額がUS$1,375.22億(同▲19.8%)で、貿易黒字額はUS$476.92億(同+142.4%)となり、政治や経済で混迷した2016年において貿易黒字は過去最高額を記録した。

輸出に関しては、一次産品がUS$59.06億(1日平均額の前年同月比▲8.7%)、半製品がUS$26.53億(同+7.4%)、完成品がUS$69.84億(同▲6.7%)だった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$26.11億、同+9.6%)、2位が米国(US$22.65億、同+4.5%)、3位がアルゼンチン(US$12.33億、同+39.2%)、4位がオランダ(US$7.10億)、5位がドイツ(US$4.68億)であった。輸出品目に関して、増加率では冷凍オレンジジュース(同+63.8%、US$0.95億)、その他の半製品(同+63.2%、US$1.92億)、葉タバコ(同+63.0%、US$1.75億)が60%超の伸びを記録し、減少率ではトウモロコシ(同▲83.4%、US$1.72億)が顕著だった。輸出額では(「その他」を除く)、鉄鉱石(US$17.69億、同+38.8%)が唯一US$10億を超える取引額を計上した。なお、2016年の主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$374.0億、同▲1,2%)、2位が米国(US$231.6億、同▲4.2%)、3位がアルゼンチン(US$134.2億、同+4.4%)、4位がオランダ(US$103億)、5位がドイツ(US$49億)であった。

一方の輸入は、資本財がUS$14.03億(1日平均額の前年同月比▲15.7%)、中間財がUS$70.58億(同+20.7%)、耐久消費財がUS$3.96億(同+11.0%)、非・半耐久消費財がUS$15.41億(同+22.0%)、基礎燃料がUS$5.38億(同▲47.7%)、精製燃料がUS$5.87億(同+99.4%)だった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$21.33億、同+36.5%)、2位が米国(US$21.24億、同+19.2%)、3位がアルゼンチン(US$9.16億、同+48.0%)、4位がドイツ(US$6.45億)、5位が韓国US$3.29億、同+39.3%)であった。2016年に関しては、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$238.3億、同▲24.3%)、2位が米国(US$238.0億、同▲10.4%)、3位がドイツ(US$91.3億)、4位がアルゼンチン(US$90.8億、同▲12.0%)、5位が韓国(US$54.5億、同+0.1%)だった。

グラフ1 2016年の貿易収支の推移

グラフ1 2016年の貿易収支の推移

(出所)工業貿易開発省

物価:発表された11月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.18%(前月比▲0.08%p、前年同月比▲0.83%p)で、11月としては1998年(▲0.12)に次ぐ低い数値となった。食料品価格は▲0.20%(同▲0.15%p、▲2.03%p)で3カ月連続のマイナスを記録した。また、年初累計は5.97%(前月同期比▲3.65%p)、直近12カ月(年率)は6.99%(前月同期比▲0.88%p)となり、昨年(10.67%)と異なり政府目標の上限(6.5%)以下に収まる可能性が出てきた。

食料品に関して、タマネギ(10月▲6.48%→11月6.09%)など値上がりした品目もあったが、フェイジョン豆(carioca:同▲8.79%→▲17.52%)とトマト(同1.74%→▲15.15%)が15%以上も値下がりするなど、価格の下落や伸び率の縮小した品目が多かった。非食料品では、医療保険(1.07%)が値上がりした健康・個人ケア分野(同0.43%→0.57%)や、家政婦(0.87%)の費用が高くなった個人消費分野(同0.01%→0.47%)で伸び率が大きかった。一方、石油公社ペトロブラスにより燃料価格が調整された運輸交通分野(同0.75%→0.28%)や住宅分野(同0.42%→0.30%)で伸び率が縮小し、家財分野(同▲0.13%→▲0.16%)は引き続きマイナスを記録した。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は、12月に開催されなかった。次回のCopomは2017年1月10日と11日に開催予定。

為替市場:12月のドル・レアル為替相場は月のはじめ、11月末に発表された第3四半期GDPが悪かったことや、与党ブラジル民主運動党(PMDB)のRenan上院議長をめぐる汚職疑惑について最高裁で審議が進んだことにより、政治的な混乱が増してTemer政権が推進する一連の法案(年金を含む財政支出削減や汚職対策)の成立が困難になるとの見方から、レアルが売られた。しかし、最高裁はRenanを大統領の代行継承ライン(第2位)から外したものの、上院議長にとどめる判断を下したため、Temer政権が進めるが可決される可能性が高まり、レアル高に転じた。月の半ば、米国が金利引き上げを決定したことで一時ドル高に振れたが、月の後半にTemer政権が景気対策を続けて発表したことや重要法案の一部が議会で承認されたことを好感し、レアルが買われる展開となった。

月末は、ドルが前月末比▲4.05%の下落となるUS$1=R$3.2585(買値)で2016年の取引を終えた。なお、ブラジルにとって2016年は大統領が弾劾裁判で交代するなど混迷した一年だったが、為替市場ではドルが前年末比で▲16.54%値を下げ、政権交代への期待感などからレアルが買われる展開となった(グラフ2)。

グラフ2 2016年のレアル対ドル為替相場の推移

グラフ2 2016年のレアル対ドル為替相場の推移

(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:12月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、月のはじめは値を下げる展開となった。その要因として、ブラジル経済の低迷が第3四半期GDPで改めて確認されたこと、ペトロブラス汚職事件に関連する大手ゼネコン(Odebrecht)が情報提供の代わりに制裁金の減額を許可されるなど、ブラジルでの汚職是正の不十分さが露呈したこと、汚職疑惑の絶えないRenan上院議長に対して最高裁が刑事告発を受理し解職とする判断を下したため、財政緊縮や汚職に関する法案の議会採決を控えた時期に上院議長が交代する可能性が高まったことなどが挙げられる。ただし、Renanは上院議長を辞職しない意向を表明するとともに、大統領の代行継承ラインから外れるが議長に止まる等の政治取引を行ったとされ、最高裁による解職判断を取り消すことに成功した。Renan上院議長が辞職せずに済んだことは、ブラジル政治の問題の一端を表しているともいえるが、重要法案の採決にとっては有利になるとの見方から、株価は一時上昇に転じた。

月の半ば、ペトロブラス汚職事件に関してOdebrechtがTemer大統領や与党PMDB幹部の関与を認めるなど、政治的混乱が増したことを嫌気して値を下げる展開となった。しかし月の後半、Temer政権が政府財政の運用益の再配分や、労働者に関する企業の積立金(FGTS)の引き出しを許可するなどの景気対策を発表したに加え、重要法案の一部が議会で承認されたことを好感して上昇。月末は60,227pと前月末比で▲2.71%とマイナスだったが、前年末比では+38.93%もの上昇でブラジルが混迷した2016年の取引を終了した(グラフ3)。であった。

グラフ3 2016年の株式相場(Bovespa指数)の推移

グラフ3 2016年の株式相場(Bovespa指数)の推移

(出所)サンパウロ株式市場