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落ち着き出した金融市場

ブラジル経済動向レポート(2015年4月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:4月の貿易収支は、輸出額がUS$151.56億(前月比▲10.7%、前年同月比▲23.2%)、輸入額がUS$146.65億(同▲11.2%、同▲23.7%)で、貿易収支はUS$4.91億(同+7.2%、同▲3.3%)と2か月連続の黒字を計上した。年初からの累計は、輸出額がUS$579.31億(前年同期比▲16.4%)、輸入額がUS$629.97億(同▲15.9%)で、貿易収支は依然▲US$50.66億の赤字で、その額は前年同期比で9.0%減少した。

輸出に関しては、一次産品がUS$75.48億(1日平均額の前月比+10.3%)、半製品がUS$17.17億(同▲23.3%)、完成品がUS$55.03億(同▲7.3%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$34.35億、同+14.1%)、2位が米国(US$19.69億、同+4.0%)、3位がアルゼンチン(US$10.13億、同▲10.9%)、4位がオランダ(US$7.71億)、5位がドイツ(US$4.74億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では鉄鋼管(+101.0%、US$1.01億)とアルミニウム(+54.5%、US$0.77億)、減少率では半加工金(▲56.7%、US$0.71億)が50%を超える増減率となった。また輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$25.34億、同▲38.7%)、鉄鉱石(US$11.62億、同▲43.7%)、原油(US$10.88億、同+0.9%)の一次産品3品目がUS$10億を超える取引高を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$35.33億(1日平均額の前月比+7.0%)、原料・中間財がUS$67.61億(同▲3.1%)、非耐久消費財がUS$12.92億(同▲18.1%)、耐久消費財がUS$13.40億(同▲6.5%)、原油・燃料がUS$17.39億(同+0.7%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$24.88億、同▲14.3%)、2位が米国(US$24.61億、同+3.6%)、3位がアルゼンチン(US$11.06億9.42、同▲6.3%)、4位がドイツ(US$8.77億)、5位が韓国(US$5.58億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率ではその他の耐久消費財(+5.2%、US$0.51億)が主要品目としては唯一の増加であり、減少率では原油(同▲71.5%、US$3.58億)や食糧品(同▲41.5%、US$2.35億)が顕著であった。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$19.99億、同▲18.0%)など3品目、その他の燃料(US$13.81億、同▲34.4%)、資本財である工業機械(US$10.32億、同▲16.7%)がUS$10億を超える取引額を計上した。

物価:発表された3月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は1.32%(前月比+0.10%p、前年同月比+0.40%p)で、数値としては2003年2月(1.57%)以降、3月としては1995年(1.55%)以降の過去20年で最も高い伸びとなった。食料品価格が1.17%(同+0.36%p、▲0.75%p)と再び1%を超え、年初累計が3.83%(前月同期比+1.65%p)、直近12ヶ月(年率)は8.13%(前月同期比+0.43%p)で2003年12月(9.30%)以来の高い数値となった。

食料品に関しては、前月よりは伸びが低下したものの、タマネギ(2月9.92%→3月15.10%)と鶏卵(同4.76%→12.75%)が10%、フェイジョン豆(fradinho:同7.62%→5.69%)と青物野菜(同7.52%→5.19%)が5%を超える伸びを記録したのをはじめ、多くの品目で値段が上昇した。一方の非食料品では、昨年来の水不足による電力危機との関連から電気料金(22.08%)がさらに値上げされたため、住宅分野(同1.22%→5.29%)が大幅な上昇となり、全体的な物価高騰に大きく影響した。しかし、通信分野(同▲0.02%→▲1.16%)で前月よりマイナス幅が拡大するなど、それ以外の分野は1%未満の数値で相対的に落ち着いたものとなった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は30日、Selicを12.75%から13.25%へ0.50%p引き上げることを全会一致で決定した。今回の引き上げにより、Selicは過去6年間で最も高い水準となった(2008年後半13.75%)。しかし、IPCAに見られるように、物価は依然として高い状態が続いており、0.50%pの引き上げは市場の予想通りであった。

為替市場:4月のドル・レアル為替相場は、第2次Dilma政権が進める財政緊縮案や、汚職事件により発表が遅れていたPetrobrasの2014年決算をめぐり、落ち着きを取り戻し出し、ドル安レアル高が進行する展開となった。その結果、月末はUS$1=R$2.9930(買値)と前月末比で▲6.68%もドルが値を下げることになった(グラフ1)。

月の初め、地方自治体の債務削減策に関してLevy財務大臣が政府の意向に沿って議会の説得に成功したことへの好感や、Dilma大統領(PT:労働者党)が連立を組む最大与党PMDB(ブラジル民主運動党)のTemer副大統領に議会運営を任せる決断を下したことにより、政治的混乱が沈静化するとの見方からレアル買いが強まった。月の半ば、中国の3月の輸出の大幅な減少をはじめ経済成長の減速傾向が示されたことや、ギリシャのデフォルトが現実味を帯びてきたことを受け、ドルが買われる場面も見られた。

しかし、Copom開催前にTombini中央銀行総裁が金融政策の継続をほのめかす発言をしたため、しばらくSelicの0.50%p引き上げは維持されるとの見方から金利上昇を見越したレアル高傾向が続いた一方、米国の雇用や住宅に関する経済指標が予想を下回ったためドルは売られる展開となった。そして、汚職等の損失による財務状況の悪化が懸念されていたPetrobrasの2014年決算が大幅赤字ながらも発表されたことが評価された一方、米国の利上げ時期が先送りされるとの見方が強まったことで、28日にレアルはUS$1=R$2.8937(買値)の月内最高値を記録した。その後、発表された政府の財政状況(プライマリー・サープラス)が3月として過去最低だったこともあり、月末は若干ドルが戻すかたちで取引を終えた。
グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2015年
グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2015年
(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:4月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)も為替市場と同様、政府の経済対策やPetrobras問題を前向きに評価するかたちで落ち着きを取り戻し始め、ほぼ続伸する展開となった。その結果、月末の終値は56,229pと前月末比で9.93%も値上がりし(グラフ2)、昨年末から上昇傾向にあったブラジルのカントリー・リスクも数値が低下した(グラフ3)。

月の前半における株価の上昇要素としては、Levy財務大臣が議会の説得に成功したことで懸案となっている政府の財政緊縮案が承認される可能性が高まったこと、Fitchがブラジルの見通しを安定からネガティヴに変更したが引き下げられると見られていた格付けは維持されたこと、発表が予定されているPetrobrasの決算報告への期待感から同社株が買われたことなどが挙げられる。ただし月の半ば、米国の小売売上高や中国の2015年の第1四半期GDPが市場予想を下回ったことや、ギリシャの債務問題に対する悲観的な見方が強まったことで、上値の重い展開となった。

その後、月の後半になると、鉄鉱石の国際価格の上昇や第1四半期の生産高が好調だったことでValeや鉄鋼関連株が買われ、株価全体も上昇。そして、Petrobrasが5ヶ月遅れで2014年決算を発表し、汚職R$62億を含む損失がR$446億に上り、利益を差し引いても1991年以降で初めてR$216億の赤字となり、債務額も2014年末で前年比31%増のR$3,510億と過去最高を記録した。しかし、デフォルトさえ懸念されていたPetrobrasの財務状況が実際に数値で公表されたことで市場には安心感が広がり、株価は年初来最高値となる56,594pまで上昇し、月末はほぼ同じレベルで終了した。
グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2015年
グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2015年
(出所)サンパウロ株式市場

グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2014年12月以降
グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2014年12月以降
(出所)J.P.Morgan