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10年以上ぶりとなる水準

ブラジル経済動向レポート(2015年2月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:2月の貿易収支は、営業日が18日と少なかったため取引額が少なく、輸出額がUS$120.92億(前月比▲11.8%、前年同月比▲24.1%)、輸入額がUS$149.34億(同▲11.5%、同▲17.3%)と、前月比および前年同月比ともマイナスとなった。貿易収支は▲US$28.42億の赤字となり、赤字額は前月比で10.5%縮小したものの、昨年に続き年初から2ヶ月連続での赤字を記録した。

輸出に関しては、一次産品がUS$49.92億(1日平均額の前月比▲0.4%)、半製品がUS$18.97億(同▲10.5%)、完成品がUS$48.67億(同+14.3%)であった。主要輸出先は、1位が米国(US$17.91億、同+5.8%)、2位が中国(US$15.32億、同+32.9%)、3位がアルゼンチン(US$9.68億、同+32.6%)、4位がオランダ(US$6.11億)、5位がドイツ(US$4.71億)であった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では大豆油(+162.9%、US$0.74億)、航空機(+151.1%、US$2.77億)、銅カソード(+112.9%、US$0.35億)が100%以上、減少率では大豆(▲72.2%、US$3.46億)が70%以上の増減率を記録した。輸出額では(「その他」を除く)、2月はUS$10億を超えた品目が鉄鉱石(US$12.68億、同▲35.7%)のみであった。

一方の輸入は、資本財がUS$30.09億(1日平均額の前月比▲13.6%)、原料・中間財がUS$67.07億(同+1.4%)、非耐久消費財がUS$13.64億(同+11.4%)、耐久消費財がUS$12.74億(同+5.3%)、原油・燃料がUS$25.80億(同+33.1%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$27.69億、同▲12.8%)、2位が米国(US$20.19億、同▲7.3%)、3位がアルゼンチン(US$8.14億、同+21.3%)、4位がドイツ(US$7.85億)、5位がナイジェリア(US$6.13億)であった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では農業向けその他の原料(+34.7%、US$5.48億)、減少率では原油(同▲38.6%、US$8.93億)が30%以上の増減率で顕著だった。輸入額では、US$10億を超える取引額を計上したのは、その他の燃料(US$16.87億、同▲5.5%)、および、原料・中間財である化学薬品(US$18.95億、同▲5.9%)と鉱物品(US$12.63億、同▲2.1%)の3品目のみであった。

物価:発表された1月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は1.24%(前月比+0.46%p、前年同月比+0.69%p)で、1%を超える物価上昇はほぼ12年ぶりとなる2003年以来で、ルーラ大統領(当時)が当選し金融市場が混乱した2003年2月(1.57%)に次ぐ高い水準となった。特に食料品価格が1.48%(同+0.40%p、+0.64%p)を記録し、昨年末より更に伸びが大きかった。

食料品に関しては、前月高い伸び率を記録したジャガイモ(12月13.77%→1月38.09%)が更に値上がりしたことをはじめ、フェイジョン豆(carioca:同12.62%→17.95%)とトマト(同▲6.22%→12.35%)も10%以上の上昇となるなど、多くの品目で価格が大きく上昇した。一方の非食料品では、衣料分野(同0.85%→▲0.69%)と家財分野(同0.00%→▲0.28%)では、マイナスとなった。しかし、電気や上下水道の料金値上げおよび家賃上昇が大きかった住宅分野(同0.51%→2.42%)、公共交通機関の値上げが顕著だった運輸交通分野(同1.38%→1.83%)、タバコや娯楽関連の価格が上昇した個人消費分野(同0.70%→1.68%)で1%を超える高い上昇率を記録した。

金利:2月は政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は開催されず。次回のCopomは3月3日と4日に開催予定。

為替市場:2月のドル・レアル為替相場は、月のはじめにUS$1=R$2.6888(買値)という月内ドル最安値でスタートした後、ドル高レアル安が進行する展開となった。レアル売りの要素としては、汚職問題の渦中にあるPetrobrasの経営陣後退をめぐる騒動と新総裁に政府系金融機関であるブラジル銀行の頭取が選ばれたことへの失望、および、原油の国際価格が下落していることも受けPetrobrasの信用格付けが引き下げられるなど、Petrobrasをめぐる諸問題がまず挙げられる。さらに、旱魃の影響によるブラジルの電力と水の不足への懸念が増したこと、中央銀行が2015年の見通しに関して物価(IPCA)を7.01%から7.15%、GDPを0.03%からゼロ%へ下方修正したことなど、ブラジル経済の状況に対する悲観的な見方が強まったことも挙げられる。また、先月Levy財務大臣が為替市場への介入に対して消極的な姿勢を示して以降、ドル高レアル安傾向が加速することとなった。

一方ドル買いの要素としては、米国の雇用統計が良かったことや、ギリシャの財政問題に関してEU内で一応のコンセンサスが得られたことが挙げられる。ドルは米国FRBのYellen議長がゼロ金利解除に慎重な姿勢を示したことで一時売られる場面も見られたが、23日にUS$1=R$2.8811(売値)というほぼ11年ぶりとなる2004年9月以来のドル高レアル安水準を記録した。そして、月末は前月末比+8.11%ものドル上昇となるUS$1=R$2.8782(売値)で取引を終えた(グラフ1)。
グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2004年以降
グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2004年以降
(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:2月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、月内最安値となる47,651pでスタートした後、特に月の半ばから緩やかに上昇する展開となった。月のはじめ、PetrobrasのGraça総裁が辞任の意向を示し、Dilma大統領がそれを受け入れるとともにPetrobrasの経営陣全員を交代させると発表したことを好感し、Petrobras株は過去16年間で最大となる15%もの大幅上昇となった。しかし、Dilma大統領がPetrobrasの新総裁にブラジル銀行の頭取という政府に近い人物を選んだことで市場は落胆し、Petrobras株とともに株価全体は再び下落した。その後も、危機的な状態と今後への懸念が伝えられる電気と水の不足や、Petrobrasの信用格付けのMoody’sにより投資不適格への引き下げなど、ブラジル経済に関しては全般的に悲観的な要素が多く、株価の押し下げ要因となった。

一方、中国が景気回復策を講じるとの期待感からValeやPetrobrasなどコモディティ関連株が上昇したことや、ウクライナやギリシャ情勢が沈静化に向かうとの観測が強まったことなどが、株価の上昇要素として挙げられ、13日に今年初めて株価は50,000pを回復した。そして、月末は前月末比+9.97%ものプラスとなる51,583pで2月の取引を終了した(グラフ2)。なお、最近の経済や政治をめぐる状況の悪化を受け、ブラジルのカントリー・リスクもここのところ上昇傾向となっている(グラフ3)。
グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2013年以降
グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2013年以降
(出所)サンパウロ株式市場

グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2014年12月以降
グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2014年12月以降
(出所)J.P.Morgan