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芳しくない2014年の経済

ブラジル経済動向レポート(2014年12月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:12月の貿易収支は、輸出額がUS$174.91億(前月比+11.8%、前年同月比▲16.1%)、輸入額がUS$171.98億(同▲4.4%、同▲5.5%)で、貿易収支はUS$2.93億(同+112.5%、同▲89.0%)と4ヶ月ぶりの黒字となった(グラフ1)。しかし、2014年通年では、輸出額がUS$2,251.02億(前年同期比▲7.1%)、輸入額がUS$2,290.32億(同▲4.4%)で、貿易収支は▲US$39.30億(同▲253.5%)と2000年以来14年ぶりの赤字に転じ、赤字額は1998年(US$65.8億)に次ぐ大きさを記録するなど、貿易は芳しくない一年となった。

輸出に関しては、一次産品がUS$76.35億(1日平均額の前月比+1.4%)、半製品がUS$25.15億(同▲1.9%)、完成品がUS$68.89億(同+4.5%)であった。主要輸出先は、1位が米国(US$24.44億、同▲1.4%)、2位が中国(US$20.87億、同+2.6%)、3位がアルゼンチン(US$10.05億、同▲15.4%)、4位がインド(US$7.51億)、5位がオランダ(US$7.42億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では大豆(+199.9%、US$0.74億)と綿花(+102.4%、US$1.83億)が100%、減少率では燃料油(▲67.0%、US$1.42億)と自動車(▲54.3%、US$2.34億)が50%を超える増減率を記録した。また輸出額では(「その他」を除く)、鉄鉱石(US$19.93億、同▲40.6%)と原油(US$14.46億、同▲22.0%)の2品目がUS$10億を超える取引高を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$36.13億(1日平均額の前月比▲15.5%)、原料・中間財がUS$72.38億(同▲19.4%)、非耐久消費財がUS$14.72億(同▲3.7%)、耐久消費財がUS$13.90億(同▲20.9%)、原油・燃料がUS$34.85億(同+7.0%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$27.02億、同▲21.5%)、2位が米国(US$26.83億、同▲16.8%)、3位がアルゼンチン(US$11.88億、同▲5.2%)、4位がナイジェリア(US$9.98億)、5位がドイツ(US$9.34億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率ではその他の燃料(+23.7%、US$22.28億)、減少率では家庭用機器(同▲33.8%、US$2.37億)や食料品(同▲31.9%、US$2.44億)が顕著だった。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$21.66億、同▲0.1%)や鉱物品(US$14.06億、同▲4.6%)の2品目、資本財である工業機械(US$11.40億、同▲29.4%)、前述のその他の燃料および原油(US$12.57億、同▲12.4%)がUS$10億を超える取引額を計上した。
グラフ1 2014年の貿易収支の推移
グラフ1 2014年の貿易収支の推移
(出所)工業貿易開発省

物価:発表された11月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は、0.51%(前月比+0.09%p、前年同月比▲0.03%p)と前月より高い数値となった。食料品価格が0.77%(同+0.31%p、+0.21%p)と高い伸びを示したため、年初累計は5.58%(前年同期比+0.63%p)と前年同期を上回った。ただし、過去12ヶ月(年率)は6.56%(同▲0.03%p)と政府目標の上限6.5%を依然超えたものの、前月(6.59%)より低下したことから、2014年通年としては政府の目標内に辛うじて収まる見通しが高まった。

食料品に関しては、ジャガイモ(10月▲5.95%→11月38.71%)やニンジン(同3.34%→12.24%)のように10%以上の上昇を記録した品目があったことに加え、消費量の多い牛肉(同1.46%→3.46%)の値上がりが、食料品全体の伸び率の上昇に影響を与えた。非食料品に関しては、家財分野(同0.19%→▲0.04%)がマイナスを記録したが、ガソリン価格が調整された運輸交通分野(同0.39%→0.43%)や、電気料金が値上げされた住宅分野(同0.68%→0.69%)など、多くのその他の分野で前月より若干高い伸びとなった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は3日、11.25%から11.75%へ引き上げることを全会一致で決定し、Selicは2011年8月以来の高いレベルで越年することになった(グラフ2)。Selicの引き上げ自体は予想されていたが、0.50%pという引き上げ幅は大方の予測の0.25%pより大きかったため、市場では驚きを持って受け止められた。ただし中央銀行は声明文において、今後の金利引き上げには消極的な姿勢を表明したことから、年明けしばらくは現在のレベルが維持されると見られている。

グラフ2 Selic金利の推移:2010年以降
グラフ2 Selic金利の推移:2010年以降
(出所)ブラジル中央銀行

為替市場:12月のドル・レアル為替相場は、米国の年末商戦の開始が低調だったことやブラジルの政策金利のSelicが引き上げられたこともあり、月のはじめはドル売りレアル買いが見られた。しかし、その後は月の半ばまで急激なドル高レアル安が進行することとなった。レアル安の要因としては、Selicの引き上げを決めたCopomの声明文や議事録において、今後の金利引き上げに消極的な姿勢やインフレ対策の欠如が示されたこと、原油をはじめとするコモディティの国際価格が下落し、Petrobrasをはじめとするブラジルの企業および経済への悪影響が懸念されたこと、発表された経済指標IBC-Br(GDPの中央銀行版)の10月の数値が前月比▲0.26%のマイナスとなり、2014年通年のGDPが0%成長になるとの見方が強まったこと、ロシアの金利引き上げによりルーブルが対ドルで大幅安となった影響を受け、レアルを含む資源国通貨の売りが加速したことなどが挙げられる。また、ドル高の要因としては、米国の雇用情勢に回復傾向が見られたことや、原油の国際価格の下落が止まらないことでリスクテイクの動きが後退しドルを選好して買う動きが強まったことが挙げられる。そして17日には、2005年以来のドル高レアル安レベルとなるUS$1=R$2.7246(売値)を記録した。

その後、ロシアが大規模な為替介入を実施したことや、ブラジルの中央銀行が現在行っている連日のスワップの為替介入を少なくとも2015年3月末まで継続すると発表したこともあり、急激なドルの上昇に歯止めがかかったものの、米国の第3四半期GDPが大幅上方修正されたことを好感し、再びドル高に振れる場面も見られた。そして月末は、ドルが前月末比+3.75%の上昇となるUS$1=R$2.6562(売値)で今年の取引を終えた。なお2014年のドル・レアル相場は、ドルが前年末比13.39%上昇する結果となった(グラフ3)。
グラフ3 2014年のレアル対ドル為替相場の推移
グラフ3 2014年のレアル対ドル為替相場の推移
(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:12月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、世界の主要国経済の停滞を示す指標が発表されたことや、国内的には株式配当への更なる課税や過去に廃止された税金(CPMF)が復活するとの見方から、月のはじめに一時ストップ安まで下落した。その後、米国の雇用統計が市場予測を上回ったことで上昇したが、月の半ばにかけて急落する展開となった。その要因としては、中国の貿易収支の悪化や鉄鉱石などのコモディティ価格の値下がり、日本のGDPの下方修正、ドイツの鉱工業生産の弱い数値、原油の国際価格の下落が世界経済およびPetrobrasへ与える悪影響などが挙げられる。特にPetrobrasに関しては、主要な格付け会社がPetrobrasの格付けを引き下げたことに加え、決算報告の発表を延期するなど業績悪化に対する懸念が高まったため、同社株は過去10年間で最安値を記録した。その結果、株価は16日に47,008pまで下落した。

月の後半は、米国が利上げを慎重に進める姿勢を示したことや、中国と米国のGDPが上方修正されたことで景気回復への期待感が高まり上昇。ただし月末にかけては、クリスマスと年末休暇との関係から取引が薄い中、財務や汚職疑惑で信用の悪化しているPetrobras株が大幅に売られたため、月末は50,007pと前月末比▲8.52%の下落で今年の取引を終了した。なお、この終値は前年末と比べ▲2.91%のマイナスで、2014年は株式市場にとって芳しくない一年となった(グラフ4)。
グラフ4 2014年の株式相場(Bovespa指数)の推移
グラフ4 2014年の株式相場(Bovespa指数)の推移
(出所)サンパウロ株式市場