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開催前に混乱したW杯が盛り上がる一方

ブラジル経済動向レポート(2014年6月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:6月の貿易収支は、輸出額がUS$204.68億(前月比▲1.4%、前年同月比▲3.2%)、輸入額がUS$181.03億(同▲9.7%、同▲3.8%)で、貿易収支はUS$23.65億(同+232.2%、同+2.5%)と今年最大の黒字額を計上した。また年初からの累計は、輸出額がUS$1,105.32億(前年同期比▲3.4%)、輸入額がUS$1,130.22億(同▲3.8%)で、貿易収支は▲US$24.90億となり赤字額は前月比で19.0%減少した。しかし、最近の貿易の低迷を受け経常収支は赤字で推移しており(グラフ1)、開幕前に混乱したサッカーのW杯が盛り上がる一方、ブラジル経済の懸念材料のひとつとなっている。

輸出に関しては、一次産品がUS$108.64億(1日平均額の前月比+0.2%)、半製品がUS$23.39億(同+11.9%)、完成品がUS$67.41億(同+6.0%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$47.91億、同+0.2%)、2位が米国(US$22.74億、同+7.0%)、3位がオランダ(US$15.03億)、4位がアルゼンチン(US$12.25億、同▲5.1%)、5位がドイツ(US$5.97億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では燃料油(+165.0%、US$5.83億)と原油(+94.7%、US$14.18億)が100%前後の伸びを記録し、減少率では昨年と異なり今年は実績のなかった石油採掘プラットフォーム(▲100.0%、US$0億)が大きかった。また輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$35.72億、同+3.9%)と鉄鉱石(US$23.12億、同▲10.8%)、および前述した原油の3品目がUS$10億を超える取引高を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$37.28億(1日平均額の前月比▲6.3%)、原料・中間財がUS$80.14億(同▲10.2%)、非耐久消費財がUS$14.65億(同▲1.4%)、耐久消費財がUS$15.72億(同▲6.2%)、原油・燃料がUS$33.24億(同+10.0%)であった。主要輸入元は、1位が米国(US$29.19億、同+1.6%)、2位が中国(US$26.42億、同▲10.5%)、3位がアルゼンチン(US$12.20億、同+1.9%)、4位がドイツ(US$11.71億)、5位がナイジェリア(US$7.31億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率ではその他の燃料(+45.3%、US$19.65億)や原油(+40.4%、US$13.59億)、減少率では家庭用機器(同▲36.1%、US$2.66億)の増減率が顕著だった。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$22.99億、同▲0.8%)や鉱物品(US$14.56億、同+10.7%)などの4品目、資本財である工業機械(US$10.74億、同▲29.5%)、前述のその他の燃料と原油がUS$10億を超える取引額を計上した。
グラフ1 国際収支の推移:2013年以降
グラフ1 国際収支の推移:2013年以降
(出所)貿易収支は工業貿易開発省、それ以外は中央銀行。

物価:発表された5月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.46%(前月比▲0.21%p、前年同月比+0.09%p)と事前の予想を下回った。過去2カ月1%を超える高い上昇率を記録していた食料品価格が、5月は0.58%(同▲0.61%p、+0.27%p)と落ち着いた数値となったことや、運輸交通分野がマイナスとなったことが影響した。ただし、年初累計は3.33%(前月同期比+0.45%p)であり、過去12カ月(年率)は6.37%(同+0.09%p)で政府目標の上限である6.5%に前月より接近した。

食料品に関しては、マンジォッカ粉(4月▲3.66%→5月▲12.09%)やジャガイモ(同22.26%→▲9.13%)の価格が値下がりしたが、トマト(同▲1.94%→10.52%)など大幅に値上がりした品目もあった。また、家庭消費用(同1.52%→0.41%)の食料価格は上昇幅が低下した一方、W杯の影響もあり外食用(同0.57%→0.91%)は前月より大きな伸びとなった。非食料品に関しては、航空運賃の▲21.11%もの大幅なマイナスや燃料価格の値下がりの影響から、運輸交通分野(同0.32%→▲0.45%)で価格が下落した。しかし、W杯需要でテレビなどが値上がりした家電製品を含む家財分野(同0.20%→1.03%)や、一部医薬品の価格調整が行われた健康・個人ケア分野(同1.01%→0.98%)をはじめ、その他の分野では全般的に高い伸びとなった。

金利:6月は政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は開催されず。次回のCopomは7月15日と16日に開催予定。

為替市場:6月のドル・レアル為替相場は月のはじめ、米国経済が回復の兆しを示す一方、ブラジル経済は前週末に発表されたGDPに見られるように停滞気味であることから、2日にレアルは前日比▲1.47%と過去6カ月で最大の下落となり、4日にはUS$1=R$2.2802(売値)とドルが月内で最高値を記録した。これに対し政府は、ドル高レアル安の為替およびそれを要因とする最近の物価高への対策として、企業が海外から受ける期間半年から1年の融資に関する6%の金融取引税(IOF)を免除すること、および、昨年より行っている為替対策の通貨スワップを倍増する方針を発表した。これらの対策が功を奏し、月の半ばはレアルが値を戻す展開となった。

しかし、イラク情勢の緊迫化やロシアによるウクライナへのガス供給の停止を受け、有事のドル買いが進むとともに、米国の5月の消費者物価指数が予想を上回ったことでドルは再び上昇。ただし、米国FRBによる長期金利見通しが引き下げられたことや、中央銀行が毎日行っている通貨スワップ取引による為替介入を今年末まで継続すると発表したことでレアル高が強まり、月末の終値はUS$1=R$2.2019(買値)と、ドルは前月末比▲1.63%の下落で6月の取引を終えた。

株式市場:6月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、4月の鉱工業生産指数が前期比▲0.3%、前年同期比▲5.8%で、リーマンショック時の2009年9月に次ぐ悪い数値だったこともあり、月のはじめは横ばいで推移した。しかし、大統領選に関する世論調査でDilma大統領の支持率が低下したことで政府系企業を中心に株が買われ、また、5月の物価(IPCA)が前月比▲0.21%pの0.46%と予想より低かったことで、株価は一日で3%もの大幅上昇となった。その後も、米国の株価が史上最高値を連日更新して値を上げたことや、世論調査でDilma政権の不支持が発足以降初めて支持を上回ったこと、サッカーのW杯開幕直前にブラジルの活躍への期待感が高まる中、W杯期間中の取引中断を見越した買いが入ったことで上昇し、18日には55,203pと今年の最高値を記録した。

しかし、GDPの中央銀行版といわれるIBC-Brが発表され、4月が前月比で僅か0.2%の伸びに止まり、前年同月比では▲2.29%ものマイナスだったことから、ブラジル経済に対する悲観的な見方が強まると、株価は下落へと転じた。その後も、大統領選の世論調査でDilma支持が横ばいで減少しなかったことや、政府系金融機関の不良債権の増加傾向を示すデータが発表されたことを嫌気し、株価は続落。さらに、5月の政府財政が▲R$110億と過去2番目に大きい赤字で、GDP比では1.52%だったことで(グラフ2)、2014年の政府目標(1.9%)の達成は困難との見方が強まり、月末は53,168pまで値を下げ取引を終了した。ただし6月の終値は、前月末比で+3.76%の上昇となった。

ブラジルは、サッカーのW杯開催前に抗議デモやストライキにより混乱したが、いざW杯が始まってみると、ブラジル代表の活躍もあり盛り上がりを見せている。ただし一方で、W杯に向けたインフラ整備を進めたことも影響し政府の債務は増加傾向にあることや(グラフ3)、4月の小売売上高が前月比▲0.4%と2003年以降最低だったこと、そして、第2四半期GDPがマイナスの可能性も指摘されるなど、W杯の盛り上がりとは異なる経済をめぐる指標や指摘が示されている。
グラフ2 政府財政収支の推移:2012年以降
グラフ2 政府財政収支の推移:2012年以降
(出所)中央銀行
(注)プライマリー・サープラス(利払い費を除く財政黒字)は左軸、GDP比は右軸。政府財政の必要性を示すため、数値のマイナスが黒字でプラスが赤字を意味する。また、2013年以前の政府目標(プライマリー・サープラスのGDP比)は2.3%で、2014年は1.9%。

グラフ3 純公的債務額とGDP比の推移:2012年以降
グラフ3 純公的債務額とGDP比の推移:2012年以降
(出所)中央銀行
(注)純公的債務額(時価)が右軸、GDP比が左軸。