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W杯を前にした懸念

ブラジル経済動向レポート(2014年4月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:4月の貿易収支は、輸出額がUS$197.24億(前月比+11.9%、前年同月比▲4.4%)、輸入額がUS$192.18億(同+9.7%、同▲11.1%)で、貿易収支はUS$5.06億(同+351.8%、同+151.2%)と2カ月連続の黒字を計上した。また年初からの累計は、輸出額がUS$693.12億(前年同期比▲3.0%)、輸入額がUS$748.78億(同▲3.5%)で、貿易収支は▲US$55.66億となり赤字額は前月比で9.4%減少した(グラフ1)。

輸出に関しては、一次産品がUS$106.08億(1日平均額の前月比+9.1%)、半製品がUS$21.45億(同+4.3%)、完成品がUS$64.70億(同+2.3%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$44.87億、同▲6.5%)、2位が米国(US$24.29億、同+22.2%)、3位がアルゼンチン(US$12.84億、同+3.1%)、4位がオランダ(US$12.60億)、5位がチリ(US$6.49億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では鋳造鉄管(+227.8%、US$1.31億)と航空機(+108.6%、US$3.68億)が100%を超える伸びを記録し、減少率では粗糖(▲39.6%、US$3.16億)やアルミニウム(▲37.8%、US$0.50億)など6品目が30%を超えるマイナスとなった。また輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$41.35億、同+19.8%)、鉄鉱石(US$20.63億、同▲10.5%)、原油(US$10.78億、同+75.6%)の3品目がUS$10億を超える取引高を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$42.24億(1日平均額の前月比+7.2%)、原料・中間財がUS$84.30億(同▲2.1%)、非耐久消費財がUS$14.17億(同▲14.1%)、耐久消費財がUS$17.89億(同▲2.7%)、原油・燃料がUS$33.58億(同+40.0%)であった。主要輸入元は、1位が米国(US$29.28億、同▲5.4%)、2位が中国(US$29.15億、同+0.1%)、3位がアルゼンチン(US$12.64億、同▲1.4%)、4位がドイツ(US$12.22億)、5位が韓国US$8.14億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では飲料とタバコ(+56.5%、US$0.60億)が50%を超える伸びを記録し、減少率ではその他の農業原料(同▲23.0%、US$7.31億)と医薬品(同▲22.7%、US$4.24億)が20%以上のマイナスとなった。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$24.39億、同+6.0%)など4品目、その他の燃料(US$21.03億、同▲17.0%)と原油(US$12.55億、同▲1.3%)、資本財である工業機械(US$12.38億、同+0.7%)がUS$10億を超える取引額を計上した。
グラフ1 貿易収支の推移:2012年以降
グラフ1 貿易収支の推移:2012年以降
(出所)工業貿易開発省

物価:発表された3月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.92%(前月比+0.23%p、前年同月比+0.45%p)と昨年12月(0.92%)と同じで、2003年4月の0.97%に次ぐ高い数値であった。特に食料品価格が1.92%(同+1.36%p、+0.78%p)と大幅に値上がりしたことに加え、航空券や燃料の価格上昇が全体を押し上げた(グラフ2)。また、年初累計は2.18%(前月同期比+0.24%p)、過去12ヶ月(年率)は6.15%(同+0.47%p)であった。

食料品に関しては、前月にマイナスだったジャガイモ(2月▲9.00%→3月35.05%)と急騰したトマト(同10.70%→32.85%)が30%を超える値上がりを記録したことをはじめ、フェイジョン豆(carioca:同▲4.45%→11.81%、fradinho:同5.27%→3.43%)や青菜野菜(同11.42%→9.36%)など日用食料品で価格が上昇したため、家計に重く圧し掛かることとなった。また非食料品では、航空券(同▲20.55%→26.49%)やエタノールなどの燃料の価格が大きく値上がりしたため、運輸交通分野(同▲0.05%→1.38%)の上昇が顕著だったことに加え、衣料分野(同▲0.40%→0.31%)や個人消費分野(同0.69%→0.79%)も高い伸びとなった。一方、前月に新学期の影響から高騰した教育分野(同5.97%→0.53%)や家財分野(同1.07%→0.38%)は落ち着いた数値となり、電話料金が一部引き下げられた通信分野(同0.14%→▲1.26%)ではマイナスを記録した。

ブラジルでは昨年6月のサッカーのコンフェデレーション杯開催の際、物価高騰を不満要因の一つとして、全国規模に拡大した抗議デモが発生した。6月にサッカーのW杯を控えた今年も、サンパウロなどで反W杯の抗議デモが散発的に行われており、W杯開催前の物価上昇は昨年と類似した状況であるため、ホスト国のブラジルにとって懸念材料となっている。
グラフ2 物価(月間IPCA)の推移:2012年以降
グラフ2 物価(月間IPCA)の推移:2012年以降
(出所)IBGE

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は2日、Selicを10.75%から11.00%へ0.25%p引き上げることを全会一致で決定した。今回でSelicの引き上げは9回連続で、引き上げとその幅も市場関係者の大方の予想通りであった(グラフ3)。Copomの声明文ではSelicの引き上げを今回で一時中止する可能性が示されたが、9日に発表された3月の物価指数(IPCA)が高いものだったため、次回5月のCopomでもSelicはさらに引き上げられるとの見方が強まった。

サッカーのW杯開催を控えたブラジルでは、物価の上昇をはじめ、反W杯の抗議デモの断続的発生、リオデジャネイロをはじめ改善しない治安の問題、サンパウロ州での旱魃による水不足の深刻化、W杯やオリンピックの施設整備の遅れなどが懸念されている。世界的なイベントであるW杯を成功させ、低迷気味な景気の起爆剤にすることができるか否か、政府や中央銀行の対応に注目が集まっている。
グラフ3 Selic金利の推移:2010年以降
グラフ3 Selic金利の推移:2010年以降
(出所)ブラジル中央銀行

為替市場:4月のドル・レアル為替相場は月のはじめ、中央銀行の直近データが資金の海外流出を示すものだったことや、2日にSelicが引き上げられたもののCopomが声明文で引き上げの一時中止の可能性を示唆したことから、3日にUS$1=R$2.2811(売値)の月内ドル最高値をつけた。しかしその後、発表された3月の物価が予想よりも高く、金利上昇を見込んだレアル買いが強まったこともあり、一時US$1=R$2.2を超えるドル安レアル高となった。

月の半ば以降、ウクライナ軍が親ロシア派に対して武力行使に出たことで有事のドル買いが強まり、再びドル高レアル安に転じた。月の後半になると、中央銀行の外貨フローのデータが市場でのドル余剰を示す国内への流入超だったことなどから、ドルの上値は重い一方、中央銀行のスワップによる5月のドル買いをめぐる予測やウクライナ情勢に関する米ロの対立激化から、ドル買い要素もあったため、相場は小幅な値動きとなった。月末はそのままのレベルのUS$1=R$2.2354(買値)で4月の取引を終えたが、前月末比でドルは▲1.19%と3ヶ月連続の下落となった。

株式市場:4月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、ブラジルの国内的な要素に影響を受けたものの、全体として横ばいの展開となった。月のはじめ、Mantega財務相が来年2015年のエネルギー価格の調整は大きくなると発言しエネルギー関連株が買われたことや、大統領選に関する世論調査でのDilma大統領の支持率低下により外国人投資家がブラジルの株式に資産を移動したことから、7日に52,155pと今年の最高値を記録した。

しかし、ブラジルの物価上昇でSelicがさらに引き上げられるとの見方が強まったことや、Petrobrasをめぐる汚職疑惑を嫌気して同社株が売られるなど、国内の要素から軟調な推移となった。そして、ウクライナ情勢の緊張化や中国の経済成長の鈍化を受け、月の半ばに一時大幅な下落となった。その後、中国の第1四半期GDPや米国の鉱工業生産指数が予想を上回ったこともあり、株価は再び52,000pレベルまで上昇した。その際、世論調査でDilma大統領の支持率が低下したことで、政府の影響力の大きい政府系企業の運営が改善するとの期待から株が買われたことや、鉄鋼会社大手Valeの海外資産の課税に関して最高裁が同社に有利な判断を下したためVale株が買われたことも、株価全体を押し上げる要因になった。ただし、政府がアルコールおよび清涼飲料への税率を引き上げると発表したため、飲料会社大手Ambevなどの株が売られたことや、鉄鉱石価格が下落を受けValeの第1四半期の純利益がドル換算で前年同期比▲19%だったため、同社株が売られたことが、株価の押し下げ材料となった。また、発表された米国の第1四半期GDPが0.1%と市場の予想を大きく下回ったことも影響した。月末は51,627pで4月の取引を終了したが、株価は前月末比で+2.40%と2ヶ月連続の上昇となった。