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ロシア危機による資金のブラジル流入

ブラジル経済動向レポート(2014年3月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:3月の貿易収支は、輸出額がUS$176.28億(前月比+10.6%、前年同月比▲8.8%)、輸入額がUS$175.16億(同▲3.0%、同▲8.6%)で、貿易収支はUS$1.12億(同+105.3%、同▲30.9%)と僅かであるが今年初めて黒字を計上した。また年初からの累計は、輸出額がUS$495.88億(前年同期比▲2.5%)、輸入額がUS$556.60億(同▲0.6%)で、貿易収支は▲US$60.72億(同▲17.7%)の赤字であった。

輸出に関しては、一次産品がUS$92.39億(1日平均額の前月比+35.6%)、半製品がUS$19.54億(同▲4.6%)、完成品がUS$60.08億(同+3.9%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$45.57億、同+68.5%)、2位が米国(US$18.88億、同+8.7%)、3位がアルゼンチン(US$11.83億、同+6.9%)、4位がオランダ(US$9.46億)、5位が日本(US$4.98億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では生体牛(+86.5%、US$0.91億)、銅鉱石(+73.7%、US$1.03億)、大豆(+73.4%、US$31.48億)が高い伸びを記録し、減少率ではトウモロコシ(▲72.8%、US$1.23億)と鋳造鉄(▲58.3%、US$0.45億)が50%を超えるマイナスとなった。また輸出額では(「その他」を除く)、前述の大豆と鉄鉱石(US$23.92億、同+0.7%)が、US$20億を超える取引高を計上し突出していた。

一方の輸入は、資本財がUS$37.45億(1日平均額の前月比+8.4%)、原料・中間財がUS$81.77億(同+12.1%)、非耐久消費財がUS$15.68億(同+11.4%)、耐久消費財がUS$17.47億(同+10.6%)、原油・燃料がUS$22.79億(同▲33.3)であった。主要輸入元は、1位が米国(US$29.41億、同+7.8%)、2位が中国(US$27.66億、同▲2.2%)、3位がアルゼンチン(US$12.18億、同+17.2%)、4位がドイツ(US$11.85億)、5位が韓国(US$7.81億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では家庭用機器(+27.1%、US$4.46億)や工業機械付属品(+20.4%、US$3.02億)の伸びが顕著で、減少率では原油(同▲34.5%、US$7.89億)やその他の農業原料(同▲26.0%、US$6.75億)のマイナス幅が大きかった。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$22.12億、同+9.0%)など4品目、その他の燃料(US$14.90億、同▲17.8%)、資本財である工業機械(US$10.78億、同▲15.2%)がUS$10億を超える取引額を計上した。

物価:発表された2月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.69%(前月比+0.14%p、前年同月比+0.09%p)で、予想より高い数値であった。食料品価格は0.56%(同▲0.28%p、▲0.89%p)で前月と前年同月に比べ大幅に低下したが、教育分野での大幅な上昇が全体を押し上げるかたちとなった。また、年初累計は1.24%(前月同期比▲0.23%p)で前年より低いが、過去12ヶ月(年率)は5.68%(同+0.09%p)と前月より若干上昇した。

食料品に関しては、急騰したトマト(1月▲10.43%→2月10.70%)のように10%超の値上がりを記録した品目が3つあったが、ジャガイモ(同▲4.50%→▲9.00%)、フェイジョン豆(carioca:同▲3.99%→▲4.45%、preto:同▲1.08%→▲2.07%)など、値下がりした品目も少なくなかった。また非食料品では、新学期の開始とともに授業料などが値上げされたため、教育分野(同0.57%→5.97%)が大幅に上昇したことに加え、家具や家電製品の値上がりで家財分野(同0.49%→1.07%)も1%超の伸びとなった。一方、衣料分野(同▲0.15%→▲0.40%)と運輸交通分野(同▲0.03%→▲0.05%)が前月に続きマイナスを記録したことをはじめ、その他の分野での変動は相対的に小さかった。

金利:3月は政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は開催されず。次回のCopomは4月1日と2日に開催予定。

為替市場:3月のドル・レアル為替相場はカーニバル休暇との関連から、前月の流れを引き継ぐドル安レアル高で5日に取引が始まったが、米国の雇用統計が予想を上回ったことやウクライナ情勢の緊迫化によりドル買いが進み、12日にUS$1=R$2.3649(売値)とドルの月内最高値を記録した。その後、米国FRBのYellen議長が金融の量的緩和政策を予想より早く終了して利上げを行う旨の発言があったものの、クリミア半島のロシア編入により事態は収束へ向かうとの期待から、ドルの上昇はストップした。

月の後半になると、海外からブラジルへのドル流入が多く、国内市場でドルが余剰気味だったこともあり、ドルを売りレアルを買う動きが強まった。このような状況のなか、経済運営が保護主義的だと批判されているDilma政権の支持率が、発表された世論調査で低下したためレアルが急騰。さらに、2月の政府財政のプライマリー・サープラスが予想より良かったことで、28日には今年のドル最安値となるUS$1=R$2.2597(買値)までレアルが上昇した。そして、月末はドルが若干戻したものの、前月末比でドルは▲3.02%下落し、US$1=R$2.2624(買値)で3月の取引を終えた(グラフ1)。
グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2013年以降
グラフ1 レアル対ドル為替相場の推移:2013年以降
(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:前月末から軟調な傾向にあった3月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、カーニバルの影響で月初めの4日間が休暇となったため、その間の調整から大きく下落して始まった。一時、Pré-Sal海底油田の一日の石油採掘量が過去最大を記録したことで、Petrobras株が買われる場面も見られたが、月の半ばまでは軟調な展開となった。その要因として海外的には、ウクライナ情勢の悪化、中国の太陽光発電パネル会社が債務不履行に陥ったことや鉱工業生産指数が悪かったことが挙げられる。また国内的には、PetrobrasのUS$85億の社債発行に対して応募額がUS$220億に上ったが、市場では同社の債務負担が増すことへの不安からPetrobras株が売られたこと、中国での鉄鉱石の取引価格が8.3%減少したことでValeなどの鉄鋼関連株が大幅に下落したこと、旱魃による電気供給が懸念される中、政府が選挙の年に電気料金の値上げを回避すべく電気会社にR$12Bもの資金援助を行うと発表し、財政懸念が高まったことなどがある。これらの要因から株価は14日に44,966pまで下落し、今年の最安値を更新した。

しかし月の後半になると、ロシアのPutin大統領がクリミア半島以上のウクライナ分裂を望まないと発言したことや、Dilma大統領の大統領選に関する支持率が低下する見込みと報道されたことに加え、米国の経済指標が好調だったことで株価は上昇に転じた。25日には、格付け会社のS&Pがブラジルの信用格付けを投資対象国のカテゴリーとしては最も低いBBB-に引き下げるとともに、PetrobrasとEletrobrasも同様にBBB-へ格下げると発表した。しかし市場では、昨年後半に格付け引き下げの可能性が指摘されて以降、株価は実際の引き下げを織り込みながら下落してきたため、今回の発表では反応しなかった。逆に、ブラジルの2月の経常赤字が予想ほど悪くなかったことなどを好感し、株価は上昇を続けた。そして月末に向け、世論調査におけるDilma政権の支持率が低下したことでPetrobrasやブラジル銀行など政府系企業の株価を買う動きが強まり、月末は前月末比7.05%も上昇し、今年1月15日以来の50,000p台回復となる50,415pで3月の取引を終了した(グラフ2)。
グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2013年以降
グラフ2 株式相場(Bovespa指数)の推移:2013年以降
(出所)サンパウロ株式市場

3月の株価上昇や為替のドル安レアル高は、ウクライナ情勢の悪化により外国人投資家がロシアから資金を引き上げ、ブラジルへ多く向けたためとされる。ただしブラジルも、カントリー・リスクの低下が顕著ではないことや(グラフ3)、信用格付けが実際に引き下げられたことなど、経済状況が好転しているわけではない。また、これからサッカーのW杯の開催に加え、大統領選挙の本格化とともに、最近取り沙汰され始めたPetrobrasをめぐる疑惑など政治的な要素が材料視されるようになり、しばらく先行き不透明感が増す可能性が高い。したがって、3月の資金流入はロシア危機という外因によるものであり、ブラジル自体が積極的に評価されたとは言い難いため、一時的なものとも考えられよう。
グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2013年以降
グラフ3 ブラジルのカントリー・リスクの推移:2013年以降
(出所)IBGE