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石油をめぐる一カ月

ブラジル経済動向レポート(2013年10月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:10月の貿易収支は、輸出額がUS$228.22億(前月比+8.7%、前年同月比+4.9%)、輸入額がUS$230.46億(同+22.3%、同+14.6%)で、営業日が23日と多かったこともあり、輸出入とも10月としての過去最大額を記録した。ただし、輸入額が10月だけでなく統計史上の最大だったため、貿易収支はUS$▲2.24億(同▲110.4%、同▲113.5%)と今年5回目の赤字となった(グラフ1)。また年初からの累計は、輸出がUS$2,004.72億(前年同期比▲0.9%)、輸入額がUS$2,023.04億(同+9.4%)で、貿易収支は▲US$18.32億(同▲110.5%)と赤字額が増加した。

輸出に関しては、一次産品がUS$96.28億(1日平均額の前月比▲16.2%)、半製品がUS$28.32億(同▲3.3%)、完成品がUS$98.31億(同+22.0%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$36.40億、同▲18.9%)、2位がオランダ(US$33.09億)、3位が米国(US$22.87億、同▲11.0%)、4位がアルゼンチン(US$18.22億、同▲13.1%)、5位がドイツ(US$6.23億)であった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率ではフレキシブルメタルチューブ(+154.7%、US$1.44億)や航空機(+57.6%、US$3.68億)、減少率では大豆(▲59.6%、US$8.20億)やアルミニウム(▲33.0%、US$18.51億)に加え、石油と燃料(▲47.5%、US$3.06億)と原油(▲42.4%、US$9.81億)の増減が顕著だった。さらに輸出額では(「その他」を除く)、鉄鉱石(US$32.19億、同+5.4%)と原油採掘プラットフォーム(US$19.37億)のみがUS$10億を超える取引額を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$48.14億(1日平均額の前月比+10.9%)、原料・中間財がUS$100.87億(同+2.5%)、非耐久消費財がUS$17.49億(同+9.1%)、耐久消費財がUS$23.91億(同+13.6%)、原油・燃料がUS$40.05億(同+45.5%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$37.08億、同▲2.0%)、2位が米国(US$34.07億、同▲0.2%)、3位がナイジェリア(US$14.75億)、4位がアルゼンチン(US$13.83億、同+8.7%)、5位がドイツ(US$13.78億)であった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では原油(+338.3%、US$19.11億)が突出して大きく、減少率では耐久消費財用部品(同▲25.9%、US$1.05億)やその他の農業用原料(同▲21.9%、US$10.74億)が顕著だった。さらに輸入額では、前述の原油とその他の農業用原料に加え、化学薬品(US$27.24億、同+2.7%)や鉱物品(US$19.11億、同+23.0%)などの原料・中間財5品目、工業機械(US$14.58億、同▲12.6%)、自動車(US$11.09億、同+28.7%)がUS$10億を超える取引額となった。

グラフ1 月間貿易収支の推移:2010年以降
グラフ1 月間貿易収支の推移:2010年以降
(出所)開発商工貿易省

物価:発表された9月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は、0.35%(前月比+0.11%p、前年同月比▲0.22%p)で、2カ月連続で前月より高い伸びとなったが比較的落ち着いた数値であった。年初からの累計が3.79%(前年同期比+0.02%p)と昨年同期とほぼ同じ水準になり、直近12カ月は5.86%(前月同期比▲0.18%p)と今年初めて6%を下回った(グラフ2)。

食料品は全体で0.14%(同+0.13%p、▲1.12%p)の伸びで、フランスパン(8月:1.56%→9月:3.37%)や鶏肉一羽(同▲0.45%→3.04%)など、一部の品目で高い伸びとなったが、主食であるフェイジョン豆(mulatinho:同▲10.87%→▲19.73%、carioca:同▲8.02%→▲13.95%)や、ジャガイモ(同▲7.90%→▲15.14%)など5品目が10%を超えるマイナスを記録し、全体価格の上昇を抑えることとなった。また非食料品では、航空運賃が16.09%と大幅に値上がりした運輸交通分野(同▲0.06%→0.44%)と衣料分野(同0.08%→0.63%)が大きく上昇し、家財分野(同0.89%→0.65%)や住宅分野(同0.57%→0.62%)の伸びも高かった。ただし、新学期の影響で8月に上昇が顕著だった教育分野(同0.67%→0.12%)や通信分野(同0.02%→▲0.04%)は落ち着いた数値であった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は9日、Selicを9.00%から9.50%へと0.50%p引き上げることを全会一致で決定した(グラフ2)。Selicの引き上げは5回連続で、引上げおよびその幅も市場関係者の予想通りであった。発表された声明が前回と同様であり変更がなかったことから、今年最後の開催となる次回11月26日と27日のCopomにおいても、Selicは同程度引き上げられ、10%台の2桁で越年するとの見方が強まった。また、17日に発表されたCopomの議事録でも、物価が高い数値で推移しており投資に悪影響を与えかねいとの見解から、Selicの引き上げを2014年も継続する可能性がある旨の言及がなされた。

グラフ2 物価(IPCA)と政策金利(Selic)の推移:2011年以降
グラフ2 物価(IPCA)と政策金利(Selic)の推移:2011年以降
(出所)IPCAはIBGE。Selicは中央銀行。
(注)値はIPCAが左軸、Selicが右軸。

為替市場:10月のドル・レアル為替相場は、米国の財政問題に対する懸念からドルが弱含んだものの、全般的に小幅な値動きとなった。月の前半、同問題の政治的解決の可能性が示されたことを好感して一時ドルが買われたが、9日にSelicが0.50%p引き上げられるとともに、次回のCopomおよび来年においてもSelicの引き上げは続くとの観測が強まったことや、Tombini中央銀行総裁が年末まで毎日行っている為替介入を来年も継続する可能性に言及したことから、高金利通貨のレアルを買う動きが強まり、17日にUS$1=R$2.1605(買値)までドル安レアル高が進んだ。

その後、月の後半に向け、米国の財政問題回避への可能性が高まるとともにドルは徐々に値を戻す展開となった。ただし、発表された米国の雇用統計が景気回復の弱さを示すものだったため、金融緩和政策が変更されるとする見方が後退したことや、中央銀行が新たなスワップ取引を実施すると発表したことで、為替介入への警戒感が高まったことから、一時ドルが下落する場面も見られた。しかし月末、米国FRBの声明が金融緩和政策の変更可能性を予想させるものだったためドルが上昇する一方、発表された9月のブラジルの公的債務額が大幅に増加したため(グラフ3)、今年の政府財政目標の達成はほぼ不可能との見方が強まりレアルが売られ、US$1=R$2.2026で10月の取引を終えた。ただしこの値は、9月末比で▲1.231%のドル下落であった。

グラフ3 純公的債務の推移:2010年以降
グラフ3 純公的債務の推移:2010年以降
(出所)中央銀行
(注)値は純公的債務額が左軸、対GDPが右軸。

株式市場: 10月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、月のはじめ、ブラジルの通信大手OiとポルトガルのPortugal Telecomの合併合意の発表を好感して上昇する場面もあったが、米国の財政や政府機関の一部休業をめぐる問題や、Moody’sがブラジルの格付けを「ポジティヴ」から「安定的」に引き下げるとともに、Petrobrasの長期信用格付けも引き下げたことなどから、上値の重い展開となった。

しかし、米国の財政問題をめぐる政治的混乱が解決に向かったことに加え、ブラジルの富豪Eike Batistaが所有する資源開発会社OGXが、外国人投資家から求められていた社長交代などの社内改革案を受け入れたことが好感され、同社をはじめBatista氏関連の株が買われ上昇した。中央銀行が更なるSelic引き上げを検討していることがCopom議事録により判明し、株価は一時下落する場面も見られたが、参加企業の減少が懸念されていたPre-Sal海底ガス油田の入札で、中国系企業に加え欧州系のShellとTotalが参加し落札したことが好感され、Petrobras関連株が大きく買われた。また、米国の雇用統計が予想を下回ったことで金融緩和政策が当面維持されるとの見方が強まり、株価は22日に56,460pまで上昇した。

その後、Petrobrasの第3四半期決算が発表され、燃料の国際価格を上回る国内販売価格が収益を圧迫し、売上高がR$34億(前年同月比▲39%)と市場予想を下回ったことや、OGX再建の先行きが不安視されたことなどから、株価は下落。Petrobrasが新たな価格調整案を提示する予定だとの報から同社株は上昇したものの、OGXが出資者と間で社債の利払いに関する合意に至らず、OGXがついに破産法の適用を申請(負債額はUS$51億に上り、ラ米民間企業の破産としては過去最大)したことがマイナスとなり、月末は54,256pで10月の取引を終了した。石油をめぐる動向に左右された10月の終値は、それでも9月末より3.66%の上昇であった。