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海外からの資金流入のバランス

ブラジル経済動向レポート(2012年2月)

地域研究センター 近田 亮平
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【経済】

貿易収支:2月の貿易収支は、輸出額がUS$180.28億(前月比+11.7%、前年同月比+7.7%)、輸入額がUS$163.13億(同▲6.4%、同+5.0%)で、輸出入ともに2月としての最高額を更新したが、輸出額が輸入額を上回ったため、前月に赤字を記録した貿易収支はUS$17.15億(同+232.7%、同+43.6%)の黒字を回復した。また年初からの累計は、輸出額がUS$341.69億(前年同期比+7.0%)、輸入額がUS$337.46億(同+11.2%)で、貿易収支はUS$4.23億(同▲73.4%)と辛うじて黒字額を計上したが、前年同期に比べ大幅なマイナスとなった。なお、政府は2012年の貿易収支に関して、輸出額の目標を2011年比で+3.1%となるUS$2,640億にすると発表した。

輸出に関しては、一次産品がUS$74.55億(1日平均額の前月比+24.1%)、半製品がUS$27.05億(同+25.1%)、完成品がUS$74.56億(同+39.4%)であった。主要輸出先は、1位が米国(US$22.64億、同+10.0%)、2位が中国(US$21.76億、同+39.2%)、3位がアルゼンチン(US$17.02億、同+37.6%)、4位がオランダ(US$14.50億)、5位がドイツ(US$5.82億)であった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では大豆(同+578.0%、US$7.15億)、綿花(同+384.2%、US$1.15億)、非冷凍オレンジ・ジュース(同+274.3%、US$1.28億)が100%を超える高い伸びを記録した。また減少率では、大豆油(同▲26.2%、US$1.03億)や鉄鉱石(同▲15.8%、US$21.87億)などのマイナス幅が大きかった。さらに輸出額では、前述の鉄鉱石と原油(US$16.82億、同+5.6%)がUS$10億以上を計上したことに加え、増加率が顕著だった大豆などの一次産品関連の輸出額が大きかった。

一方の輸入は、資本財がUS$37.71億(1日平均額の前月比+15.7%)、原料・中間財がUS$71.14億(同+5.7%)、非耐久消費財がUS$14.04億(同+17.4%)、耐久消費財がUS$17.19億(同+6.5%)、原油・燃料がUS$23.05億(同+2.0%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$26.41億、同+4.2%)、2位が米国(US$23.68億、同+8.2%)、3位がドイツ(US$11.24億)、4位がアルゼンチン(US$9.47億、同▲18.7%)、5位が韓国(US$7.79億)で、通常3位を占めるアルゼンチンが4位へと後退した。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率ではカーニバルの時期との関連から衣服・その他縫製品(+70.7%、US$2.68億)が先月に続き大幅な伸び率となった。一方の減少率では、輸送機器(同▲35.0%、US$2.69億)や食料品(同▲16.4%、US$2.39億)などのマイナス幅が大きかった。さらに輸入額では、前述の鉱物品に加え、化学薬品(US$20.61億、同+11.5%)や鉱物品(US$13.77億、同+3.5%)など、5品目がUS$10億を超える取引額を計上した。

物価:新しい算出方法で発表された1月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.56%(前月比+0.06%p、前年同月比▲0.27%p)で、前月比では若干上昇したが前年と比べ上昇率は鈍化した。食料品価格は0.86%(同▲0.37%p、▲0.30%p)高い数値となったが、物価の伸びは低下した。一方、非食料品価格は0.47%(同+0.19%p、▲0.26%p)と3ヵ月連続で低下していた上昇幅が拡大へと転じた。また、過去12カ月は6.22%(前月同期比▲0.28%p)と前月より若干低下した。

食料品に関しては、影響力の大きい牛肉(12月:+4.11%→1月:▲0.64%)がマイナスとなった一方、主食のフェイジョン豆(ムラチーニョ:同+3.17%→同+15.98%、カリオカ:同+8.84%→同+15.06%)とニンジン(同▲4.95%→同+11.29%)が10%を超える値上がりを記録するなど、一部の食料品の価格上昇が顕著であった。一方の非食料品は、衣料分野(同▲+0.80%→同+0.07%)などの価格は落ち着いたものとなったが、バスや飛行機の運賃が大きく値上がりした影響から、運輸交通部門(同0.00%→同+0.69%)の上昇が目立ったほか、ホテルや美容関連などの個人支出分野(同0.68%→0.71%)で価格が高止まりしたことが、全体の物価を押し上げるかたちとなった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は、2月は開催されなかった。3月6日と7日に開催される次回のCopomに関して、市場関係者の間では、Selicは引き続き引き下げられると見られているが、欧州信用問題などの世界経済の先行き不透明感や、ドル資金の大量流入による為替市場でのドル安レアル高に対処すべく、今までの引き下げ幅0.50%pを上回る0.75%pの大幅引き下げが行われ、Selicが現在の10.50%から一気に1桁台になるとの見方もある。

為替市場:2月のドル・レアル為替相場は、1日にUS$1=R$1.7376(売値)に月内ドル最高値で取引が始まった後は、ドル安レアル高が徐々に進行し、これに対して政府や中銀が為替介入などで応戦する展開となった。1日は、Petrobrasが海外市場でUS$70億もの資金を調達したことで一時ドル安に振れたが、その後はギリシャへの支援策が合意に達するなど欧州危機への不安後退などからドル安が進行したため、中銀が今年初めて為替介入を行った。中銀の為替介入の効果は限定的であったが、月の後半には取引時間中にUS$1=R$1.6台に突入する場面も見られ、US$1=R$1.7のレベルを死守したい中銀は断続的に為替介入を実施した。政府も、Mantega蔵相が過度なレアル高に対処する十分な用意があると述べるなど、為替の動きをけん制した結果、月末は前月末比1.72%のドル安レアル高となったが、US$=R$1.7086(買値)とUS$1=R$1.7台を維持したまま、2月の取引を終了した(グラフ1)。

なお政府は3月に入り、為替市場でのレアル高対策として、海外市場でのブラジルの金融機関や企業による借り入れに対する金融取引税IOF(6%)の対象を2年未満から3年未満へ拡大する措置を発表した。またDilma大統領は、ドル資金の大量流入による為替相場でのレアル高について、「低金利政策を続ける先進国からの金融津波であり、新興諸国への攻撃だ」との批判を行った。実際にブラジルへのドル資金の流入は、2008年のリーマン・ショックや2011年の欧州信用問題の悪化時にはマイナスとなったが、最近は大幅な流入超の傾向となっている(グラフ2)。

グラフ1 レアルの対ドル為替相場の推移:2010~12年2月
グラフ1 レアルの対ドル為替相場の推移:2010~12年2月
(出所)中央銀行

グラフ2 外貨フローの推移:2008~12年1月
グラフ2 外貨フローの推移:2008~12年1月
(出所)中央銀行

株式市場:2月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、先月の上昇基調の流れを引き継ぎ、欧州信用不安の後退や米中をはじめとする世界経済の景気回復への期待感から、緩やかながらも値を上げる展開となった。ただし10日には、Petrobrasが発表した2011年の決算報告が予想を大きく下回ったことから、関連株などが大きく売られ、株価は月内最安値となる63,998pまで一時下落した。しかし、ギリシャ支援に対する楽観的な見方が強まったことや、イラン情勢の緊張の高まりもあり原油の国際価格が上昇してPetrobrasなどの株が買われたことなどから、カーニバル前の17日には月内最高値となる66,204pを記録した。ただし月末になると、26日に閉幕したG20財務相・中銀総裁会議で各国間に温度差が見られたことや、信用格付け会社によるギリシャの格下げ、急激な原油高騰への懸念などから上値の重い展開となり、月末は前月末比+4.34%となる65,812pで取引を終えた。

ブラジルの株式市場は、欧州を震源とした世界危機により一時50,000pを下回ったが、2012年に入り海外からの資金流入が回復したこともあり、ほぼ危機前のレベルにまで短期間で回復している(グラフ3)。

グラフ3 株式相場(Bovespa指数)の推移:2010~12年2月
グラフ3 株式相場(Bovespa指数)の推移:2010~12年2月
(出所)サンパウロ株式市場