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危機の影響とその対策

ブラジル経済動向レポート(2011年11月)

地域研究センター 近田 亮平
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貿易収支:11月の貿易収支は、輸出額がUS$217.74億(前月比▲1.7%、前年同月比+23.1%)、輸入額がUS$211.92億(同+7.1%、同+21.9%)で、輸出入ともに11月の過去最高額を記録した。しかし、ヨーロッパ危機の影響により輸出が3カ月連続で減少したことから、貿易黒字額はUS$5.83億(同▲75.2%、同+88.8%)に止まった(グラフ1)。また年初からの累計は、輸出額がUS$2,339.13億(前年同期比+29.2%)、輸入額が初めてUS$2,000億を突破するUS$ 2,079.42億(同+25.2%)を記録し、貿易黒字額はUS$259.71億(同+74.3%)となった。

輸出に関しては、一次産品がUS$100.59億(1日平均額の前月比▲8.9%)、半製品がUS$33.90億(同+12.5%)、完成品がUS$78.68億(同+1.3%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$35.24億、同▲1.0%)、2位が米国(US$26.82億、同+34.2%)、3位がアルゼンチン(US$20.56億、同+3.2%)、4位がオランダ(US$11.47億)、5位が日本(US$8.56億)であった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では大豆(+529.4%、US$8.78億:主な輸出先、中国、スペイン、台湾)、エタノール(+235.0%、US$2.07億:同、米国、ジャマイカ、日本)、綿(+166.5%、US$2.84億:同、中国、インドネシア、韓国)が100%を超える高い伸びを記録した。また減少率では、トウモロコシ(▲34.8%、US$2.62億:同、イラン、マレーシア、台湾)や半加工金(▲14.9%、US$1.68億:同、英国、米国、スイス)のマイナス幅が顕著であった。さらに輸出額では、鉄鉱石(US$36.71億、同+35.8%:同、中国、日本、韓国)、原油(US$15.23億、同+14.2%:同、米国、中国、チリ)、粗糖(US$12.69億、同+5.6%:同、中国、エジプト、インドネシア)がUS$10億以上の取引額を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$46.10億(1日平均額の前月比+17.3%)、原料・中間財がUS$89.56億(同+3.5%)、非耐久消費財がUS$15.15億(同+8.4%)、耐久消費財がUS$25.87億(同+21.6%)、原油・燃料がUS$35.23億(同▲4.0%)となった。主要輸入元は、1位が米国(US$33.12億、同+5.7%)、2位が中国(US$30.98億、同+5.8%)、3位がアルゼンチン(US$15.30億、同+7.4%)、4位がドイツ(US$15.31億)、5位がナイジェリア(US$9.25億)であった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では自動車(+63.9%、US$14.79億)や工業機械(+56.3%、US$18.15億)、減少率では工業機械付属品(同▲15.7%、US$2.63億、)などの増減幅が大きかった。さらに輸入額では前述の自動車と工業機械に加え、化学薬品(US$23.29億、同+11.3%)や鉱物品(US$16.90億、同+7.9%)など、9品目がUS$10億を超える取引額を計上した。

グラフ1 貿易収支の推移:2009年以降
グラフ1 貿易収支の推移:2009年以降
(出所)商工開発省

物価:発表された10月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.43%(前月比▲0.10%p、前年同月比▲0.32%p)で、3カ月連続で拡大していた物価上昇幅がやや鈍化する結果となった。食料品価格が0.56%(同▲0.08%p、▲1.33%p)と2カ月続けて上昇率が低下し、非食料品価格も0.39%(同▲0.11%p、▲0.02%p)と上昇幅が縮小した。この結果、年初来の累計は5.43%(前年同期比+1.05%p)と依然昨年を上回っているものの、過去12カ月は6.79%(前月比▲0.34%p)と前月に比べ低い数値となった(グラフ2)。

食料品に関しては、日常に欠かせないコーヒー(9月:2.26%→10月:3.02%)など、一部の品目は値上がりしたが、10%以上のマイナスとなったニンニク(同▲16.84%→同▲13.92%)をはじめ、主要な野菜類、消費量の多い鶏肉やフェイジョン豆の価格が下落したため、全体の数値は前月より低下した。一方の非食料品は、通信分野(同▲0.04%→0.13%)がマイナスからプラスへ転じたり、衣料分野(同0.80%→0.74%)が高止まりしたりしたものの、運輸・交通分野(同0.78%→0.48%)や個人支出分野(同0.53%→0.22%)などの価格上昇が低下したことに加え、家財分野(同▲0.36%→同▲0.20%)が引き続きマイナスを記録したことから、全体の価格上昇は鈍化することとなった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は30日、Selicを11.50%から11.00%へと0.50%p引き下げることを決定した(グラフ2)。Selicの引き下げは3回連続で、ヨーロッパ危機の悪化からSelicの引き下げ幅の拡大を予測する見方も一部であったが、前回と同様0.50%pの引き下げが全会一致で決定された。引き下げの理由は、ヨーロッパを中心とした世界的な経済危機の影響でブラジル国内の景気にも減速の兆しが見られるためとされる。今年のインフレ目標(上限6.5%)の達成が危ぶまれているが、経済危機の影響で年末の消費が抑えられるとの観測もあるため、景気刺激策としての金利引き下げに踏み切ることととなった。なお、今回のCopomは今年最後の開催だったため、2011年のSelicは11.00%で越年することとなった。

グラフ2 物価とSelicの推移:2009年以降
グラフ2 物価とSelicの推移:2009年以降
物価(IPCA)はIBGE、Selicは中央銀行。
(注)物価は左軸、Selicは右軸。

為替市場:11月のドル・レアル為替相場は、ギリシャをはじめとするヨーロッパの信用問題からユーロの信認が低下したため、ドルが上昇する展開となった。3日にUS$1=R$1.7262(買値)の月内ドル最安値を付けた後は、ほぼ右肩上がりでドル高レアル安が進行し、ポルトガルとハンガリーの国債の格付けが引き下げられた25日には、US$1=R$1.8937(売値)の月内ドル最高値を記録した。しかし、月末に主要各国が協調で米ドルの供給拡充策を打ち出したことを受けドルは急落し、US$1=R$1.8102(買値)で11月の取引を終えた。ただし、それでもドルは11月に対レアルで前月末と比べ7.25%の上昇となった。

株式市場:11月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、ギリシャがEU支援の是非問う国民投票を実施すると発表したため、前月末から値を下げて取引を開始したが、欧州中央銀行による予想外の利下げや3日開幕したG20への期待感などから上昇し、7日に59,199pの月内最高値を記録した。しかし、イタリアの債務問題に注目が集まり同国の国債利回りが7%を超えると、世界の主要株価とともに下落。その後、イタリアとギリシャで政権が交代したことを好感して上昇する場面も見られたが、S&Pが財政健全化への取り組みなどを評価しブラジルのソブリン格付けをBBB-からBBBへ引き上げたにも関わらず、信用不安がスペインなどへも広がるとの懸念や提案されたユーロ共通債をドイツが拒否したこと、更には米国の財政赤字問題が深刻化したことも加わり、25日には月内最安値となる54,894pまで下落した。またブラジル国内に関しても、アルゼンチンのTernium社によるUsiminas株買収や裁判所によるValeへの税金支払い命令を嫌気し、鉄鋼関連を中心に値を下げる展開となった。しかし月末には、Selicの引き下げに加え、日米欧の中央銀行により米ドルなどの外貨供給を拡充する協調策が発表されたことを好感して急伸し、56,875pで11月の取引を終了した。ただし、11月の株価は前月末比で▲2.51%のマイナスとなった。

なお、発表された10月の正規雇用者数の増加は12.6万人で、前年同月比▲38.4%のマイナスとなった。ヨーロッパをはじめとする経済危機の影響から、雇用状況に関しても景気減速の兆しが見られている(グラフ3)。このような状況に対処すべく政府は12月1日、R$76億に上る減税などにより消費を拡大させ、来年2012年のGDP成長率5%の達成を目指す景気対策を発表した。

グラフ3 正規雇用状況の推移:2004年以降
グラフ3 正規雇用状況の推移:2004年以降
(出所)労働雇用省
(注)新規の正規雇用者数から失業者数を引いた数の年初来累計(ネット)。